25年産米の相対価格が過去最高水準に 全国で140〜170%の上昇は歴史的高値
18日、農水省は2025年(令和7年)産米の相対取引価格・数量を公表した。速報によれば、25年産米の相対取引価格(玄米60kg)は10月時点で全銘柄平均3万7,058円となり、前年同月比56%増と急騰した。年産平均価格も3万6,965円と平成以降で最高水準に達した。
取引量も増加基調が続き、相対価格の上昇と並行して高値圏で推移している。主要銘柄の多くは前年の140〜170%台に達し、地域によっては180%を超える例も見られた。農水省は価格高騰について「直近は横ばい」としつつ、市場形成を尊重する姿勢を示している。
相対価格は歴史的高値、取引量も増加基調に
相対取引価格は、比較可能な平成2年以降では過去最高値となっている。10月の取引数量は33.7万トンで、前年同月比23%増となった。出回りからの累計契約数量は51.7万トンで前年同期比▲6.5万トン。
相対取引契約数量の推移を見ると、2025年産は9月・10月とも前年を上回る水準で推移している。月別数量と累積数量の双方で増加傾向が確認され、取引量の増加が価格の上昇基調と並行して進んでいる状況だ。
長期的な米価格の動向では、平成期から令和にかけて相対取引価格の上昇が続いており、特に2024年(令和6年)産(2万4,856円)から25年産にかけて大幅に伸びたこ。なお、相対取引価格には包装代、運賃、消費税相当額が含まれ、全国の年間取扱数量5,000トン以上の出荷団体などと卸売業者の取引価格を集計したものである。
また、2021年産から今年までの相対取引価格の推移を比較すると、25年産は過去5年の中で最も高い水準で推移している。月別推移でも、25年産は各月で高値を維持しており、相対取引価格の上昇が顕著である。

農水省は「直近は横ばい」政策転換は否定
価格高騰の現状を農林水産省はどう見ているのか、話を聞いた。
平成以降では過去最高水準に達している10月の全銘柄平均価格については、「高止まりの状況にあるが、直近では価格はおおむね横ばいとなっている」としている。
農政方針については、高市政権となり小泉農相から鈴木農相へと交代があった。政策の基本的な方向性について「大きな変更はない」とし、増産体制からの「180度転換」との見方に対して、「減反政策はすでに廃止されており、農業基本計画に則った対応が継続されている」と語っている。
「おこめ券」の配布については、「物価高対策の一環として検討された施策の1つであり、農水省単独の事業ではなく、重点支援地方交付金の枠組みの中に含まれるもの」とし、券の仕様や利用範囲については農水省の所管外と説明。
一般からの問い合わせは、(備蓄米を放出した)一時期よりは減少しているものの、現在も継続して寄せられているという。
また、海外米の輸入増による補填の予定はなく、「令和7年産は近年最大規模の収穫が見込まれるため、国内供給で十分対応可能」との認識を示した。そのため、価格抑制に向けた政府による直接介入は予定しておらず、市場の価格形成を尊重しつつ、今後の動向を注視していく方針という。
主要銘柄の多くが140〜170%の高値に
主要銘柄の前年同月比(価格ベース)は全国的に大幅な上昇となった。前年と比較可能な銘柄では、多くが 140%台〜170%台 の伸びを示し、全体として高い水準で推移している。
●北海道
「ななつぼし」は 134%、「ゆめぴりか」は 133%、「きらら397」は 136% といずれも前年を大きく上回った。
●東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)
青森「まっしぐら」141%
岩手「ひとめぼれ」158%、「銀河のしずく」150%、「あきたこまち」162%
宮城「ひとめぼれ」160%、「つや姫」155%、「ササニシキ」163%
秋田「あきたこまち」154%、「めんこいな」155%、「ひとめぼれ」162%
山形「はえぬき」141%、「つや姫」144%、「雪若丸」141%
福島「コシヒカリ(中通り)」138%、「コシヒカリ(会津)」147%、「コシヒカリ(浜通り)」139%、「天のつぶ」143%、「ひとめぼれ」142%
●関東(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉)
茨城「コシヒカリ」137%、「あきたこまち」138%、「にじのきらめき」135%
栃木「コシヒカリ」152%、「とちぎの星」148%、「あさひの夢」152%
埼玉「彩のきずな」134%、「コシヒカリ」147%
千葉「コシヒカリ」154%、「ふさこがね」145%、「ふさおとめ」143%
関東地域でも多くが140〜155%前後となり上昇幅が大きい。
●甲信越(山梨・長野・新潟)
山梨「コシヒカリ」183%(全国でも最高水準)
長野「コシヒカリ」159%、「あきたこまち」156%
新潟「コシヒカリ(一般)」164%、「魚沼」162%、「佐渡」167%、「岩船」168%、「こしいぶき」154%
特に、新潟はすべての主要銘柄が 160%前後〜168% に達している。
●北陸(富山・石川・福井)
富山「コシヒカリ」145%、「てんたかく」151%、「富富富」―(比較不可)
石川「コシヒカリ」164%、「ゆめみづほ」155%、「ひゃくまん穀」―(比較不可)
福井「コシヒカリ」153%、「ハナエチゼン」154%
北陸全体でも150%前後の高い伸びが並ぶ。
●東海(岐阜・愛知・三重)
岐阜「ハツシモ」151%、「コシヒカリ」156%
三重「コシヒカリ(一般)」171%、「コシヒカリ(伊賀)」168%
三重の上昇率が大きく、170%前後の銘柄が並んだ。
●関西(滋賀・京都・兵庫・奈良)
京都「コシヒカリ」163%
兵庫「コシヒカリ」162%
滋賀「コシヒカリ」148%、「みずかがみ」151%、「キヌヒカリ」142%
●中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)
鳥取「きぬむすめ」161%、「コシヒカリ」167%
島根「きぬむすめ」172%、「コシヒカリ」174%、「つや姫」174%
岡山「アケボノ」140%、「きぬむすめ」152%、「コシヒカリ」149%
広島「コシヒカリ」162%、「あきさかり」170%、「あきろまん」166%
山口「コシヒカリ」157%、「ひとめぼれ」158%、「きぬむすめ」157%
島根は170%台が並んでおり、中国地域でも全体に高い水準となっている。
●四国(徳島・香川・愛媛・高知)
徳島「コシヒカリ」157%
香川「コシヒカリ」154%、「あきさかり」155%
愛媛「コシヒカリ」180%(全国でも突出)
高知「コシヒカリ」158%
四国は愛媛と高知で特に高い値を示している。
●九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)
福岡「夢つくし」137%、「ヒノヒカリ」137%、「元気つくし」136%
佐賀「さがびより」161%、「夢しずく」161%
長崎「にこまる」146%、「なつほのか」147%、(「ヒノヒカリ」比較不可)
熊本「ヒノヒカリ」142%、「コシヒカリ」143%
大分「ヒノヒカリ」146%、「なつほのか」145%
宮崎・鹿児島の多くは比較不可だが、鹿児島「コシヒカリ」は 150%
九州も130〜160%台に集中し、高止まりの状況である。
【田代 宏】
(文中の画像:農水省の発表資料より転載)
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