北海道の“海鮮市場”を名乗る詐欺的な電話勧誘が、再び確認された。今月に入り、記者に「福島物産」を名乗る男性から海産物の購入を持ち掛ける電話があった。過去にも同様の手口で、「北海道の海産物をお得に」と称し、消費者に高額なカニなどを送り付ける詐欺的販売が横行しており、国民生活センターも再三、注意を呼び掛けて来た。年末を控え、記者はまたしても詐欺電話に襲われた。その手口を紹介する。

再び確認された悪質な“海鮮市場”勧誘

「以前お世話になった方にお電話しています」
　電話をかけてきた男は「●●●」と名乗り、柔らかな口調でこう切り出した。
　「以前、うちでカニを頼んでいただいた○○○さんですよね？今回はそのお礼で電話しました」
　実際には、記者がそのような取引をした事実はない。続けて男は「特大の本ズワイガニを特価で」、「送料・手数料すべて無料」と勧誘し、「お祭り」、「感謝セール」などの言葉を巧みに使って購入を促した。価格は通常2万5千円相当の品を「1万9,800円で」と説明し、加えて「松前漬け」をサービスすると続けた。
　口調は終始フレンドリーで、「信頼関係があるように錯覚させる」のが特徴である。過去に2度かかってきた“送り付け型詐欺”の典型的話法と一致している。

　札幌市内の海産物屋を名乗る男との電話は、このように終始親しげな口調で行われた。記者が名前の表記を尋ねると、ていねいに応えた。実名かどうかはともかく、自身の名を繰り返して印象付けようとするのも、詐欺的勧誘の典型的手口とされている。

　男は自らを「海鮮市場」の者と名乗り、記者の氏名を呼びながら、記者が10年前に海産物を購入したことがあるかのように切り出した。これまでお世話になった顧客へのサービスだと説明する

「お祭りの最終日」と勧誘

　「海産物のお祭り」を開催中で、「昨日と今日が最終日」だという。勧めてきたのは、肩から分けた脚だけを詰めた「5Lサイズ」のズワイガニで、20本前後、約2キロと説明。
　「太いところはキュウリほどの太さ」と強調し、「漁師が浜ゆでして瞬間冷凍しているので、来年1月まで鮮度が変わらない」とも言った。

　価格はもともと「2万5,000～2万6,000円」するが、「送料、手数料、梱包料すべて無料にして1万9,800円」と特価を提示した。さらに「サービスで北海道名物の松前漬けを詰めても値段は変わらない」とお得感を打ち出した。「はぁ・・・」と記者が相槌を打つと、彼は「がっかりするようなものを送ったら２度と使ってもらえない。次は指名で頼んでもらえるように頑張る」と畳み掛けた。

　男はさらに、「今回、絶対にいいところだけを詰めて送る」、「モノは本当に間違いない」と繰り返し、購入を促した。最後には「ぜひ食べてみてください。お願いします」と締めくくった。記者が「検討します」、「（電話を）折り返してもいいですか」と応じると、「はい、大丈夫です」と答え、会社の所在地を「札幌の福島物産」と名乗ったのである。

　通話は終始穏やかだが、一方的な勧誘トークだ。過去の取引実績の詳細は示されず、質問には「10年前の伝票・・・」とあいまいな返事だった。
　電話終了後、記者が確認したところ、札幌市内には「福島物産」という法人は存在せず、実在するのは別の会社「福●物産」である。しかも札幌市ではなかった。男性に折り返し電話をかけても応答はなく、呼び出し音が鳴り続けるだけだ――。

同一手口の報告多数、詐欺の再来か

　この会話内容は、過去に記者が受電した「海産物送り付け詐欺」の手口と酷似している。かつてウェルネスデイリーニュースで報じた事例でも、「以前お世話になった」、「特価1万9,800円」、といった決まり文句が使われていた。いずれも、信頼関係を装って購買を誘導し、代金引換で高額商品を送り付けるという手法だろう。

　今回の福島物産を名乗る人物も、同様に過去の顧客を装って個人情報を呼び掛け、実態のない販売を行っている可能性が高い。名称こそ「福島物産」を名乗るが、実在の法人情報は確認できず、折り返しも通じないことから、詐欺的な電話販売であると断定できる。

　「電話帳ナビ」を検索したところ、同じ番号からの不審な勧誘報告が複数寄せられており、「身に覚えがない」、「詐欺ではないか」との書き込みも確認された。
　電話での一問一答は以下のとおりである・・・（⇒つづきは会員専用記事閲覧ページへ）

【田代　宏】

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