ハム・ソーセージ表示見直し進む 消費者庁が第14回分科会開催、業界は現行維持を要望
消費者庁は10月22日、「第14回個別品目ごとの表示ルール見直し分科会」において、ハム類、プレスハム、混合プレスハム、ソーセージ、混合ソーセージ、ベーコン類の6品目に関する現行の表示ルールと、業界団体からの要望内容について説明を行った。
6品目の定義を再整理 消費者庁が方針説明
説明ではまず、6品目の定義が示された。ハム類は「豚肉の単一肉塊を使用し、塩漬、調味、燻煙・加熱を行ったもの」と定義。プレスハムは「豚肉や牛肉、鶏肉など10g以上の肉塊を原料とし、つなぎを加えて成形・加熱したもの」である。混合プレスハムはこれに魚肉を含み、魚肉の割合が50%以下のものとされた。
ソーセージは、混合プレスハムと同様の畜肉を対象としながらも「ひき肉を使用する点が異なる」。魚肉の割合は15%未満で、つなぎの割合は15%以下である。混合ソーセージは魚肉割合が15%以上50%未満のものとされた。
ベーコン類は「豚肉の単一肉塊を整形・塩漬・燻煙したもの」であり、ハムと類似する加工工程を持つ。
ハム類については、別表3~22に定められる定義、名称、原材料名、名称規制、表示禁止事項の整理が報告された。
「骨付きハム」、「ボンレスハム」、「ロースハム」、「ショルダーハム」など部位別の定義を維持する方針で、業界団体も「他の食品と区別する上で必要」として現行維持を求めた。
一方、外観から判断できる形状表示の削除、原材料名の横断ルールへの統一、官公庁の推奨を誤認させる表示禁止事項の整理など、簡素化の要望も挙げられた。
業界からは「現行維持」の声多数
プレスハムは現行の「つなぎ20%以下」、「でんぷん含有率表示義務」などを維持する方向が示された。業界団体からは、家禽肉の範囲明確化や、使用実態のない食肉種の削除など、定義の現実化を求める声があった。
混合プレスハムでは、鯨肉を含む魚肉入り製品を対象とする点を明示。魚肉割合が50%を超えるものは別区分となるため、消費者が誤認しないよう、表示の整合性を保つ必要性が指摘された。
ソーセージ類および混合ソーセージでは、ハム類・プレスハム類と同様に、食品表示基準別表の定義・表示区分を中心に整理が行われた。ソーセージは10g以上の肉塊ではなくひき肉を使用したものであり、魚肉の割合が15%未満、つなぎの割合が15%以下となる。
混合ソーセージはさらに魚肉の割合が15%以上50%未満のものとなっている。業界団体からは、「加工形態が似通うため、表示ルールの横断的整理を進めるべき」との要望が出された。
ベーコン類では、「ベーコン」、「ロースベーコン」、「ショルダーベーコン」、「ミドルベーコン」「サイドベーコン」などの部位別の定義を維持する一方、使用頻度の低い定義項目の見直しも課題として提示された。
業界からの要望についても紹介した。
別表3「定義」については、定義があることにより他の食品との区別を明確にしているため、現状維持を求めている。ただし、骨付きハムの定義のうちベーコン類で廃止を要望しているサイドベーコンに関する定義の削除を要望している。
別表4「名称」は、定義に合わせて現状を維持。ただし、形状については外観から判断できるため削除を要望。同「原材料名」については横断ルールに統一するため廃止を要望。
別表5「名称規制」については、類似商品と区別するため現状維持を要望。
別表22「表示禁止事項」については、横断ルールや景品表示法を参考に判断できるため、廃止を要望しているという。
合理化進めつつ、消費者混乱を懸念
(一社)日本食肉加工協会は、消費者庁が示した方針に対し、業界の実情を踏まえた具体的な立場を説明した。消費者庁が制度全体の合理化を進める行政的視点から「定義・名称・原材料表示の簡素化」を打ち出していることに解を示しつつも、現場では長年にわたり定着してきた分類や名称が消費者の判断基準として機能していると指摘した。その上で、急激な整理は混乱を招く恐れがあるとして、現行の定義と名称を原則維持する方針を求めた。
特に「ロースハム」、「ボンレスハム」、「ショルダーハム」、「ラックスハム」などの区分は、消費者が商品を選択する際の目安として機能しているとし、削除や統合ではなく「存続」が妥当とした。
また、外観から判断できる形状(ブロック、スライス等)の表示義務については、「視覚的に明確である」として削除を提案。原材料名や禁止表示の詳細規定については、食品表示基準の横断的義務表示や景品表示法で対応できるとして、個別ルールの簡素化を求めた。
プレスハムについては、つなぎの割合を「20%以下」とする現行基準を維持し、家禽肉の範囲を明確化する修正を提案した。家兎肉の使用実態がないため削除を求め、より実態に即した定義とする方針を示した。
混合プレスハムでは、畜肉・家禽肉に加え、魚肉を最大50%まで配合する製品を対象とし、鯨肉を含む場合もあることを明示した。製品の多様性を踏まえ、表示の明確化を求めた。
協会は、ソーセージやベーコン類についても同様に、「消費者の認知度が高い既存区分の維持」を要請しつつ、実態に合わない部分については整理を進める考えを示した。
協会は、表示制度の見直しに反対するものではなく、「消費者が混乱せず、かつ業界の実務にも即したかたちで制度を再構築することが重要」との立場を強調した。消費者庁が制度の整合性を追求する「俯瞰的立場」にあるのに対し、協会は製造・販売現場から「実務的整合性」を訴える役割から、方向性を共有しながらも焦点の置き方に違いを見せた。
でんぷん表示・ケーシング表記など議論白熱
最後に、委員による質疑応答が行われた。議論は、でんぷん含有率の表示、ケーシング(腸詰材)の表記方法、塩せき・無塩せき表示の理解など、多岐にわたった。
(一社)日本農林規格協会の島崎眞人委員は、協会提案の中で「花禽肉の定義を明確化」とある点について、「定義文中に『食用に飼育された鳥』とあるが、これではほとんどの鳥が含まれるのではないか」と指摘した。また、家兎肉の削除方針に関連して、「海外では使用実態がないのか」と質問した。
協会側は、「花禽肉は畜産缶詰瓶詰め業界の定義を参考にしたもので、範囲を明確化するために追記した」「家兎肉については輸入品でも使用例は把握していない」と回答した。
(一社)全国消費生活相談員協会の澤木佐重子氏からは、「プレスハムやソーセージにでんぷんなどの結着材料を使用している場合、内容・品質を判断する目安として含有量(表示)を残すべき」との意見が出た。
これに対して協会側は、結着材の使用実態と製品特性の双方から説明した。協会によれば、プレスハムなどの製品は、肉塊と肉塊をつなぎ合わせて形成するため、結着性を保つ目的で、でんぷんや卵たん白などの結着材料が必要になるという。いわば、家庭で肉団子に片栗粉を加えたり、ハンバーグに卵を混ぜるのと同じ原理であり、製品の品質を一定に保つために不可欠な工程であると説明した。
一方で、結着材には多様な種類があり、その中で「測定可能なでんぷん」だけを取り上げて表示義務を課すことは合理的ではないとの見解を示した。業界の調査では、プレスハムなどの製品は日本農林規格(JAS)と同等の品質基準を満たすものが多く、定義上も結着材の使用量には上限が定められている。このため、法的に品質が担保されている範囲内であれば、特定成分の含有率を個別に明示する必要はないとの考えを示し、「厳しい表示を義務づけるよりも、品質基準と事業者の自主的管理で十分対応できる」と、改めて削除方針を述べた。
消費者庁も、「JAS規格品は一定以下の含有率しか認められないため、JASマークの有無を基準に選択できる」と補足し、実質的な品質管理が機能していることを示した。
しかし「JASマークの普及率は3割程度」とされており、今後の表示簡素化と消費者理解の両立が課題として浮き彫りとなった。
可食性ケーシング(豚腸、羊腸、コラーゲン等)の表示方法を巡っては、委員から「原材料欄の最後に書くと誤解を招く」、「素材(豚腸・コラーゲンなど)を括弧で示すべき」との意見が出た。
協会は「過半数の事業者が原材料欄に含めることを希望している」と述べ、消費者庁も「食べる部位である以上、原材料欄に記載すべき」と賛同した。最終的に、原則は重量順表示としつつ「困難な場合は最後尾でも可」とし、この取り扱いを消費者庁のQ&Aで明確化する方向で一致した。
東京海洋大学の小川美香子委員や(一社)Food Communication Compassの森田満樹委員からは、「無塩せきと発色剤不使用が混同されている」、「『塩せき』自体の定義がなく分かりにくい」との指摘が相次いだ。協会は「無塩せきは発色剤を使わない製品であり、豚肉本来の色を保つもの」と説明。さらに、「塩せき・無塩せきの表記は読みにくいため、ルビを振るか、ひらがな表記も認める方向で検討している」と述べた。
また、無塩せきハムには正式な定義が存在しない点について、「流通量が増えており、将来的に整理が必要」とした。
協会からは、家畜肉や家禽肉などの定義整理に関連して、家禽や野生鳥獣を原料とする加工品「ジビエ(野生鳥獣肉)」にも言及した。協会は、最近ジビエの流通や加工が増加している現状を踏まえ、今後、表示ルール上の位置付けを整理する必要があるとの認識を示した。
結論は「一部改正・現状維持・廃止」へ整理
座長は最終的に、「定義名称については一部改正を行い、名称規制は現状維持とする。一方で、原材料表示基準は廃止するとの方向で整理した。また、プレスハム・ソーセージ・混合ソーセージの品目グループについては、「定義名称は一部改正。名称規制は現状維持、原材料名の通過的な表示事項や表示様式、表示禁止事項は廃止。今後、プレスハムについては「流通自体がないことから品目ごと廃止する」とした。
さらに、ケーシングの表示については、「原則として重量順で記載するが、困難な場合には原材料の末尾に記載しても差し支えないとされた。この取扱いは、消費者庁のQ&Aに明記し、業界が実務上対応できるよう手当てを行う」ことを方針として確認した。
次回の分科会は「旧食品衛生法に由来する個別品目ごとの表示ルールの見直し」を議題とし、11月11日に開催する。また、今年最後となる第16回分科会は、11月26日に開催を予定している。
【田代 宏】
会議資料はこちら(消費者庁HPより)