消費者志向経営の関心度、昨年比横ばい 企業の取り組みに対する消費者の認知度向上が課題
消費者庁はきのう11日、全国の15歳以上の男女5,000人を対象にインターネットを利用して実施した「令和7年度第3回消費生活意識調査」の結果を公表した。
本調査では、消費者の意識や行動、消費者問題等について、その時々のテーマで随時調査を実施している。今回(令和7年11月)、「消費者志向経営」を中心に調査を行った。消費者志向経営を中心に調査を行ったのは、昨年度に続き2回目の実施。消費者庁の茶谷晋太郎参事官(公益通報・協働担当)が、昨年度との比較を交えながら報告した。
消費者志向経営とは、社会的に有用で安全な商品・サービスを提供し、消費者の満足と信頼を得ることで事業を継続するという考え方。企業は本業を通じて実現したい社会像を示し、消費者の共感を得ることが重要であり、それが顧客満足と社会的価値向上の両立につながる。消費者庁ではSDGsにも関わるこの取り組みを推進している。
「消費者志向経営」に対する関心度は横ばい
同庁では、消費者志向経営の内容を説明し、考えてもらうきっかけを作ることを意図し、「企業における社会課題解決に向けた取組事例」や「消費者志向経営の概念を提示」。
事例として、「令和6年度内閣府特命担当大臣表彰」を受賞した花王㈱の「生活者参加型の商品提案」、「令和5年度内閣府特命担当大臣表彰」を受賞したマルハニチロ㈱の「高齢者の健康長寿への取組」、「令和6年度消費者庁長官表彰」を受賞したBABY JOB㈱の「紙おむつサブスク『手ぶら登園』の提供」を挙げた。
どの程度消費者志向経営に興味を持ったか聞いたところ、興味を持ったと回答した人(「興味を持った」、「ある程度興味を持った」と回答した人)の割合は50.3%と、昨年(51.4%)とほぼ同水準だった。年代別では、70歳代以上が最も高く62.3%、次いで60歳代の52.6%、10歳代の50.8%となった。
一方、興味を持たなかったと回答した人(「あまり興味を持たなかった」、「興味を持たなかった」と回答した人)は、年代別は40歳代が最も高く57.5%、次いで50歳が56.3%、30歳が54.7%となった。
「消費者志向経営の企業の取組」に関する認知度は15%程度
企業が消費者志向経営に該当する取り組みを行っていることについて知っていたか聞いたところ、知っていたと回答した人の割合は15.5%と、こちらも昨年(15.4%)とほぼ同水準だった。年代別では70歳代以上が最も高く19%、次いで20歳代が17.7%、60歳代が16.4%となった。ここでも40歳代の認知度が最も低く11%、次いで50歳代が12.8%だった。
企業がコストをかけてでも消費者志向経営に該当する取り組みをすべきか聞いたところ、取り組むべきと思うと回答した人の割合は65%で、年代別では70歳代以上が最も高く78.3、次いで60歳代が71.7、10歳代が63.8と期待感が高かった。
消費者志向経営に取り組んでいる企業の商品・サービスを購入したいか聞いたところ、購入したいと回答した人(「購入したいと思う」、「ある程度購入したいと思う」と回答した人)の割合は65.4%と昨年(60.6)から上昇。年代別では、70歳代以上が最も高く78.3%、次いで60歳代71%、50歳代64.1%となった。
消費者志向経営に取り組んでいる企業に賛同し、その商品・サービスを選ぶ場合、他のものよりどの程度なら割高でも購入したいか聞いたところ、「割高でも購入したいと思う」と回答した人(「割高(30%程度以上)に関係なく購入したいと思う」、「ある程度割高(10%以上30%未満)でも購入したいと思う」、「少し割高(10%程度未満)でも購入したいと思う」と回答した人)の割合は、55.7%と昨年度(47.4%)から上昇した。年代別では70歳代が最も高く62.1%、次いで20歳だが61.8、10歳代が57.7%だった。
また取引相手や投資先を選定する際に「消費者志向経営の取組状況」を確認し判断材料にしたいか聞いたところ、判断材料にしたいと回答した人(「判断材料にしたいと思う」、「ある程度判断材料にしたいと思う」と回答した人)の割合は54.6%と昨年度(50.2%)とほぼ同水準だった。
取り組みへの消費者認知度15%程度を懸念
同庁の堀井長官は定例の記者会見で、企業が消費者志向経営に取り組んでいることの消費者認知度が15%に留まっていることに触れ、「引き続き消費者志向経営の推進に努めていきたいと考えている」と述べた。具体的には「消費者志向経営優良事例表彰の場などを活用し、受賞企業などから取り組みの横展開を図る」とし、「消費者志向経営の意義やメリットなどを発信していきたい」と述べた。
同庁では、調査結果全体として、消費者志向経営に対する消費者の意識がポジティブな方向へ変化していると評価。茶谷参事官は、「特に、購入意向や価格許容度といった消費行動に直結する項目で顕著な上昇が見られた」と述べた。一方で、認知度15%については、同じく今後の大きな課題であるとの認識を示した。周知活動強化の一環として、消費者志向経営の意義やメリットをまとめたチラシを作成し、説明会などで配布し活用を促進するとしている。
本調査は来年度も継続して実施する。「経年変化を追っていく方向だ」(茶谷参事官)と説明した。
(藤田 勇一)
(冒頭の写真:説明する消費者庁茶谷晋太郎参事官(公益通報・協働担当))











