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健康食品GMP実践的対応ガイド(4) 【寄稿】GMP体制の構築①~経営層の責務と主要な責任者の役割

㈱シーエムプラス シニアコンサルタント 田中良一

 前回は、GMPの根底にある「品質は作り込む」という思想とGMP三原則について解説しました。第4回では、その思想を組織として実践するための人的基盤、すなわち経営層の責務と、GMP運用の中核を担う主要な「責任者」の役割に焦点を当てます。

1.経営層の責任とリーダーシップ
 健康食品GMPの構築と運用における最終的な責任は、現場の担当者ではなく、届出者である企業の経営層にあります 。GMP体制の構築は、単なる法令遵守活動ではなく、企業の存続に関わる重要な経営課題です。
善管注意義務:企業の取締役には、民法および会社法上、善良な管理者として期待される注意を払って業務を執行する義務(善管注意義務)があります 。GMPのような法令遵守体制を適切に構築・運用し、必要な経営資源(人、モノ、金)を配分することは、この義務の一環です。体制の不備によって重大な健康被害や行政処分が発生した場合、経営者としての責任を問われる可能性があります。
経営層のコミットメント:GMPの導入と維持には、全社的な協力とリソースが必要です。経営層が品質確保を最優先事項として明確に位置づけ、そのための投資を惜しまないという強いリーダーシップを示すことが、実効性のあるGMPシステムの構築には不可欠です。

2.GMPを動かす3つの司令塔:総括責任者、製造管理責任者及び品質管理責任者の役割
 健康食品GMPでは、製造所ごとに以下の3つの主要な責任者の設置が義務付けられています。この3者がそれぞれの役割を果たすことで、GMPシステムは機能します。
 1.総括責任者
 o 製造管理と品質管理の業務全体を総括・監督する、製造所の最高責任者です 。
 o バリデーションや自己点検の実施を確認し、逸脱や品質情報に関する最終的な報告を受け、製品回収のような重大な判断に関与します。
 2.製造管理責任者
 o 製造部門を統括し、製品を計画通りに正しく製造する実務の責任者です。
 o 製造指図書の作成、製造記録の管理、製造工程や設備の管理など、生産活動全体を監督します。
 3.品質管理責任者
 o 品質部門を統括し、製品の品質を客観的に評価・保証する実務の責任者です。
 o 原材料や製品の試験検査と結果判定、参考品の管理、変更管理や逸脱管理の評価・承認などを担当します。

3.チェック&バランスの要:製造と品質の独立性
 GMPにおいて最も重要な組織原則の一つが、製造管理責任者と品質管理責任者の兼務禁止です。これは、生産(アクセル)と品質(ブレーキ)の役割を明確に分離し、互いに牽制し合うことで、品質保証の客観性と独立性を確保するためです。
• 製造部門(アクセル):製品を「造る」部門であり、効率的に生産を進める役割を担います。
• 品質部門(ブレーキ):製造された製品の品質を客観的に評価し、問題があれば「止める」役割を担います。

 このチェック&バランス機能が働かなければ、納期やコストのプレッシャーから品質が犠牲にされ、重大な問題に繋がりかねません。

    4.医薬品では…QAとQCの機能分離
     近年の医薬品GMPでは、品質部門の機能をさらにQA(Quality Assurance:品質保証)とQC(Quality Control:品質管理)に分離することが国際標準となっています。
    • QC(品質管理):主に「モノ」の品質評価を担当します。試験検査を行い、製品等が規格に適合しているかを判定するのが主な役割です。
    • QA(品質保証):「システム」の適切性を保証します。GMPシステム全体が正しく構築・運用されているかを監視し、変更管理や逸脱管理、自己点検などを通じて、品質が一貫して達成される仕組みそのものを保証する役割です。

     健康食品GMPではここまで厳密な分離は義務付けられていませんが、この考え方を理解し、組織の成長に合わせて導入を検討することは、より高いレベルの品質保証体制を築く上で非常に有効です。

     実効性のあるGMP体制は、経営層の強いリーダーシップと、明確な役割分担の下で機能する組織があって初めて成り立ちます。

     次回は、この組織が活動するための基準となる、GMPの骨格「文書体系」について、製品標準書、基準書、手順書の作り方を解説します。

    【編集部より】本連載は原則、週1回のペースで掲載します。また本連載は、シーエムプラスが運営する「GMP Platform」にも掲載されます。

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    健康食品GMP実践的対応ガイド(1)なぜ今、適正製造規範への適切な対応が求められるのか
    同(2)健康食品GMPの全体像~医薬品GMPとの類似性と責任の所在
    同(3)GMPの基本~「品質は作り込む」という思想とGMP三原則

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