サプリの定義、議論スタート 【規制のあり方検討】消費者庁食品衛生基準審議会「形状だけで判断すべきでない」
国際的な認知と消費量がある一方で、日本では法律上の定義がない「サプリメント」の定義策定に向けた議論が27日、消費者庁の審議会で始まった。小林製薬が販売した機能性表示食品のサプリに生じた大規模な健康被害問題を受け、国は、過剰摂取などのリスクがあるサプリを法的に定義付け、安全性を確保するための一定の規制を行う方針を示している。明確な定義を与えられないまま推定1兆円超の市場規模に成長した国内サプリ産業が過渡期を迎えている。
業界5団体からヒアリング
一般的に、錠剤やカプセル剤などの医薬品的な形状がイメージされるサプリは、健康に対する効果(機能)の表示が制度上で認められている機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品といった保健機能食品から、それが認められていない健康食品を含む一般食品まで、食品市場において広く流通している。国は、そこに横串を刺すようにしてサプリの安全性を共通管理したり、健康被害の発生や拡大を未然防止できたりする枠組みを新たに設ける考えだ。それを行うためにはまず、サプリを法的に定義付ける必要がある。
サプリをどのように定義付け、どう規制するか。国は、そうしたサプリの規制のあり方を定めるための検討を先月下旬にスタート。検討事項に設定したのは、サプリの「定義」をはじめ、「製造管理(適正製造規範)のあり方」、「事業者による健康被害情報の報告」、「営業の許可・届出の検討」の4点。食品衛生行政を所管する厚生労働省(監視行政)と消費者庁(基準行政)にそれぞれ置かれた審議会で相互に連携しながら議論を進め、サプリの定義と、適正製造規範(GMP)などの規制導入について一定の結論を得ることにしている。
27日の審議会は、サプリの「定義」と「GMPのあり方」の検討を担当する消費者庁として初の議論となった。食品衛生基準審議会の新開発食品調査部会を開き、サプリの製造やGMPに関わる業界5団体から意見を聴取。事務局を務める同庁の食品衛生基準審査課は、サプリ規制の「現状」を説明するにとどめ、定義やGMPを巡る業界団体の意見をすくい上げる機会とした。
5団体は、民間の立場でサプリのGMP第三者認証を行う(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)をはじめ、同じく民間のGMP認証機関で業界団体でもある(公財)日本健康・栄養食品協会、原材料を含めたサプリの製造・品質に関する分科会を持つ(一社)健康食品産業協議会、原材料の製造・輸入事業者や最終製品の製造事業者などの会員が多い(一社)日本栄養評議会、そしてサプリの受託製造(OEM・ODM)事業者団体の(一社)日本健康食品工業。
事務局によると、次回の部会では消費者団体から意見を聴く。この日の部会終了後に記者ブリーフィングを行った食品衛生基準審査課の高江慎一課長は、「消費者団体からは(業界団体とは)違う目線のご意見をいただけると思う。まずは(幅広に意見を)抽出し、それをまとめ、定義を議論できるだけの材料を並べた上で、議論していただくことが重要だ」と述べ、サプリの定義を巡る意見の棚卸を行った上で、本格的な議論を進めていく方向性を示した。
サプリの定義付けは簡単ではない。この日の部会では、サプリを形状だけで定義するのは難しいとの認識が委員の間で共有される格好になった。錠剤やカプセルといった医薬品的な形状に限らず、抽出物や濃縮成分を用いた製品が多様な形で流通している現状を踏まえると、その目的をはじめ中身、管理手法、健康被害のリスクなど、さまざまな要素を組み合わせて整理しなければ定義付けは困難だとの意見があった。また、濃縮された成分の過剰摂取リスクを踏まえ、サプリの範囲を医薬品的な形状に限定すべきではないとする意見も出された。
「健康の維持・増進」、それがサプリの目的
この日、サプリの定義について最も具体的な案を示したのはJIHFSだった。
「健康の維持・増進に資するものとして、通常の食事を補充することを目的として摂取される食品で、栄養成分あるいは天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、化学反応により、本来天然に存在するものと成分割合及び外観性状が異なっているもの、または化学的合成品を原材料とし、錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の摂取形態で一定量を日常的に摂取することを意図した加工食品をいう。ただし、社会通念上、容易に通常の食品と認識されるものは除く」
このように、サプリの目的とは「健康の維持・増進」であるとする意見は、他の業界団体も出した。
これに対して委員の1人は、「健康の維持・増進をうたうのであれば、機能性表示食品やトクホのように制度化する必要がある」と指摘。具体的な定義を提案したJIHFSも意見を述べる中で、「消費者に真に有益な製品を提供し、消費者による適切な商品選択を可能にするためにもサプリメント固有の包括的な法制度が必要」だと訴えた。
一方、この日の部会では、原材料に対してGMP基準を適用したり、グミの製造をGMPで管理したりすることは難しいとする業界団体の主張に、委員から慎重な意見も上がった。食品衛生上のリスクに着目する委員側と、実務上の制約を考慮に入れる必要のある業界団体側では、GMPを巡る整理軸がそもそも異なる構図が垣間見えた。
食品衛生基準審査課の高江課長は部会終了後のブリーフィングで、サプリを定義付けた上で法的にどう規制しようと考えているのかと問われ、「そこは規制の強弱も含め、今後の議論で決まっていくこと。法改正なのか、違うかたちなのか。食品衛生法では規格基準を定めることもできる」と答えた。続いて、サプリを食品から独立させた新法の必要性を訴える声があることに対する見解を問われ、「審議会でどのような結論がでるか。独立して特別法を作らないといけない状況にあるのか、ないのか、という判断を今後していくことになるのだと思う」と述べた。
いずれにせよ、サプリに対する一定の規制導入は確実だ。その上で、健康の維持・増進機能の表示が容認されるのかどうか。定義や規制のあり方に加え、サプリに関する消費者への情報伝達のあり方が問われることになる。
【石川太郎】
(冒頭の写真:2025年11月27日にオンラインで開催された食品衛生基準審議会新開発食品調査部会の様子)
関連資料:「令和7年度第3回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会」配布資料等(消費者庁ウェブサイトへ)
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