フタバ食品『サクレ(SACRÉ)』が40周年 新たな商品展開にも果敢にチャレンジ
フレッシュなスライスレモンの下にサクサクで口あたりの良い氷で人気の氷菓『サクレ レモン』。生のフルーツが入った冷たいアイスとして支持され、今年で発売40周年を迎えた。工場勤務時代には実際にサクレの製造に携わり、現在は開発を担当する同社企画部 企画開発課係長の中井三鈴氏(=写真)に記念キャンペーンや原料の仕入れの苦労など、さまざまな話を伺った。


(1985年の発売当時の『サクレ レモン』(=上左)と現行品。売り場での視認性を意識してフレーバーカラーを強調するデザインにしているそうだ)
果肉のジューシーさに絶妙なバランスを取る酸味
フランス語で「神聖な」という意味の「SACRÉ(サクレ)」と、サクサク食感の響きを合わせて命名された『サクレ』。レギュラー商品はカップタイプのレモン、パイン、あずきの3品で、そのほかのWメロンなどのフレーバーは毎年、前年実績や仕入れ在庫などを考慮しながら製造・販売している。



(『レモン』に続く人気の『サクレ パイン』(=上の写真(左))と『サクレ Wメロン』(=同(右))は、たっぷり入った果肉のジューシー感が支持を得ている。根強い人気を誇る『サクレ あずき』(=同(中))は固定ファンに支えられている商品だ)
例えば秋冬限定の『サクレ 濃いみかん』は、昨年販売したところかなり好評だったことから、今年も9月からより濃厚な味わいが楽しめる秋冬限定の商品として発売を開始した。また、カップタイプ以外にもバータイプの箱入り氷菓『サクレレモンバー マルチ』も販売されている。

(今年9月より発売開始した秋冬限定の『サクレ 濃いみかん』(=上の写真)。昨年より果汁果肉を増量しさらに濃厚でジューシーな味に仕上げた自信作だ)
1985年に発売された『サクレ レモン』の大きな特徴は、生のスライスレモンを大胆に氷菓の上に載せたこと。そのインパクトある見た目とジューシーで甘酸っぱい氷菓との絶妙なバランスが支持を広げ、今日では40年目を迎えるロングセラーとなっている。
「パインやWメロン、今秋発売した『濃いみかん』などは、氷との一体感や果肉の存在感を感じられる大きさにこだわった商品ですが、レモンは発売以来、今でも変わらない形態で販売しています。
人気順ではやはりレモンがトップですが、近2年ではパインとWメロンが2位を争うように販売数を伸ばしています」
ほかにも2010年に発売して以来、根強い人気となっているのが『サクレ あずき』だ。長年にわたってシニア層に愛される、いわゆる“岩盤支持層”に支持されている商品だが、あずき自体の旨味を生かしながら、夏に涼味を感じさせる特別なスイーツとしての認知を獲得しているとのこと。
3つのフルーツミックスを開発しSNSで総選挙を実施
40周年の節目を飾る取り組みでは、昨年、SNS上で「サクレ新フレーバー総選挙」を実施した。その結果、りんご・いちご・白桃をミックスした『サクレ ピンクミックス』が1位となり、今春に期間限定商品として販売を行った。
「パイナップル・マンゴー・オレンジで作る『イエローミックス』、メロン・青りんご・洋ナシの『グリーンミックス』の3つを候補にした公開選挙でした。『ピンクミックス』が14,440票で第1位となって、春から夏までの限定発売でしたが、新たな味わいが楽しめるサクレの商品として、一定の認知を得ることができました」
しかし周年の企画が立ち上がった2年半前から、原料調達においては近年の天候不順もあり、現場では苦労もあったようだ。
「安定供給のために常に国内・海外から原料となる果実を仕入れています。今回難しかったのは、3種類のフルーツの組み合わせをピンク、イエロー、グリーンと3パターン準備する必要があり、合計で9種類のフルーツの原料を調達したことです。1つずつ取り寄せて試食し、これはいいなと思っても、他の果実との相性や、計画した数量が確保できるかなどの課題もあり、そんなところでけっこう苦労しましたね(笑)」
商品化までにどんな過程を踏んで店頭に並んでいるか、その陰にはいろんな努力や工夫がある、ということだ。


(昨年の「サクレ新フレーバー総選挙」で最多投票数を集めて1位となった『サクレ ピンクミックス』(=上の写真(左))(現在は終売)と、その投票を呼び掛けるデジタルフライヤー。投票者の中から抽選で1万円分のQUOカードなどが当たる懸賞付きで実施した。
潜在顧客の開拓も意識して無料配布イベントを開催
記念キャンペーンでは、今年5月からサクレとして初となるTVCMを放映。俳優の伊原六花さんをイメージキャラクターに起用し、夏のまぶしい日差しと青い海を背景にした爽やかな世界観の中で、「生のスライスレモンを使用している氷菓」という、サクレのおいしさの秘密を伝える内容だった。また、消費者に直接触れ合うプロモーションも実施。6月より大阪・愛知・東京・栃木・宮城の5都市にて『サクレ レモン』の配布イベントを開催し、全部で6,000個を無料配布したという。
「6月とは言え、すでに暑い時期となった今年でしたが、各地で大勢の皆さんにサクレを味わってもらうことができました。初めて食べたという方からも『今後は夏の定番おやつにしたい』との声もけっこういただきまして、手応えを感じさせるイベントになりました」
大阪や愛知などで、ブランドの認知度をさらに広める効果もあったようだ。
次の節目の年に向けて海外展開にも力を注ぐ
フタバ食品の創業は1945年。今年は80周年の記念の年でもある。アイスクリームの製造販売は創業から6年後の1951年から行っており、ヒット商品となったサクレも、そうした長年の技術の積み重ねがそのベースにあったとのこと。
また、近年には海外での展開にも力を入れており、タイや香港などのアジアの都市を中心に13カ国で販売を行っている。
「もともと海外にはこれまで“氷菓を楽しむ”という食文化があまりなかったようでして、それもあってサクレシリーズの商品は、現地の皆さんに新たなジャンルのスイーツとして迎え入れられています。若い方を中心に支持を広げてきていますので、今後も認知をどんどん広めていくつもりです」
昨今のインバウンド客にも街中のかき氷店が人気になっていることから、氷菓を楽しむ食文化も次第に近隣各国に広まり、大きな市場へと成長することだろう。
再び40周年に話を戻すが、今回のキャンペーンが社内で立ち上がったのは2年半前。その時は長年サクレブランドを支えてくれた消費者に「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えたいとの想いから周年への取り組みがスタートしたと中井氏は語る。
「キャンペーンを通じて皆さんと触れ合うごとに、社員一同、その想いを強くしていきました。サクレの無料配布やSNS展開なども、すべてはお客様への『感謝』がベースとなって企画されたこともぜひ知ってほしいと思っています」
2027年には栃木県内に新たな製造工場が操業予定とのこと。海外への展開も含めて、次の90周年、100周年に向けた同社の取り組みに注目したい。
【堂上昌幸】











