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機能性関与成分巡る検証事業の影響力 【機能性表示食品】分析方法の検証で撤回、少なくとも49件

 消費者庁が機能性表示食品の「機能性関与成分」に関する第三者検証事業の報告書を矢継ぎ早に公表している。機能性表示食品制度の施行初年度にあたる2015年度分の報告書を9月に公表したのを皮切りに、今月11日までに2024年度分、23年度分、22年度分、そして21年度分の計5年度分を公表した。今後、その他の年度分も順次公表する。これまで非公表とされてきた報告書の中身が詳らかにされたことで、検証事業の結果を受けて撤回に至った機能性表示食品が少なくなかった実態が見えてきた。

検証担うのは国立衛生研

 「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業」。機能性関与成分の分析方法に関する検証と、市販されている機能性表示食品の買上調査がセットになった、許認可の要らない機能性表示食品の事後規制に役立たせるための検証事業だ。同庁は、2015年度から毎年度、国立医薬品食品衛生研究所と日本食品分析センターに委託する形で同事業を実施している(2015年度は国立医薬品食品衛生研究所のみ)。

 同事業について、現在までに5年度分の報告書を公表した消費者庁の説明によると、買上調査の結果、市販されている商品中の機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていたため届出撤回に至ったのは、計5件。一方で、それを大きく上回るのが、機能性関与成分の分析方法に関する検証結果を受けた撤回だ。撤回の意向が示されたものも含めて計49件に上るという。

 機能性関与成分の分析方法に関する検証では、届け出られた分析方法のとおりに分析(定性・定量)できるかどうかを確かめている。検証を担うのは、国の研究試験機関である国立医薬品食品衛生研究所(国立衛生研)だ。開示された報告書によると、2024年度は98件、23年度は93件、22年度は221件、21年度は45件、そして15年度は146件の機能性表示食品について、届け出られた分析方法を示す資料の検証が行われた。

 国立衛生研による検証結果を受け、消費者庁は、追加資料の提出を届出者に求めている。同庁の説明によると、検証件数が221件と現時点で最多の2022年度は、半数を超える141件について提出を依頼した。そのうち122件については変更届出が「提出済み」もしくは「提出予定」だが、1割強に相当する19件は撤回届出が行われたという。国立衛生研が提起した、主に分析方法に関する疑義を追加資料で覆すことができず、届出の取り下げを余儀なくされたとみられる。

 追加資料の提出依頼件数が多いのは、2022年度だけではない。24年度は検証98件に対して69件、23年度は93件中74件、21年度は45件中27件、15年度は146件中68件に追加資料の提出が要請された。22年度も合わせると検証件数は延べ603件、そのうち過半数の379件に追加資料の提出が求められたことになる。

 その大半が、追加資料を通じた補足説明によって、試験分析に関する国内屈指の専門集団である国立衛生研を納得させたといえるものの、1割強の49件が撤回に至った。品質を担保するのに必要な、定性・定量に関する分析方法の設計が不十分な場合、そうなる可能性がある。

報告書、検証結果を一覧で示す

 公表された検証事業の報告書を見ると、個別の検証結果が一覧表にまとめられている。マスキングはされていない。機能性表示食品は、届け出た資料の内容が全面的に開示される中で、届出後の第三者による機能性関与成分に関する検証結果についても、買上調査結果を含め、同様の措置が取られることになった。

 分析方法に関する検証事業の報告書を見ると、国立衛生研の評価結果とともにコメントが付けられている。「コメントは科学的な観点からの指摘であり、『機能性表示食品の届出等に関する手引き』等で届出者に求めていない事項も含まれる。評価が『△』又は『×』であっても、必ずしも届出資料に不備があることを示すものではない」──報告書の公表にあたって同庁は、そうした断り書きを強調する形で追記することにした。もともと公表は想定されていなかったためか、「商品名問題ない?」などと、分析方法とは無関係と考えられる主観的なコメントも見られる。

 非公開にされてきた同検証事業の報告書が公表されるようになった背景には、2015年度分報告書の一部非開示を不服として提起された情報開示請求訴訟を巡る最高裁判決がある。判決を受け、全面開示を拒んできた消費者庁が方針を転換した。報告書の全面的な開示を実施するにあたり、同庁の堀井奈津子長官は9月の会見で、「分析方法に関する検証結果も公表をする。事業者全体による分析方法の改善への取組が促されるのではないかと期待をしている」と述べ、報告書の公表は事業者の利益にも資すると強調した。

【石川太郎】

関連資料
機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書(消費者庁ウェブサイトへ)
堀井消費者庁長官、2025年9月11日記者会見要旨(同上)

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