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福島物産名乗る電話勧誘販売を追う 高額カニ販売巡り、プレリオン社に質問書送付

 福島物産を名乗る水産物の電話勧誘販売を巡り、ウェルネスデイリーニュース編集部は、同屋号を使用している㈱プレリオン(北海道札幌市、福島廉社長)に対し質問書を送付した。背景には、認知症の高齢者による購入事例や、「注文した覚えがない」とする消費者情報がある。さらに、名称の類似した水産業者に問い合わせが集中するなどの2次被害も生じているという。本稿では、編集部が入手した通話記録と質問内容を基に、現時点で確認できた事実関係と論点を整理する。

読者提供情報から浮上した福島物産の実態

 編集部は12月10日付でプレリオン社に質問事項を送付した。回答期限はきのう15日。午前中に催促し、午後になってから改めて確認の電話を入れたものの、同社から満足な回答は得られなかった。本件は、福島物産を名乗る業者からの電話営業が多発している事態について、一般消費者からの情報提供に基づき取材を行ったものである。

 情報は、10月13日付の記事「年末にかけ、高額カニの勧誘に注意!」を読んだ読者から寄せられた。「記事に書いてあった福島物産から認知症の父が購入しました。中身は蟹です、帰省した時に気付きましたがどうしようも出来ませんし、実態も分からない会社の情報を少しながら他の被害者が出ないようにこちらに送らせていただきます。住所、電話番号等は届いた箱に書いてあった物です」(原文ママ)というもの。

名称の混同が招く他業者への影響

 「注文した覚えがない」、「過去に購入したと説明されたが実績がない」とする情報は他にも多く、福島物産と間違えられた道内のカニ卸問屋には、「名前の類似性から今年夏頃より大量の問い合わせ電話を受け業務に支障が出ている」と話している。今月に入ってからも数件の問い合わせがあったとしている。業者側は、福島物産を名乗る業者への問い合わせ対応に時間を割かれているとして、看過できない損害だと話している。

 福島物産への質問内容は、プレリオン社員というY氏との複数回にわたる通話内容を踏まえて作成した。通話記録によれば、福島物産は独立した法人ではなく、プレリオンが用いている屋号である。プレリオンは札幌市中央区のビル内に事務所を構えており、同事務所を拠点として福島物産の名称で水産物の通信販売を行っている(同社)。通話に応じたY氏は、自身は代表者ではなく一般社員のため、最終的な判断や説明は、代表取締役である福島氏が行う立場にあると述べている。

電話勧誘販売の運用実態に関するプレリオン側の説明

 電話勧誘販売の方法についてY氏は、注文を受けていない商品を発送することはなく、代金引換で商品を発送する前には必ず確認の電話を行っていると説明している。発送前に顧客の意思を確認し、問題がなければ商品を出荷する運用となっているという。また、顧客への架電については、基本的には過去に利用した顧客に対して行っているとの認識を示した。名簿を購入して無作為に電話を掛けているわけではないとも述べている。

 しかし記者自身、福島物産の「●●●」と名乗る人物からの電話を今年10月に受けたことがあった。彼は、「ズワイガニ祭りの最終日ということで、漁師が浜ゆでした後に瞬間冷凍したキュウリほどもある太さの5Lサイズのカニ20本を大特価で提供できる」と説明していた。記者が10年前に海産物を頼んだ記録があったので架電したと弁解するのである。

繰り返される「過去の伝票」説明とその変遷

 実は、記者は2022年12月、23年8月にも、「海鮮市場」を名乗る業者から似たような電話を受けており、その時も彼らは「10年前の伝票が残っていた」、「去年の伝票が残っていた」と語っていた。

 3年前の場合、記者が過去の注文について詳細を尋ねると、業者の説明には次々と矛盾が現れ始めた。まず、業者は記者の名前宛てに以前商品を届けた伝票が残っていると主張した。しかし、具体的にいつ注文したのかと問うと、「だいぶ昔の伝票なので覚えていない人も多い」と曖昧な返答をするばかりだった。
 さらに踏み込むと、業者は直接購入したのか、物産展での購入だったのか、あるいは贈り物として誰かから送られたものなのか、はっきりしない説明を繰り返した。ただ、お届け先の伝票に名前が残っていたので連絡したと繰り返すばかり。この時点で、業者の説明には整合性を欠く点が複数みられた。

 記者が何を購入したのか具体的に尋ねると、業者は伝票が古くて商品の詳細は残っていないと答えた。しかし同時に、カニや海産物を購入した際の伝票だとも説明する。ここで記者は、伝票の詳細が分からないのに伝票があったというのは矛盾しているのではないかと質問。業者は慌てて、注文した商品の詳細は残っていないが、名前、住所、郵便番号、電話番号といった個人情報は残っていると説明を修正し、私の現在の住所にも言及した。
 業者は過去の取引伝票が存在すると説明した一方で、具体的な注文時期や商品内容については説明できなかった。また、名前や住所などの個人情報のみが残っているとの説明に変遷した。

注文意思確認や管理方法を巡る不透明な運用

 そこでプレリオンのY氏に●●●という名のスタッフが実在するかと尋ねると、「いる」と言う。当時の電話とのつながりを質すと、関係ないと否定した。私が福島物産から過去に商品を購入した記憶や実績はないと伝えると、Y氏は、そのような事実と異なる説明を行っている認識はないとしつつも、個別の事例については福島社長に確認する必要があるとの姿勢を示した。

 同氏は、注文意思の確認方法については、発送前に確認電話を行っていると説明する一方で、確認電話の録音の有無、顧客の「注文意思」をどのように記録しているかといった具体的な管理方法については、通話の中で詳細を語ることはできなかった。
 そこで質問書では、確認電話を録音しているか否か、顧客の注文意思を示すエビデンスをどのように保存・管理しているのかについて、具体的な説明を求めた。

 高齢者への対応についてY氏は、確認電話の段階で顧客が注文を覚えていない場合には、その時点でキャンセル対応を行っていると説明した。
 高齢者や判断能力に不安があるとみられる顧客への配慮として、覚えていない場合は発送しない運用をしているとの説明である。ただし、高齢者や認知症の疑いがある顧客に対する社内基準の有無や、再勧誘や継続勧誘を行わないとする取り決めが存在するかどうかについては、通話の中で具体的な説明は確認されていない。
 「注文した覚えがない」とする苦情は、複数の消費者および水産関係者から同様の情報が寄せられている。これに対しY氏は、基本的にはそのような苦情は把握していないとの認識を示したが、詳細については把握していないとして、やはり福島社長の判断事項であるとの説明にとどまっている。質問書では、同種の苦情を把握しているか否か、把握している場合の原因認識について回答を求めている。

仕入れルートは不明、勧誘は携帯電話から

 返品対応については、Y氏によれば返品は受け付けていると説明した。ただし、返品専用窓口の設置状況、返金までの具体的な手続きや所要日数、トラブルの記録をどのように管理しているかといった点については、通話記録上、具体的な説明は確認できなかった。質問書では、返品対応およびトラブル対応体制について、具体的な管理内容の説明を求めている。

 水産物の仕入れについては、「札幌の市場から仕入れている」との説明があったものの、具体的な仕入れルートや取引先については、Y氏自身は詳しく把握していないと述べている。社内体制については、社員の他にもアルバイトスタッフが在籍しており、電話営業は事務所から携帯電話を使用して行っているとの説明があった。
 確かに●●●氏から私に宛てた電話も携帯番号だったが、折り返しても返事はなかった。営業電話の発信場所については、札幌市中央区の事務所を拠点としているとの認識が示されているが、営業に従事するスタッフの人数や役割分担についての詳細は明らかにしていない。

 また、福島物産という名称を巡って、北海道内の水産業者から「福島物産と誤認した消費者からの問い合わせが相次ぎ、業務に大きな支障が出ている」との情報が寄せられていることも伝えたが、Y氏本人は知らないという。プレリオン側が他社との混同の実態をどの程度把握しているのか、また誤認防止のための対策を講じているのかについては、今後の対策も踏まえて回答を求めている。
 質問書ではこの他、法人登記上の創業年月日、営業種目、屋号「福島物産」における通信販売事業の位置付け、従業員数など、基本的な会社情報についても確認事項として記載の上、今月15日までに回答がない場合、あるいは回答できない理由の説明がない場合には、記事上「回答拒否(ノーコメント)」として扱う旨を伝えたが、結局、同社からの回答は得られなかった。なお本稿は、違法性の有無を断定するものではない。

【田代 宏】

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