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デジタル取引規制の再設計へ初会合 特商法検討会が始動、定期購入とSNS勧誘が焦点

 消費者庁は22日、「第1回デジタル取引に関する特定商取引法検討会」を開催した。デジタル化の進展に伴い、プラットフォーム取引やSNS勧誘、定期購入を巡る消費者トラブルが増加する中、現行特定商取引法の規制構造が実態に適合しているかを検証する。検討会では、取引構造の変化や消費者相談の実情を踏まえ、消費者契約法検討会と並行して議論を進めながら、本年夏頃を目途に中間取りまとめを行う方針を示した。
 会合には、悪質業者対策の専門家、消費者団体、事業者団体など多様な関係者が参加した。

プラットフォーム依存が進むデジタル取引市場

 冒頭、事務局(消費者庁)の説明において、デジタル取引市場の急速な拡大が示された。消費者庁が「資料3-2」に基づいて行った説明によると、デジタル取引市場はこの10年間で市場規模が2倍以上に拡大している。その中で、プラットフォーム事業者の役割が極めて大きくなっていると指摘した。円グラフを用いた説明では、デジタル取引の大半がプラットフォーム経由で行われており、直販サイトからの購入を大きく上回っている状況が示された。
 この点について消費者庁は、プラットフォーマーの役割や位置付けをどのように考えるかが、今後の重要な検討論点の1つになると説明した。

個別化広告と取引構造の複雑化

 続いて、インターネット広告の動向について説明した。インターネット広告は過去20年間で約10倍に増加し、現在では新聞、雑誌、ラジオ、テレビといった従来型メディアを上回る規模となっている。
 その特徴として、従来のマスマーケティングから、個々の消費者に向けたパーソナライズドマーケティングへと移行している点を特徴として挙げた。また、広告手法の多様化と同時に、広告配信事業者、仲介事業者など関係主体も多様化している状況を紹介した。
 現行の特定商取引法における通信販売規制は、販売業者と消費者の二者間取引を前提としているが、こうした多様な関係主体をどのように捉えるかが課題であるとした。

 インターネット取引は、従来の販売業者と消費者による二者間取引を前提とした構造から、多様な流通経路・主体が関与する構造へと変化している。取引の客体も、有体物の売買にとどまらず、オンラインサービスへ広がり、単発取引から継続的取引(サブスク)へ移行している。金銭を媒介しない取引の存在も含め、取引の前提条件そのものが変わりつつある。

 取引過程も大きく変容した。広告は個別化し、勧誘手法は増加し、消費者の意思決定を誘導する表示が出現している。さらに、心理学・行動経済学の知見を活用したユーザーインターフェース設計が高度化し、消費者と事業者の間の情報の非対称性は拡大している。コミュニケーション手段の面でも、固定電話の減少とメッセージアプリへの移行が進み、取引の入口と誘導の形が変わっている。

定期購入とSNS勧誘に集中する消費者トラブルの実態

 消費生活相談の内訳を見ると、通信販売に関する相談が全体の3~4割を占め、その大部分がインターネット通販に関するトラブルである。SNS関連の相談は年間約8万6千件と増加傾向にあり、定期購入トラブルは年間9~10万件と高水準で推移している。定期購入を巡っては令和3年の改正後も件数が増加しているとされ、現行の対策が十分に機能していない可能性を示唆している。

 SNSチャットを通じた勧誘は、文字による会話形式で進む点に特徴がある。音声による電話勧誘販売との違いをどう考えるかが課題となっている。無料相談からいつの間にか商談へ移行し、消費者が購入を予期していない状況で契約締結に至る「不意打ち性」が問題として挙げられている。

 定期購入トラブルでは、消費者が定期購入であることを明確に認識しないまま購入するケースが想定されている。典型例では、初回価格が数百円といった魅力的な表示が強調され、画面上には「初回限定」「お試し価格」といった文言が大きく示される。「回数縛りなし」「いつでも解約可能」といった表現も目立つ位置に配置される一方、2回目以降の価格が2万円であることや、複雑な解約条件は、極めて小さな文字で目立たない場所に記載されるにとどまる。

 消費者が定期購入契約であったことに気付くのは、多くの場合、2回目の商品が届いた時点である。そこで初めて高額な継続購入契約を結んでいたことを知り、驚愕するという構図が繰り返されているとされる。この背景には、事業者による意図的な情報提示の操作があると整理されている。

 さらに、アップセルと呼ばれる手法が問題を複雑化させる。購入ボタンを押す直前または直後に「もっとお得なプランがあります」と提案が表示され、より回数縛りが厳しい定期購入プランへの変更を促される。契約締結の前後に複数の選択肢が次々と提示されることで、消費者は最終的にどの契約を結んだのかを明確に認識できなくなるとされる。

 解約段階でも課題が生じる。契約はワンクリックで簡単に完了するのに、解約しようとすると複数ページの遷移を求められ、最終的に「解約は電話でのみ受け付けます」と表示されるケースが多い。電話がつながらない、つながっても強引な引き止めに遭うといった解約妨害が横行している、という問題意識が示されている。

検討会の論点整理と中間整理までの進め方

 消費者庁は、今後の検討に当たり、①インターネット取引、②デジタル以外の取引分野、③全体に共通する論点の3つに整理して議論を進める考えを示した。
 インターネット取引については、広告と勧誘の区分のあり方、プラットフォーム事業者の役割、意思形成を歪める表示や手法への対応などを挙げた。また、特定商取引法は規制法規であり、悪質事業者の排除を目的としつつ、健全な取引における消費者の利便性を最大限確保する視点が重要であるとした。

 消費者庁は、これらの問題意識を踏まえ、今後の検討会で具体的な制度の在り方について議論を深めていくとした。

 今後の進め方として、具体的には、まず消費者トラブルの実態や、取引構造・技術環境の変化について共通認識を形成し、その後、特定商取引法の対象範囲や規制のあり方、執行面の課題などについて順次議論を進める。一定期間の集中的な検討を経て、夏頃を目途に中間的な整理を行う。中間整理では、現行制度で対応可能な点と、制度見直しが必要と考えられる論点を区分した形で整理する。その後、中間整理を踏まえ、より具体的な制度設計や対応の方向性について検討を深めていくことになる。

 以下に、同検討会の主な質問・意見と応答を整理した。

<検討会の基本姿勢・進め方>
・消費者の利便性を確保しつつ、善良な事業者の事業活動を阻害しないこと、悪質事業者を排除することが共通目標であるとの認識が示された。

<デジタル取引全般に関する問題提起>
・デジタル取引は取引主体や手法が多様化しており、従来の特定商取引法の類型的整理では対応し切れない場面が増えているとの指摘があった。
・SNSやチャットを通じた個別勧誘について、通信販売として扱われている現行整理に違和感があるとの問題提起があった。

<定期購入トラブルに関する指摘>
・令和3年(2021年)改正で最終確認画面規制が導入されたものの、定期購入に関する相談件数は高止まり、あるいは増加しているとの認識を共有した。
・消費者は最終確認画面以前の広告段階で意思決定している場合が多く、規制の実効性に疑問との問題提起。

<広告・表示・ダークパターン>
・ターゲティング広告やダークパターンが、消費者の意思形成を歪めているとの指摘が複数の委員から出た。
・長文広告、カウントダウン表示、誇張的表現などが常態化しており、優良事業者が不利になる市場構造が生じているとの意見が示された。

<SNS勧誘・不意打ち性の問題>
・SNS上の無料相談や情報提供を入口に、消費者が購入を想定しないまま商談・契約に移行する不意打ち性が問題視された。
・電話勧誘販売と同様の勧誘規制や整理が必要ではないかとの問題提起があった。

<プラットフォーム事業者の位置付け>
・プラットフォームを規制対象とみるのか、執行協力者とみるのかが重要な論点であるとの指摘があった。
・出店者や広告主の管理、悪質事業者の排除における役割が問われた。

<法執行体制への疑問>
・現行法でも違法と整理できる事案が多いにもかかわらず、十分な執行が行われていないのではないかとの指摘があった。
・人員や予算の不足、執行体制の弱さが問題。規制強化以前に執行の実効性を高める必要があるとの意見が出された。

<今後の制度設計に関する論点>
・特定商取引法の枠内での対応には限界がある。デジタル取引に特化した新たな法制度を検討すべきとの意見があった。
・一方で、過度な規制が中小事業者や健全な事業活動に影響しないよう配慮すべきとの意見もあった。

以上

※第1回検討会の背景や論点について、以下に整理した・・・(つづきは会員専用記事閲覧ページへ)

デジタル時代の消費者取引と特定商取引法見直しの論点

 デジタル技術の急速な発展により、日本の消費者取引環境は大きな転換期を迎えている。インターネット取引市場はこの10年で2倍以上に拡大し、消費者の購買行動は大きく変化した。
 一方で、その利便性の裏側で新たな形態の消費者トラブルが急増しており、現行の特定商取引法(特商法)では対応が難しい課題が顕在化している。こうした状況を受け、特商法の見直しを検討する新たな検討会「デジタル取引特商法検討会」が始動し、デジタル時代に即した消費者保護の枠組みを構築するための議論が本格化する。

 消費生活センターに寄せられる相談のうち、通信販売に関するものは全体の3~4割を占め、その大半がインターネット通販に関するトラブルである。SNSを介した取引に関する相談は年間8万6,000件を超え、定期購入トラブルは年間9万~10万件に達している。これらの数値は、従来の法制度が想定していなかった取引形態が急速に拡大している現状を如実に示している。

プラットフォーム経済の拡大と取引構造の変化

 デジタル取引市場では、プラットフォーム事業者の存在感が著しく高まっている。消費者のオンライン購入の多くはプラットフォーム経由で行われ、直販サイトを大きく上回っている。この構造は、販売業者と消費者による二者間取引を前提としてきた従来の法制度の想定を大きく超えるものだ。
 広告市場においても変化は顕著だ。インターネット広告費はこの20年間で10倍に増加し、新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったオールドメディアの広告費を合計しても及ばない規模となった。
さらに、広告手法はマスマーケティングから、個人の嗜好や行動に応じて最適化されるパーソナライズドマーケティングへと移行している。

 この結果、広告配信事業者、アフィリエイト事業者、インフルエンサー、SNSプラットフォーム提供者など、多様な主体が取引に関与する複雑な構造が生まれている。従来の単純な二者関係では、こうした実態を十分に捉え切れなくなっている。

SNSチャットを通じた新たな勧誘形態

 取引のコミュニケーション手段も変化している。固定電話の利用が減少し、日常的なやり取りはメッセージアプリへ移行した。この流れの中で、SNSチャットを通じた商品販売が広がっている。
 SNSチャットによる取引は、電話勧誘販売と類似した性質を持ちながら、現行法では通信販売として扱われ、規制の程度が異なる。消費者が無料相談などをきっかけにチャットを始め、購入意図のないまま商談に誘導される事例が見られる。この不意打ち性は、かつて電話勧誘販売が問題視された理由と重なる。
 文字によるやり取りは記録が残りやすいとされるが、実際にはリアルタイムでメッセージが連続する状況では、消費者が十分に検討する余裕を失い、心理的な負担から泣く泣く購入を決断してしまうケースが少なくない。

高止まりする定期購入トラブル

 定期購入を巡るトラブルは、令和3年(2021年)の法改正後も高水準で推移している。年間の相談件数は9万~10万件に達し、増加傾向が続いている。典型的な手口は、初回数百円といった低価格を強調し、「初回限定」、「回数縛りなし」といった表示を目立たせる一方、2回目以降の高額な価格や解約条件を分かりにくく示すものである。
 多くの消費者は、2回目の商品が届いて初めて、定期購入契約であったことに気付く。さらに、購入前後により条件の厳しいプランへ誘導するアップセル手法が、契約内容の理解を一層困難にしている。解約段階では、複雑な手続きや電話限定対応など、解約妨害と受け取られる事例も多い。

訪問販売・連鎖販売における課題

 訪問販売全体の相談件数は横ばいであるものの、住宅関連や衛生設備に関する相談は増加している。レスキューサービスや点検商法では、インターネット広告を入口に、緊急性につけ込んで高額請求を行う手口が見られる。被害額が100万円を超える事例も少なくない。
 連鎖販売取引では、全体の相談件数は減少傾向にある一方、投資関連を装った勧誘が若者を中心に増加している。高額セミナー契約後に連鎖販売の仕組みが示される「後出し型」の手法が問題となっている。

 高齢化や単身世帯の増加、地域コミュニティの希薄化により、高齢者が悪質業者の標的となりやすい環境が生まれている。若者についても、デジタルに慣れている一方で、取引リスクへの認識不足や経済的困窮が脆弱性となっている。

制度見直しと執行の実効性

 検討会では、プラットフォームを含む対象主体の整理、広告と勧誘の区分、消費者の意思形成を歪める手法への対応、プラットフォーム事業者の役割など、多岐にわたる論点が検討されることになる。また、行政処分の実効性確保やクーリングオフ妨害への対応、消費生活センターの体制強化といった執行面の課題も重要なテーマだ。
 さらに検討会が目指すのは、悪質事業者を排除しつつ、健全な取引による利便性を確保することだ。これは消費者と健全な事業者の共通利益であり、市場全体の信頼性向上につながる。デジタル技術の進展が続く中、特定商取引法の見直しは、デジタル時代にふさわしい消費者保護制度を再構築する重要な取り組みとなっている。

【田代 宏】

当日の配布資料はこちら(消費者庁HPより)

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