CBD市場の現状と課題を検証 JIHA、大麻取締法改正後のリスク管理と展望
(一社)日本ヘンプ協会(JIHA、佐藤均理事長)は17日、「カンナビジオールの活用を考える議員連盟」の後援による第3回シンポジウムを衆議院議員会館(東京都千代田区)で開催した。「大麻取締法改正がCBD市場に与えた影響と今後の展望」をテーマに、厚生労働省の担当者や国会議員、企業関係者らが登壇した。
議員連盟が後援 CBD産業の健全化を強調
冒頭、同協会理事で昭和医科大学名誉教授の二木芳人氏が開会挨拶を行い、続いて議員連盟事務局長の松原仁衆議院議員が来賓として登壇し、THC(テトラヒドロカンナビノール)成分の管理の重要性に触れ、脱法のない形で精神的メリットをもたらすCBDが日本社会に定着することを期待しつつ、シンポジウムにおける議論が「CBD業界の信頼と発展につながることを願う」と強調した。また、厚生労働省監視指導・麻薬対策課の飯島稔課長補佐が「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部改正について」と題し、改正の意義と運用の概要を説明した。
業界自主規範へ 安全・安心協議会が報告
特別講演では、元消費者庁次長で(一社)カンナビジオール安全・安心協議会の黒田岳士専務理事が「CBD製品を安心して利用できる環境の構築を目指して」と題して講演。同氏は、厚生労働省による大麻取締法改正を踏まえ、CBD製品が市場に広がる中で「消費者が安心して手に取ることができる環境を整えることが急務」とし、会員企業が遵守すべき自主規範の策定を目的とする公正競争規約の策定に向けた活動を紹介した。続いて、タイを拠点とするPacific Cannovation Company(PACCAN)およびGreen Trade Japan㈱が会員講演を行った。
教育講演では、日本ヘンプ協会理事長で静岡県立大学薬学系大学院客員教授の佐藤均氏(=写真)が「CBD製品中のTHC上限値を遵守するために必要な科学的知識」と題して講演を行い、カンナビジオール(CBD)がテトラヒドロカンナビノール(THC)へ変化する化学的要因と、その防止のための管理手法を解説した。
酸と熱が引き金に CBDがTHCへ変化
佐藤氏はまず、CBDが酸性条件下で「サイクライゼーション(閉環反応)」を起こし、THCへと変化するメカニズムを説明した。CBDは化学構造上、酸(特に塩酸など)や熱の影響を受けやすく、プロトン(水素イオン)が存在すると電子の移動が起こり、分子内で結合の組み替えが生じてTHCが生成されるという。さらに酸化が進行すると、CBN(カンナビノール)に変化することも指摘した。
「酸と熱の組み合わせで反応は加速し、紫外線や超音波、電磁波によっても同様の変化が起こり得る」と述べ、電子レンジや超音波洗浄機などでも変化が促進される可能性があると警告した。
CBDからTHCへの変化は、温度、時間、酸の種類、湿度など多様な要因の関数で進行するという。特に酸性度(pH)の影響が大きく、pH2付近の強酸条件や高温環境では短時間で変化が進むと説明した。一方、湿度が極めて低い条件ではほとんど反応が起こらないことから、「湿度の管理がTHC生成抑制に重要である」と強調した。
また、CBDは酸だけでなく光や酸素にも反応しやすく、紫外線照射による「フォトデグラデーション(光分解)」や、酸素との接触による「キノン体」への変化も報告されていると述べた。
佐藤氏は、CBD製品に添加される可溶化剤(界面活性剤)にも注意が必要だと指摘した。特定の可溶化剤はCBDと水分子を近づけ、THCへの変化を促進する場合があるが、一方で安定性を保つタイプの可溶化剤も存在するという。
「水溶性CBDは油状よりも変化しやすい。特に体温(37℃)程度の環境でも時間の経過とともにTHCが生成される可能性がある」とし、保存条件や添加剤選定の科学的根拠が欠かせないと訴えた。
pH中性域を維持 品質管理が鍵に
講演の終盤で佐藤氏は、THC上限値(10ppmまたは1ppm)を遵守するためには、製造時点から保管期間までを通じた品質管理が不可欠だと述べた。
「保管環境のpHは4.5〜7.5程度の中性域を維持し、酸性・アルカリ性のどちらにも傾けないことが重要。酸性ではTHC化、アルカリ性ではキノン体化が起こる」と説明。また、熱、紫外線、電磁波、湿度、酸素との接触を避ける必要があるとし、「中性環境の維持と酸化防止が製造・流通段階での要となる」と述べた。これらを踏まえ、CBDの特性を十分理解した上での製品設計を求めた。
【田代 宏】