消費者契約法、非金銭取引も射程に 情報・時間・アテンション提供取引を議論
消費者庁は13日、第4回「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会ワーキンググループ」(消費者契約法検討会WG)を開催し、現代的な消費者取引のあり方について議論した。金銭を伴わない一方で、個人情報や時間、アテンションを提供する取引をどのように法の射程に捉えるかが主要な論点となった。ダークパターンへの対応、消費者概念の再整理、実効性確保の手法、法目的の位置付けなど、横断的な課題について意見が交わされた。
金銭対価に限られない消費者取引の実態
議論では、現行の消費者契約法が消費者契約を「有償契約」に限定しているわけではない点を確認した。金銭の支払いがなくとも、消費者が個人情報やアテンションを提供し、事業者がそれをビジネスモデルとして収益化している場合、実態としては何らかの負担を伴う取引であるとの認識を示した。こうした取引について、従来の金銭対価を前提とした理解を改め、情報や時間、アテンションの提供も含めたかたちで消費者契約法の射程を検討すべきとの問題意識が共有された。
取引過程全体と自律的意思決定の確保
委員からは、消費者契約法が契約締結時のみならず、勧誘から契約締結、その後の履行・継続・終了に至るまでの取引過程全体を視野に入れて規律し得るとの指摘があった。
特に、ダークパターンなどにより消費者の意思決定が損なわれる状況については、自律的な意思決定が確保されているかどうかを重視すべきであるとした。意思決定が害された場合の救済としては、契約解消や解除、取消し、代金減額、損害賠償など、複数の手段について議論した。
「消費者」概念と脆弱性の再整理
横断的検討事項として、「消費者」概念・定義規定のあり方が取り上げられた。事務局は、現行法の定義が「事業として又は事業のために契約の当事者となるか否か」をメルクマールとしていることを前提に、今後の検討の方向性を提示した。委員からは、ダークパターンのような消費者の脆弱性を悪用する取引手法を考えると、自律的な意思決定の確保が重要なメルクマールになるという意見が出た。
また、消費者を単なる「非事業者」として捉えるのではなく、生活空間における主体である「生活者」として把握し、金銭に限らず情報や時間、アテンションをやりとりする存在として考える必要があるとの意見も出された。また、消費者の「脆弱性」は特定の属性に固定されるものではなく、いかなる個人であっても状況によって発現し得るものとして整理すべきとの考え方が示された。
実効性確保と法目的を巡る整理
各規律を導入した場合の実効性を確保するための仕組みについては、民事救済だけでなく、行政措置や刑事的手法を含めた多層的な規制手法の組み合わせが必要であるとの認識を示した。
特に、アテンションエコノミーの分野では、個々の被害額が小さい一方で影響が広範に及ぶことから、民事救済よりも行政による予防的対応が有効であるとの指摘があった。悪質な事業者への厳格な対応と、遵法意識の高い事業者への配慮を両立させる制度設計の必要性についても議論した。
法目的のあり方については、情報・交渉力の格差に加え、消費者の脆弱性への対応を目的規定にどう位置付けるかが論点となった。脆弱性を特定の消費者に限定せず、人間一般が置かれた状況によって合理的な判断が困難となる場合があることを前提に整理すべきとされた。
さらに、関係主体がそれぞれの役割を果たし連携することで、消費者が安心・安全に取引できる環境を実現するという視点を法目的に盛り込むことで合意した。
今後の検討の方向性と主要論点
今後の方針として、以下の点について引き続き検討を深めていく必要があるとの認識を共有した。
・消費者が金銭以外に、情報・時間・アテンションを提供する取引を、消費者契約法上どのように位置付けるか
・消費者の自律的意思決定が取引過程全体で確保されているかという観点からの規律のあり方
・現行の「消費者」「事業者」という二元的定義を前提としつつ、脆弱性概念をどのように整理するか
・実効性を確保するため、民事・行政・刑事の各手法をどのように組み合わせるか
・消費者契約法の法目的に、消費者の脆弱性への対応や、関係主体の連携による取引環境整備をどのように位置付けるか
今回提示された論点を踏まえ、消費者概念、実効性確保の仕組み、法目的のあり方などについて、次回は親会となる「消費者契約法検討会」において引き続き検討を行う。
【田代 宏】
配布資料はこちら(消費者庁HPより)











