サプリ規制の在り方検討スタート 定義・製造管理・健康被害報告など本格議論へ、食品衛生法の一部見直しも
厚生労働省の厚生科学審議会食品衛生監視部会は23日午後、食品衛生法の一部見直しと、サプリメントの規制の在り方を巡る検討を開始した。食品衛生法は、監視指導を担当する厚生労働省と、基準策定を担う消費者庁に所管が分割されているため、今後、同庁の食品衛生基準審議会でも並行して検討を進めることになる。日本には法律上の定義がない「サプリメント」の規制の在り方検討は、昨年発生した小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題への対応方針を政府が取りまとめる中で、積み残し検討課題とされていた。
「横断的なサプリ規制」の在り方を議論
部会事務局を担当する厚生労働省の健康・生活衛生局食品監視安全課は、サプリメント規制の在り方検討の主な論点として、「サプリメントの定義」、「製造管理等の在り方」、「事業者による健康被害情報の報告」の3つを掲げた。
小林製薬による紅麹サプリ(機能性表示食品)の健康被害問題を受け、政府は、機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)のうち、錠剤やカプセル剤など通常の食品とは異なる形状を持ち、過剰摂取などのリスクがあるサプリに対する規制を強化。食品表示法の枠組みで、製品の製造・品質管理におけるGMP(適正製造規範)の遵守をはじめ、健康被害疑い情報の行政機関への報告などを事業者に義務付けた。今後の議論の焦点は、そうした義務からの適用除外状態に置かれている数多くの健康食品のうち「サプリメント」を法律上でどう定義づけるか、また、それに対して機能性表示食品などと同様の規制を一律に掛けていくかどうかになる。
さらに、サプリを製造したり、販売したりする事業者のほか、市場に流通している商品の配合成分等の概要を、行政機関が把握できるようにする仕組みの導入も議論になる見通し。現状、そうしたことが可能なのは、「届出制」が導入されている機能性表示食品と、「許可制」のトクホにとどまる。小林製薬の紅麹サプリ事案への対応方針を取りまとめた政府の関係閣僚会合は、「さらなる検討課題」として、サプリの規制の在り方とともに、「許可業種や営業許可施設の基準の在り方」を検討するよう厚生労働省や消費者庁らに指示していた。議論の転がりかた次第では、事業者に対する強い規制が不可避の「業許可制」の導入が現実味を増してくる可能性もある。
検討結果の影響は、機能性表示食品やトクホのサプリにも横断的に及ぶことになる。議論は年明け以降に本格化する見通し。サプリの定義と製造管理の在り方は主に消費者庁、健康被害情報の報告などは主に厚生労働省のそれぞれ審議会で議論を進める方向で調整されている。食品監視安全課の今川正紀課長(前消費者庁食品表示課保健表示室長)は、部会終了後に行った記者説明(ブリーフィング)で、「(両省庁で)連携して対応することが一番大事だ」と述べ、議論の内容を両省庁で共有しながら検討を進める原則を強調。実際、この日の部会には、消費者庁の食品衛生基準審査課長が参加していた。23日時点で、同庁における審議会の開催日時は決まっていない。
改正食衛法、施行後5年に合わせた見直し
今後の議論では、食品衛生法の見直しに向けた検討も行われる。この見直しは、2018年に改正された食品衛生法の完全施行(20年)から5年が経過することによるもの。改正法には施行後5年を目途にした見直し検討規定が盛り込まれており、法改正で新規導入したHACCPに沿った衛生管理の制度化や、健康食品で初めてGMP(適正製造規範)を義務化した指定成分等含有食品制度などの施行状況、実態、課題などを整理した上で、審議会で対応策を取りまとめ、必要に応じて見直す。この日の部会で食品監視安全課は、主な検討事項として、「HACCPによる衛生管理の徹底」、「指定成分等含有食品」、「食品等の自主回収(リコール)制度」の3つを提示した。
この日の部会は、食品衛生法の見直しやサプリ規制の在り方検討に向けた「キックオフ」(大坪寛子健康・生活衛生局長)の位置づけ。そのため、個別具体的な議論は行われず、委員が今後の議論に向けた意見などを述べるにとどまり、約1時間で終了した。
この中で、委員の藤原慶正・日本医師会常任理事は、サプリの規制の在り方に関して、「最も大事なのは、健康被害が広がらないようにすることだ」と指摘。その上で、小林製薬の紅麹サプリに生じた健康被害の原因物質と推定されているプベルル酸を引き合いに出し、含まれることが想定されない成分による健康被害などの未然・拡大防止に「迅速に対応していける体制をこの機会に作るべきだ」と意見した。藤原氏は、消費者庁の食品衛生基準審議会の委員も務めている(9月10日時点)。
部会は、来月と再来月にも開催される見通し。その後、年明け以降、今後の対応策の検討を進める予定だ。検討結果を取りまとめる時期の目途については、「年度内に仕上げるとかそういうことは現時点ではなかなか申し上げられない」(今川課長)。定義も含めて議論することになるサプリ規制の在り方検討は、長丁場になることが予想される。
【石川太郎】
(冒頭の写真:22日に都内で開催された食品衛生監視部会の様子。マイクを持っているのが厚労省の大坪健康・生活衛生局長、その隣が今川食品監視安全課長。委員はリモートで参加。会議の様子はYouTubeでライブ配信された)
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