1970年生まれの『アヲハタ55』 55周年の節目に全品リニューアル
長年のジャム作りで培った精神と技術力で、原材料の美味しさをより生かした商品作りを
1970年6月、アヲハタ㈱は国内初の低糖度ジャム『アヲハタ 55』を発売。今年、55周年の節目に合わせてシリーズ全品がリニューアルされた。食パンとの相性がより高まるよう中身の改良も行ったと語る同社マーケティング室、室長代理の石川琢也氏(=写真)に現在の使用品ラインアップや、今後注力していく分野などについて聞いた。
厚く白いパンのために生まれた日本初の低糖度ジャム
“ジャムは甘いもの”との認識が一般的だった1970年に発売開始した、低糖度ジャム『アヲハタ 55 オレンジママレード』。JAS規格でジャムは糖度65度以上とされていた時代だけに、名称の由来となった糖度55%のヘルシーなジャムは実に革新的な商品だった。
「そのためお客様からご支持をいただくまで少し時間を要したと聞いています。また、高糖度商品であれば味わいや保存性、ジャム状に加工する物性などの作りやすさはあるのですが、低糖度にするにはそれらの課題をクリアしなければならず、開発段階では技術的な苦労もかなりあったようです」
その後は、食の消費者ニーズがヘルシー志向へと変化し、素材を生かしながら甘さは控えめの味が好まれるように。ジャム市場も低糖度タイプにシフトしたことで、『アヲハタ 55』も人気となり、ジャム商品を代表するブランドへと成長した。
55周年を迎えた今回のリニューアルでは、日本人の朝食の35%をパン食が占めていることから、食パンとの相性を重視。「パンの最高の相棒」であるために、よりフルーツの風味を際立たせるなど工夫をして、食パンとの相性がさらに良くなるように進化させたという。
また、国内流通のジャムにおいて初となる、季節によって原料のブレンドや製法を変える商品開発にもトライ。その成果が『アヲハタ 55 イチゴ』で、甘酸っぱさをいかしたさわやかな味わいの春夏限定『さわやかブレンド』(2〜8月順次出荷)と、甘い香りをいかした芳醇な味わいの秋冬限定『濃厚ブレンド』(8〜2月順次出荷)の2種類を今年発売した。季節に合わせたイチゴの味わいを提供することは、今回のリニューアルの大きなポイントとなっている。
瀬戸内をイメージした新たなパッケージに刷新
リニューアルでは『アヲハタ 55』シリーズのパッケージも刷新した。デザインはアヲハタ創業の地であり、現在も本社・工場を構える瀬戸内をイメージした意匠を採用している。

(『アヲハタ55』周年記念商品の『イチゴ さわやかブレンド』(左)と『イチゴ 濃厚ブレンド』)
瓶詰めタイプ以外にも、弁当や行楽などに便利な使い切り用のスティックタイプも新たに加わり、多様化するライフスタイルに対応できるラインアップに整えた。

(個食や行楽時のニーズに応えようと55周年のタイミングで発売開始したスティックタイプの『55』ジャム。写真は『イチゴ(さわやかブレンド)』。ほかには『イチゴ(濃厚ブレンド)』、『オレンジママレード』、『ワイルドブルーベリー』がある)
「個食のニーズが高まっていることもあり、スティックタイプは参考小売価格214円前後と、トライアルしやすい設定にすることで、ジャムを食べる習慣のない人にも気軽に手に取ってもらえるようにしました。また、単身者からは瓶詰めタイプだと食べきれないという声もあったことから、使い切りの容量で、行楽やちょい足しなどいろんなニーズに応えられるようにもしています」
周年記念のプロモーションも大規模に展開した。全国規模で販売店の店頭付近に大きなワゴンを配置し階段状に商品を陳列。キラキラ輝く瓶に入ったカラフルなフルーツの色が映えると好評を得たそうだ。ほかにもイチゴジャムをフィーチャーしたテレビCMや、YouTubeではジャム作りのこだわりをほんわかとしたアニメーションで表現した「おいしいジャムのひみつ〜イチゴちゃんとカオリちゃんの約束」を配信するなど、若い年代層にも届くよう情報発信にチャレンジ。また、過去に発売されたフレーバーの「復活総選挙キャンペーン」をSNSで実施し、1位に選ばれたフレーバーは来年に季節限定で復刻発売する予定だ。
果物本来の美味しさが楽しめる冷凍フルーツ商品
『アヲハタ 55』全シリーズの中で、最も人気のあるフレーバーはイチゴ、次いでブルーベリー、オレンジママレードと続く。また55以外のジャムのシリーズでは、人気なのは『まるごと果実』だ。ほぼ果実といっても過言ではないこの商品は、ヨーグルトとの相性も抜群であるだけでなく、スポンジケーキと生クリームがあればケーキを作ることができる提案もしており、パンだけでなくさまざまな食材と組み合わせて食べたいという人に好評だという。




(好きな時にすぐ食べられる“凍ったままでやわらかい”冷凍フルーツ『アヲハタ くちどけフローズン』。
左上から『いちご』『青りんご』『白桃』『アプリコット』)
そして近年、売り上げを伸ばしているのが冷凍フルーツ商材だ。『まるかじゅり』は、パウチ容器に入った果肉を凍らせて、もみほぐしながら食べる新感覚の冷凍フルーツ。また『くちどけフローズン』は、好きなフルーツを手軽に楽しんでもらいたいという想いで開発された果汁づけ冷凍フルーツである。アヲハタ独自の「やわらかフローズン製法」によってカチカチにならないため、冷凍庫から出してすぐに食べられるよう工夫されている。
「50%以上の果肉を使用している『まるかじゅり』は、2〜3種類の果物を組み合わせたもので、好きなタイミングで好みの柔らかさの状態でブレンドされたフルーツの美味しさを手軽に楽しむことができる商品です。もう一つの『くちどけフローズン』は、果物に果汁を染み込ませた状態で冷凍しているのでフルーツの形そのままで味わってもらえます。常備している人も多く、リピート率も高いですね」
どちらも暑くなると売り上げが伸びるため、夏の酷暑が常態化するとされていることもあり、今後の伸びしろに期待を持っているそうだ。
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(もんで食べる新感覚の冷凍フルーツ『アヲハタ まるかじゅり』シリーズは全4品。写真は今年8月に発売された『ブルーベリー&シトラス』)
今後広めたいイメージは「フルーツのアヲハタ」
ところで、猛暑や局地的な豪雨など、世界的な天候不順は原材料のフルーツの仕入れを難しくしている現状もある。同社は創業以来「果実加工は原料を選ぶことによって7割は決まる、残りの3割は創意工夫によって技術力を高めること」との考えのもと、品質第一主義を貫き原料の吟味を徹底してきただけに、最近の天候不順は悩みの種だという。
「安定的な仕入れは、大きな課題です。品質の高いフルーツを安定して確保するには、取引先との信頼関係の構築が重要になります。そのため、現地に弊社の技術者が赴き、農場や加工工場で指導を行うなど、高品質な原料作りに取り組んでいます」
アヲハタでは世界中から原料を調達しており、最適品種の選定、栽培に最適な土地選び、土・畑作り、栽培管理、工場での加工、使用前管理に至るまで、消費者に商品が届くまでの工程に一貫して関わっている。
フルーツの美味しさを磨き続けてきた歴史を持つ『アヲハタ 55』においても、原料のこだわりはもちろんのこと、濃縮過程で蒸発する香りを集めて瓶に戻すなど、フルーツ本来の美味しさを瓶詰めにすることに心血を注いできた。55周年の各種プロモーションによって、美味しさへのこだわりはもちろん、そんなジャム作りの裏側を少しでも知ってもらう契機となれば嬉しいと石川氏は語る。
今後はジャムだけでなく“フルーツのアヲハタ”として広く認知されるように鋭意取り組んでいく。
【堂上昌幸】
(下の写真=発売当時の『オレンジママレード』ラインアップパンフレットの画像。左から2番目が『55』だ)
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