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消費者契約法で継続契約の規律論点浮上 サブスク解約困難や情報収奪型取引への対応が焦点

 消費者庁は9日、第2回「消費者契約法ワーキンググループ(WG)」を開催し、継続的契約やアテンション・エコノミーをめぐる課題について議論を深めた。契約の締結・履行・継続・終了にわたる包括的な規律の必要性が示され、特にサブスクリプションサービスの普及に伴う解約困難、条件変更、無意識の情報提供など、既存制度では十分対処できない問題が論点として整理された。事務局説明後は、契約過程の規律対象拡大や実効性確保の仕組みを巡り、委員から多様な意見が提示された。

契約過程全体を対象とする規律拡張の必要性

 今回の会合では、消費者契約の締結・履行・継続・終了といった契約過程に関する必要な規律の他、横断的な検討事項として、規律導入時の実効性を確保するための仕組みについて、事務局が基本的な考え方を示した。
 事務局は、従来の消費者法制度は、契約の締結過程と契約内容を中心に規律してきた上、有償取引、特に金銭を対価とする取引を主眼としていたと整理した。その一方で、事業者と消費者の格差や「消費者の脆弱性」が問題となる場面は、締結や条項の段階に限られず、履行・継続・終了といった契約の全過程に及ぶと指摘し、今後の取引環境の変化を踏まえると、規律対象や射程を拡張・充実させる必要があるとの基本的な考え方を示した。

サブスクリプション契約で顕在化する課題

 具体的な検討の柱の1つが「継続的な契約」に関する一般的規律だと説明。現行の消費者契約法は、不当勧誘に関する取消権や不当条項の無効規定を中心とする枠組みであり、サブスクリプションサービスをはじめとする継続的な契約の履行・継続・終了の過程で生じるトラブルに十分対応できていないという課題を提示。令和4年改正では、解約に必要な情報提供や解約料算定根拠の説明に関する努力義務が新設され、契約終了過程への規律が一歩拡張されたが、国会附帯決議では契約締結時以外への適用場面の一層の拡大検討が求められており、これを踏まえた議論が必要であるとした。

 検討の方向性として、継続的な契約が広く普及している現状を前提に、まずは継続的な契約を対象とする規律を整備することが重要であると説明した。その際、抽象的な類型論から出発するのではなく、実際の取引実態に着目し、課題が顕在化している主な場面を端緒として、規律の必要性や具体的なあり方を検討すべきとした。
 また、履行は1回であっても、締結から履行まで時間的間隔がある契約については、継続的契約と同様の問題が生じ得るため、これらに規律を及ぼす必要性も論点として示した。

継続的契約6類型に基づく論点整理

 継続的契約に関する検討事項としては、事務局が6つの典型的場面を整理した。
 第1に、商品・役務の内容や取引条件に変化はないが、消費者側のニーズが変化し、契約の継続や内容が新たなニーズにそぐわなくなる場合、あるいは契約が自動更新される場合を設定。この場面では、事業者が必要な情報を適時に通知し、簡便な離脱・変更方法を用意することが対策の例として挙げられ、こうした行為を義務付けるか、努力義務にとどめるか、また義務違反に民事上・行政上どのような効果を持たせるかを検討課題とした。

 第2に、時間の経過に伴って商品・役務の内容や取引条件が変化し、その結果として消費者のニーズにかなわなくなる場面を取り上げた。ここには、無料から有料へ移行するケースも含まれ、対策・規律手法の方向性は第1の場面と同様に整理している。
 第3に、解約の方法が複雑であるなど消費者による解約が困難な場合、あるいは事業者が合理的範囲を超えた引き止め行為や「解約できない」といった誤った説明により解約を妨げる場合を挙げた。ここでは、解約に関する情報提供義務の拡充、簡便な離脱方法の義務付け、一定の行為を禁止対象とすることの是非などを論点として示した。

 第4の場面は、契約当事者である消費者が死亡した後に、相続人等による解約が困難となる場合だ。事務局は、事業者が契約当事者死亡時に相続人等の適切な対処を可能とするため、必要かつ相当な措置を取ることを義務付けることが考えられるとし、その具体例として、長期未利用時に相続人などへ契約の存在を知らせることができるよう、家族の連絡先登録を可能にすることや、解約に必要な手続きの情報提供などを挙げた。どこまで事業者に求めることができるのかも含め、検討が必要とした。

 第5の場面は、消費者が知らない、気付かないうちに事業者により解約が行われるケースである。一定期間利用がないと自動解約されるような仕組みが典型で、不意打ちとならないよう、事前に、必要かつ相当な措置を取ることを義務付ける案を提示した。情報提供や別連絡先の登録などが具体例として示されている。これらに加え、上記以外に一般的規律を設けるべき場面があれば指摘を求めるかたちで、検討の幅を残している。

 さらに、履行が1回であるが締結から履行まで時間的間隔がある契約についても、消費者のニーズや社会状況の変化を踏まえ、事業者が必要情報を適時に通知し、離脱・変更方法を提供することなどを検討すべきかどうかが示された。併せて、こうした規律を設ける際に「継続的な契約」をどう捉えるかについて、商品・役務の提供が相当期間続くか、時間的間隔を置いて提供されるか、対価の支払いが継続するかといった要素を考慮する例も提示した。

情報・時間・アテンションを巡る新たな規律領域

 もう1つの柱は、消費者が事業者に対して自己の情報・時間・アテンションを提供する取引、いわゆるアテンション・エコノミーに関する規律である。事務局は、消費者の安心・安全を確保するには、単に「消費するためのものを買う」という場面だけでなく、情報・時間・アテンションそのものを消費者が費やす場面も消費者法制度の対象として自覚的に捉える必要があるとした。その上で、無意識のうちに情報提供や時間・アテンションの消費を強いられ、自律性が侵害されたり、過剰な提供・消費に誘導されたりする問題の改善を検討する必要があると整理した。

 現行消費者契約法は、有償契約に限定してはいないものの、対価として金銭を支払う取引を念頭に置いた規定が多く、情報・時間・アテンション提供型の取引に対応した規定は存在しない。 
 このため、アテンション・エコノミーに関する問題をどこまで射程に入れるか、その際の課題をどう整理するかを検討事項として提示している。専門調査会報告書では、自律性侵害、情報・時間・アテンションの収奪、信頼の毀損、偽情報拡散、依存性、フィルターバブルなどが指摘されており、こうした論点も踏まえることが想定されている。

 対応策の例としては、アテンション・エコノミーの特徴に関する消費者の認識・理解の促進、事業者による情報・時間・アテンションの取扱い条件の開示、情報・時間・アテンションを提供しなくてもサービスを受けられる選択肢の提供、みだりに情報提供や時間・アテンションの消費をさせないよう配慮を促すことなどを挙げた。その上で、これらの対応のうち消費者契約法で扱うべきものがあるのか、あるとすればどのような規律とするかが検討事項として示された。

 参考資料として事務局は、インターネット利用時に不安を感じる人が約7割に上ること、個人情報や利用履歴の漏洩に対する不安が高いこと、プラットフォーム利用時にパーソナルデータ提供を認識している人が約4割にとどまることなど、総務省や消費者庁の白書データを紹介した。
 また、氏名・住所や連絡先、口座情報などの提供に不安を感じる割合が高い一方で、趣味や視聴履歴など個人の関心を示すデータについては不安が相対的に低い傾向があることを示し、アテンションとパーソナルデータをめぐる消費者意識の特徴を共有した。

 事務局説明は以上のような枠組みと論点整理を提示し、今後のWGにおいて、継続的契約とアテンション・エコノミーの双方について、具体的な規律の必要性と手法、実効性確保の仕組みについて検討を求めた。

 事務局が示した「継続的な契約に対する一般的規律案」について、委員から多面的な意見が出された。議論は、契約のニーズ変化や自動更新、解約困難の場面をどう位置づけ、どのような規律手法や行政措置を組み合わせるべきかという点に集中した。

 その後、継続的契約をどこまで法律で規律するかを具体的事例に引き寄せて整理した。中途解約と自動更新を区別し、通知義務や解約料の扱いを再検討すべき点などを指摘。解約妨害への対応、死亡時の承継方法、ポイントなど無償型サービスの規律の必要性も論じ、契約法として問題領域を精密に切り分ける重要性が示された。次回開催は12月19日の予定。

各委員による主な意見は以下のとおり・・・(⇒続きは会員専用記事閲覧ページへ)

【田代 宏】

当日の配布資料はこちら(消費者庁HPより)

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