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腸溶性・大腸送達カプセルで差別化 三生医薬、生菌製剤技術で地位確立図る

 乳酸菌やビフィズス菌などプロバイオティクスを配合したサプリメントの世界的な市場拡大が予測されている。その中でサプリメントの受託開発・製造を手がける三生医薬㈱(静岡県富士市)が、菌の中でも生菌の製剤技術と製造環境を武器に、この成長分野での存在感を高めようとしている。

プロバイオティクスサプリ市場、アジアがけん引

 同社は8月下旬、健康食品業界団体の(一社)国際栄養食品協会(AIFN)オープンカレッジ主催の学術セミナーで講演。セミナーは「最新研究で知る腸内革命の今」をテーマにしたもので、同社は「革新的な生菌製剤技術とは」と題したプレゼンテーションを行った。

 同社関係者によると、講演ではまず、世界のプロバイオティクスサプリ市場が右肩上がりに成長していることを紹介した。海外の市場調査会社ユーロモニターの調べを引き合いに出し、2027年には2017年比で2倍超の約1兆8,000億円規模に成長する見通しを示し、その中でも注目すべき点として、特にアジア市場、なかでも中国の成長度合いが著しいと指摘。2027年には2017年比約7倍の市場規模に拡大し、米国を抜いて世界最大市場に躍り出ると予測されていると紹介した。

 こうした市場成長の背景について、同社は腸内環境と全身の健康との関連が注目されていることを挙げつつ、腸内環境を良好に保つためにプロバイオティクスなどの有用菌を補給する手段として、継続的に摂取しやすい形状を持つサプリが有望視されていると解説。また、ビジネスの視点で「定期的な購入が期待できる」ことも大きいと分析する。

 一方、プロバイオティクスの中でも「生きて腸まで届く」と訴求される生菌を配合したサプリの製造には技術的な困難も伴う。同社によると、生菌はサプリの製造現場で取り扱いが難しい成分の代表格だ。

 同社はその理由を「菌によって強さが違う」と説明。具体的には、乳酸菌やビフィズス菌などの「弱い菌」は製造工程中で減少しやすく、最終製品中の菌数を担保するのが困難で、胃酸でも死滅しやすい特性を持つ。その一方、有胞子性乳酸菌や納豆菌、酪酸菌などの「強い菌」は芽胞に守られているため生存力は高いが、製造ラインに菌が残存しやすく、汚染リスクが高まるという課題がある。

 こうした菌の強さによって生じる二律背反的な特性によって、生菌を配合したサプリの製造現場には、「生菌の持つポテンシャルを最大限生かすためにも、それぞれの特性に応じた製剤技術と製造環境が求められる」と同社は指摘する。

生菌の製剤技術と製造環境の両立を図る

 同社は、「(サプリ受託開発・製造企業としての)私たちの強みは生菌製剤」だといい、「製剤技術・製造環境・製造実績の3つが揃っている」ことを根拠として挙げる。

 製剤技術については、大きく2つの特徴的な技術を保有しているという。

 第一は、同社で開発した腸溶性コーティング技術を施したハードカプセルの製剤技術。胃酸に弱い乳酸菌やビフィズス菌の生菌を腸まで届かせることを目的に開発したもので、酸性の強い胃酸から保護しつつ、中性の腸で溶けるよう設計した。

 同技術を施したハードカプセルは、医薬品の腸溶性製剤における日本薬局方に基づく崩壊基準と同等の基準で製造・品質管理を行っており、「人工胃液では120分間崩壊せず、人工腸液では60分以内に崩壊する崩壊特性を実現させている」という。

 第二は、大腸送達ハードカプセル製剤技術。ハードカプセルを多層コーティングすることで、内容物を胃、小腸から保護し、大腸へ確実に届けられるようにした技術だ。小腸保護被膜と胃液保護被膜を重ねてコーティングすることで大腸送達を実現したとしている。

 同社は同技術について「内容物としては、腸内細菌のえさになるプレバイオティクスをはじめ、プロバイオティクス(腸内細菌)からポストバイオティクス(腸内細菌の代謝産物)までお勧めしている。腸内細菌数が多い大腸に直接届かすことのできるメリットがある」と説明する。

 一方、製造環境面では、生菌製剤を製造する際に最も厄介とされる納豆菌専用の製剤化ラインを保有している点を「強み」として挙げる。

 納豆菌について同社は「とても強力な菌。一度製造すると洗浄に1週間以上を要する」と説明しており、そのため専用の製造ラインを保有することにしたという。

 また、納豆菌以外の生菌を製剤化する際も、製造機器や製造室全体の殺菌・洗浄を徹底し、他の製品が汚染されないよう管理。菌の有無を確認できる試験体制も完備しているといい、「我々は様々な生菌製剤を製造してきた実績がある。その豊富な経験を踏まえ、菌種ごとの製剤化条件の設定や洗浄バリデーションなどを実施し、生菌製剤に適した製造や管理の基準を整えている」と説明する。

品質管理と経験の蓄積を競争力に

 世界で2兆円規模への成長が見込まれるプロバイオティクスサプリ市場において、特に生菌製剤に関しては製剤技術が各製品の優劣を分ける要因の1つになることは確実とみられる。加えて、汚染リスクの徹底的な管理が製造現場には求められ、それに失敗すればメーカーとしての信頼を失うことになる。生菌製剤に関する製造・品質管理の経験とノウハウを蓄積してきたとする三生医薬にとって、同市場の拡大は絶好の事業成長機会となる可能性が高そうだ。

【石川太郎】

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