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原口衆院議員訴訟、損害論へ移行か Meiji Seikaファルマが第5回弁論準備で争点整理

 Meiji Seikaファルマ㈱(東京都中央区、永里敏秋社長)が衆議院議員・原口一博氏を名誉毀損で訴えている裁判は、10月14日に東京地方裁判所民事第30部のウェブ会議方式により第5回弁論準備手続が行われた。原告は新たな準備書面を提出し、争点を4点に絞る姿勢を明確化。裁判は発言の違法性の検討から損害論へと進展する可能性が高まっている。

「前提事実の真実性」は争点外と主張

 この日の手続では、原告が10月7日付で提出した「第3準備書面」を陳述し、争点整理に関する自らの見解を明らかにした。原告は、被告が主張する「論評の前提事実の真実性・真実相当性」は本件訴訟の争点とはなり得ないと述べ、焦点を「発言の同定可能性」、「事実等の意味内容」、「原告の社会的評価の低下」、「意見論評の適否」――の4点に絞るべきだと主張した。

 原告によると、前回(8月28日)の第4回弁論準備手続において、被告側は「論評の前提事実の真実性および真実相当性に対する原告の認否を確認したい」との意向を示し、否認された場合には多数の前提事実について立証を行う可能性に言及していた。

「731部隊」「生物兵器」発言に反論

 これに対して原告は、第3準備書面の中で、被告が主張する事実はいずれも本件表現行為の前提には当たらず、立証自体が無意味であると指摘した。被告が用いた「731部隊」、「収賄罪」、「生物兵器」、「3発目の原爆」、「人体実験」などの語句は、非人道的行為や刑事罰を想起させ、原告が反社会的目的で製品を製造販売しているかのような印象を一般視聴者に与えてしまい、合理的な前提事実を欠く過激な言論だと位置付けた。

 その上で、被告が独自の見解を「前提事実」として立証しようとしても、それらは本件発言の内容と結び付かず、訴訟上の意義を持たないとした。さらに、被告が主張する一部の事実は、配信や書籍の中で実際に言及されていない点も指摘した。

 原告はまた、仮に本件各発言を意見論評として捉えた場合であっても、「論評の域を逸脱していることは明白である」と主張した。

 「731部隊」や「生物兵器」といった表現は、一般視聴者に戦争犯罪や非人道的行為を連想させるものであり、悪意をもって原告を貶める言論であると指摘した。原告は、法令に基づく適正な手続のもとで製品を製造・販売しており、公正な論評の法理が成立する余地はないと述べた。よって、被告がその前提事実の真実性や相当性を立証する行為は「無益である」と結論付けている。

製品の安全性を強調、厚労省・学会の見解引用

 原告はさらに、被告が論評の前提として挙げている「製品の安全性への疑義」についても反論した。被告は、レプリコンワクチンに有毒性や個体間伝播の危険があると主張しているが、原告はこれを全面的に否定した。

 原告によれば、ワクチンの安全性は厚生労働省および日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会が明確に認めており、被告が示す見解は医学的根拠を欠くものであるとしている。また、同製品が「遺伝子治療用製品」に該当しないことは、被告側が提出した国会質問主意書への政府答弁書にも記載されていると指摘した。

 さらに、同製品は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査を経て厚生労働大臣が承認したものであり、公的機関によって安全性が確認されていると強調した。したがって、被告による「危険性」の主張は訴訟の遅延を招くだけであり、立証する意義はないと述べた。

裁判所が訂正と反論を指示、次回は損害論へ

 この日の手続で裁判官は、原告に対し「必要があれば、甲第13号証の再生時間と符合するよう訴状別紙の時間を訂正し、訴状訂正申立書として提出すること」を求めた。また、被告には11月17日までに原告の主張に対する反論を提出し、被告が主張する意見論評の前提事実を再整理して明示するよう指示した。

 さらに、次回期日では損害論について追加の主張・立証を行うかどうかを双方に確認する方針が示された。
 原告・被告いずれも「承知した」と応じ、議論は発言の違法性の検討から、損害の有無・範囲に焦点を移す可能性がある。裁判は11月25日午前10時30分に予定されている第6回弁論準備手続へと続く。

 原告が陳述した第3準備書面全文はこちら(⇒会員専用記事閲覧ページへ)

【令和7年10月7日 第3準備書面】
第1はじめに
本準備書面は、本件の争点整理に関する原告の意見を明らかにするものである。本件では、令和7年8月28日に実施された第4回弁論準備手続期日(以下「前回期日」という)に至るまでに、別紙名誉棄損行為目録記載の被告の各表現行為(以下「本件各表現行為」という)に名誉棄損による不法行為責任が成立するか否かについての当事者双方の主張及び立証が一応出揃いつつあり、争点を整理する段階に至っている。
かかる状況で行われた前回期日において、被告から、要旨、①論評の前提事実の真実性および真実相当性に対する原告の認否を確認したい旨、及び➁上記①について原告が否認する場合には、今後、被告が多数の論評の前提事実の真実性及び真実相当性を主張・立証することになる旨の発言があった。
原告は、かかる被告の発言に対する原告の意見を前回期日中には明らかにしていなかったため、本準備書面において、かかる発言に対する回答として、本件の争点整理に関する原告の意見を述べることとする。

第2 原告の意見
1 本件の争点
本件の争点は、①本件各表現行為が原告を対象としたものであるか(同定可能性)、➁本件各表現行為により摘示された事実等の意味内容、➂本件各表現行為が原告の社会的評価を低下させるか、④本件各表現行為が事実摘示か、又は意見論評か、及び⑤本件各表現行為が意見論評であると仮定した場合に論評の域を逸脱しているか、といった点であり、被告が主張する論評の前提事実の真実性及び真実相当性は本件の争点にすべきではない。以下、理由を述べる。
2 被告が主張する前提事実の真実性及び真実相当性が本件の争点にならないこと
(1) 被告が前提事実として主張する事実は本件各表現行為の前提とはならないこと
そもそも被告が前提事実として主張する事実は本件各表現行為の前提となるものではない。すなわち、被告は、一民間企業である原告に対して「七三一部隊」「収賄罪」「生物兵器」「3発目の原爆」「人体実験」等の極めて過激かつ侮辱的な表現行為を執拗に行うことで、原告が非人道的な目的をもって原告製品の製造及び販売を行っているかのような印象を一般視聴者に与え、原告の社会的評価を著しく低下させている。
被告は、これらの表現行為が意見論評に当たると主張し、当該論評の前提とした事実として種々の独自の見解を立証しようとしている。しかし、被告が前提事実として主張する事実の中には、原告が、「七三一部隊」「収賄罪」「生物兵器」「3発目の原爆」「人体実験」等の用語によって形容されるような非人道的な目的をもって原告製品の製造及び販売を行っていることを基礎づける事実は一切含まれていない。
 すなわち、仮に本件各表現行為が意見論評に該当するとしても、被告が当該論評の前提事実であると主張する事実は、いずれも本件各表現行為の前提とはならず、本件各表現行為は合理的な前提事実を伴わない意見論評というほかなく、被告が前提事実として主張する事実の立証は無意味である。
 なお、被告が本件各表現行為の前提事実として主張する事実の中には、当該表現行為が行われた配信や書籍の中では一切摘示されていない事実が含まれていることを付言しておく。
(2) 本件各表現行為が論評の域を逸脱していること
また、仮に本件各表現行為が意見論評に該当する場合であっても、その表現内容が論評としての域を逸脱していることは明白であり、そもそも公正な論評の法理が成立する余地はない。
 すなわち、「七三一部隊」「収賄罪」「生物兵器」「3発目の原爆」「人体実験」等の表現は、いずれも戦争犯罪等の非人道的行為や刑事罰等を一般視聴者に想起させるものであり、明確な悪意をもって原告を貶める表現である。原告は、法令等に則った適正な手続きを経て原告製品の製造及び販売を行っているのであり、上記のような本件各表現行為が論評の域を逸脱していることは明らかである。
 よって、本件各表現行為について公正な論評の法理が成立する余地はなく、被告が主張する論評の前提事実の立証は無益である。
(3) 原告製品の安全性について
被告は、本件各表現行為が意見論評に当たると主張し、その論評の前提事実として、原告製品の安全性に疑義があること、具体的には、原告製品の有毒性、原告製品の個体間伝播の可能性、原告製品が「遺伝子製剤」に当たること等を指摘し、これらの真実性又は真実相当性の立証を行おうとしている。
 しかし、原告製品の安全性は厚生労働省や日本の有力な学会等が既に認めており、原告製品の危険性を基礎付けるものとして被告が主張する各事実は、いずれも医学界において指示を得ているものではない。例えば、被告は原告製品に個体間伝播の危険が存在するなどと主張しているが、レプリコンワクチンに個体間伝播の危険性がないことは、日本感染症学会、日本呼吸器学会および日本ワクチン学会といった有力な3つの学会において明確に否定されている(甲44)また、厚生労働省のHP上でも、原告製品の有効性及び安全性は明確な根拠とともに示されている(甲45)。加えて、mRNAワクチンが「遺伝子治療用製品」に当たらないことは、被告が証拠として提出している質問主意書に対する回答(乙9の4)にも明確な根拠とともに記載されている。
 そもそも、原告製品は、国内の医薬品医療機器総合機構(PMDA)の信頼性調査及び承認審査の結果に基づき、最終的に厚生労働大臣が製造販売承認したワクチンであり(甲11及び甲12)、公的機関によってその安全性が確認されている製品である。これらの手続きを経ているという事実からしても、原告製品が国内の製造及び販売に必要とされる安全性を具えていることは明らかなのであって、被告が自身の見解に同調する人物の見解をいくら並べたところで、原告製品の安全性が認定されることはあり得ない。
 このような観点から、本訴訟において被告が原告製品の安全性に疑義があるとしていかなる立証をしようと、全く持って無益であり、それに対する反証を原告が行うことも、訴訟の遅延を招くだけである。

3 小括
 以上のとおり、本件においては、本件各表現行為が原告の社会的評価を低下させるものであると判断される場合には、被告が主張する前提事実の真実性及び真実相当性について審理することは全く持って無益であるから、上記2の1で述べた点を争点とすべきである。

第3 結語
 本件の争点整理に関する原告の意見は以上のとおりである。また、令和7年10月7日付主張整理表(抗弁)における認否反論も、このような考えに沿って行っており、被告が主張する論評の前提事実は、本来的に認否を要しないものであることから、当該事実について細かな認否をすることはしていない。

【田代 宏】

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