健康食品GMP実践的対応ガイド(2) 【寄稿】医薬品GMPとの類似性と責任の所在
㈱シーエムプラス シニアコンサルタント 田中良一
前回は、紅麹事案を背景とした健康食品GMP義務化の重要性について解説しました。第2回では、GMPの全体像をより具体的に把握するため、その構造を医薬品GMPと比較しながら解き明かし、誰がどのような責任を負うのかを明確にします。
1.健康食品GMPと医薬品GMPの構造比較
健康食品GMPと医薬品GMPは、製品の品質と安全性を確保するという目的は同じですが、その適用範囲には重要な違いがあります。

大きな違いは、上の表に示すとおり、製品の有効性・機能性を担う主成分(機能性関与成分/原薬)に対するGMP適用の扱いです。医薬品では、有効成分である原薬の製造段階からGMPが義務付けられていますが、健康食品では、機能性関与成分の製造は現時点では推奨にとどまっています。
逆に言うと、健康食品GMPでは、外部から受け入れる主成分/原材料の品質をいかに確保するかが、品質管理の最初の、そして最も重要な関門となります。
2.大きな参考となる「平成17年版 医薬品GMP」
第1回でも触れた通り、今回の健康食品GMPは、平成17年(2005年)施行の医薬品GMP省令(旧GMP省令)と極めて類似しています。組織体制、文書体系、バリデーション、変更・逸脱管理といった基本的な考え方や要求事項の多くが共通しており 、これは健康食品事業者がGMPを構築する上で大きな参考となります。
医薬品業界が20年近くかけて培ってきたノウハウや行政当局との対話の歴史は、これからGMPに取り組む皆様にとって、貴重な学びの宝庫と言えるでしょう。
3.責任の所在:届出者と製造業者の関係性
健 康食品GMPの運用において、最も理解すべき重要な点は「責任の所在」です。この関係は、医薬品における「製造販売業者」と「製造業者」の関係に非常によく似ています 。
• 製造者(製造所):GMP基準に従い、製品を正しく製造する実行部隊です 。原材料の受け入れから製造、品質管理、出荷まで、日々のGMP活動を担います 。
• 届出者(許可者):製品の品質と安全性に最終的な責任を負う司令塔です。市場に製品を流通させる主体として、製造所が適切にGMPを遵守しているかを管理監督する義務があります 。
医薬品の世界では、製造販売業者の品質管理基準としてGQP(Good Quality Practice) 、市販後の安全管理基準としてGVP(Good Vigilance Practice) が定められています。健康食品の届出者も、これらに準じた品質保証・安全管理の視点を持ち、製造所と一体となって品質システムを構築・維持することが求められるのです。
なお、健康食品GMPにおいても、GQPとGVPの要素は含まれており、参考となる部分があります。
健康食品GMPは、製造所だけの問題ではありません。届出者が主体となり、サプライチェーン全体を俯瞰して品質を保証する体制を築くことが求められています。
次回は、GMPの根底に流れる哲学である「品質は作り込む」という思想と、その具体的な行動指針となる「GMP三原則」について解説します。
【編集部より】本連載は原則、週1回のペースで掲載します。また本連載は、シーエムプラスが運営する「GMP Platform」にも掲載されます。












