1. HOME
  2. 健康食品
  3. 学術誌『薬理と治療』、掲載数が激減 編集部調査で判明、24年は前年比4割減も出版社は沈黙

学術誌『薬理と治療』、掲載数が激減 編集部調査で判明、24年は前年比4割減も出版社は沈黙

 ウェルネスデイリーニュース編集部では、学術誌「薬理と治療」の直近の掲載論文数を調査した。同誌に掲載される論文数、ならびにページ数が、昨年中旬以降減少しているとの業界内からの指摘を受け、2023年1月号か25年8月号までの同誌に掲載された投稿論文数とその該当ページ数、ならびに同誌の総ページ数を確認した。

 それによると、同誌への論文投稿総数は2023年が114本だったのに対して、24年は66本と約40%減少していた。総ページ数を見てもその減少は明らかで、23年が合計1,905ページだったのに対して、24年は1,513ページと約20%減少した。
 当然、論文に割かれるページ数も減少している。23年は年間を通じて1,325ページだったのに対して、24年は896ページと約30%減少。25年が8月号までの調査のため、各年の月平均を算出した。それによると、23年は掲載論文数が月平均10本で該当ページが同110ページ、総ページ数が同159ページだった。それに対して24年は、それぞれ6本、75ページ、126ページ、25年は8月号時点で3本、33ページ、93ページと減少傾向が明らかだ。

 昨年2月、医師の染小(そめこ)英弘氏らの研究グループが、国内の食品CRO機関5社が関与した食品機能に関する臨床試験論文32報の調査結果を海外学術誌上で論文発表し、一部の論文をはじめ、論文に関わるプレスリリースおよび広告に「スピン」が見られたと指摘。それを受け、ウェルネスデイリーニュース編集部は同6月、32報のうち18報の論文を掲載していた『薬理と治療』を発行するライフサイエンス出版㈱(東京都世田谷区、須永光美社長)に対し、「査読期間」、「論文受理の割合」、「スピンを指摘されたことに対する受け止め」などを尋ねた。その際の一問一答は2024年6月11日付で既報のとおり。

 編集部は今月中旬、掲載論文本数の明らかな減少の理由などを尋ねる取材をライフサイエンス出版社に申入れ、①投稿論文数が減ったのか。②(あるいは)審査(査読)が厳しくなり、採用論文数が減ったのか。③もし②である場合、審査の方針や体制が変わったのか。④掲載論文数の減少をどう感じているか(受け止めているか)。⑤減った論文は、別の雑誌に投稿されていると思うが、どの雑誌に行ったと考えているか──以上5つの疑問を投げかけた。しかし、同社からは期日までに回答は得られなかった。

激減の背景に査読強化か 求められる出版社の説明

 『薬理と治療』の論文掲載数激減の背景には、査読体制の見直しがありそうだ。ライフサイエンス出版は昨年6月、「染小論文」に対する受け止めを尋ねる編集部の取材に対し、「現実にSpinがあるとして批判された論文が 『薬理と治療』に多く掲載されているという指摘については真摯に受け止めており、本誌ではレフリーの人数を増やし、CONSORTチェックリストを添付していただくなど、投稿規程の改訂も含め、逐次検討・改善を行っている」などと答え、査読体制を強化する考えを示唆していた。

 それによって、リジェクト(掲載拒否)となる論文が増加。その結果、ページ数が顕著に薄くなった可能性が考えられる。加えて、回答が得られなかったため憶測の域を出ないが、リジェクトの増加を受け、同誌に投稿される論文の本数自体が減少しているのかもしれない。

 国内で実施された、食品機能を検証する臨床試験論文を数多く掲載してきた同誌。投稿された論文の査読体制を厳格化の方向で見直したのであれば、その旨を対外的に説明すべきだ。それをしない限り、「染子論文」が提起した疑義は払しょくされない。そのことは、現在の同誌に掲載されている論文の信頼にもかかわる問題だ。

 本件について、食品臨床試験の現場に携わる食品CRO 機関や有識者らに、感想と現在の論文投稿状況などについて聞いた。関係者の見解については、11月10日発刊の月刊誌「Wellness Monthly Report89号」で詳報する(月刊誌「Wellness Monthly Report」は㈱ウェルネスニュースグループ(WNG)会員の会報誌です。本誌購読を希望の方は、会員登録をお願いします)。

【藤田勇一】
 
 

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ