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消費者庁が地裁判決に全面反論 「事実認定、法解釈に誤りがある」と主張

 消費者庁は今年9月26日、2023年10月に発出した景品表示法(優良誤認表示)に基づく措置命令を東京地方裁判所が取り消した判決を不服として、東京高等裁判所へ控訴した。ウェルネスデイリーニュース編集部ではこのほど、国側が提出した控訴理由書(令和7年9月26日付)を確認した。この控訴理由書は約70ページに及び、一審判決の誤りを詳細に指摘する内容となっている。

 問題となったのは、㈱forty-four(東京都渋谷区、獅子内善雄社長)が販売する糖質カット炊飯器『LOCABO』の広告表示。同社は自社ウェブサイトやクラウドファンディングサイト、新聞広告などで「美味しさそのまま糖質45%カット」、「おいしさそのまま糖質45%カット炊飯器」、「減らす 控える 落とす 美味しさそのまま糖質45%カット炊飯器 LOCABO」などの表現を使用し、第三者機関による検査を根拠に掲げていた。これらの表示は、特殊な蒸し器構造によりお米から溶出した糖質(でんぷん)を分離・除去できるとする仕組みを強調するものだった。 

 消費者庁は23年10月、これらの表示が「あたかも、通常の炊飯と同じ炊き上がりで米飯の糖質(でんぷん)を45%カットできる」かのように一般消費者に誤認させる優良誤認表示に該当すると認定。合理的な根拠資料の提出を求めたが、提出された資料が不十分であったため、景品表示法第7条第2項(不実証広告規制)を適用し、forty-four社を含む4社に対し措置命令を発出した。当時、同様の糖質カット炊飯器をめぐる措置命令は複数社に及び、国民生活センターへの苦情相談も急増していた背景があった。

 これに対しforty-four社は訴訟を提起。東京地裁(鎌野真敬裁判長)は今年7月26日、forty-four社の請求を認め、措置命令を取り消す判決を言い渡した。同判決は、消費者庁の措置命令が裁判所で取り消された初の事例となった。

控訴理由書で国側が強く反論

 控訴理由書で国側は、一審判決が以下の点で誤っていると強く主張している。
1.表示は「通常の炊き上がり」と「糖質45%カット」という、一般常識では両立困難な2要素を一体的に訴求することで極めて高い優良性を強調しており、優良誤認表示に該当する「疑い」が十分にある。一審は表示を不当に分断して評価した誤りがある。実際の広告では両要素が同一デザイン内で強調されており、消費者が分離して認識するとは考えにくい。

2.一般消費者は表示全体から「通常炊飯と変わらぬ美味しさで糖質45%カットできる」と受け取っており、国民生活センターに寄せられた多数の苦情(炊き上がりの悪さやカット率への不満)もそれを裏付けている。これらの苦情は購入後の失望を反映したもので、表示による誤認の存在を客観的に示す証拠である。

3.景品表示法第7条第2項は「優良誤認の疑い」があれば足りるため、資料提出命令および措置命令に裁量権の逸脱・濫用はない。不実証広告規制は事業者の立証責任を転換するものであり、消費者保護の観点から広範な裁量が認められるべきである。

4.forty-fourが提出した資料は合理的根拠とは認められず、措置命令は適法である。提出資料の試験条件は通常使用時と異なり、再現性・客観性が欠如しており、第三者機関による検証としても不十分である。

 国側は、「原判決には事実認定および法解釈に明白な誤りがある」として、原判決の取消しとforty-four社の請求棄却を求めている。また、類似商品市場での不当表示防止という公共的観点からも、措置命令の必要性を強調。
 事件は東京高等裁判所第11民事部(三木素子裁判長)に係属。12月3日午後3時からウェブ会議形式で第1回口頭弁論が開かれる予定。

【藤田勇一】


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