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食品表示デジタル化の課題浮上 消費者庁、デジタルツール活用分科会で技術・運用を議論

 消費者庁は26日、「第6回食品表示へのデジタルツール活用検討分科会」を開催した。義務表示を補完・代替する仕組みとしてデジタル技術の導入を議論する中、二次元コードの活用や情報保管の範囲、広告の表示方法、監視体制の確立など、制度実現に向けた技術的・運用上の課題について集中的に検討した。

前回議論の整理と制度設計の方向性

 冒頭、消費者庁は、前回(第5回)までの議論を以下のとおり整理した。
 制度運用では、すでにデータ化体制を整備している比較的大規模事業者を主な対象とすること、データ管理は「分散管理」を現実的としたルール作りが不可欠、消費者のアクセス手段はスマートフォンが現実的であり二次元コード活用を前提に進める。
 ただし、スマートフォンを店内において使用することを好まない事業者もあるため、利用する際のルールは今後の課題とした。今回の議題は、これらの結論を踏まえ、制度設計を具体化するための「詳細な課題」の検討として進められた。

二次元コード活用と3つのアクセス方式

 消費者庁は、二次元コードを読み取った後のアクセス方法として、3つのパターンを提示した。
① コードを読み込むと即座に一括表示が画面に出る方式。
② 商品情報ページを経由し、ロット番号や期限表示を参考に商品を選択する方式。
③ ウェブサイト上で消費者が自らロット番号等を入力する方式。

 事業者側からは「消費者に入力を求めるパターン③は現実的でない」との意見が相次ぎ、利便性を担保するにはパターン①か②が望ましいとの認識で一致した。ただし、パターン①はQRコードを商品ごとに変更する必要があり、デジタル化の利点が薄れる懸念がある。パターン②は改版への柔軟性は高いが、消費者が迷わず選択できる仕組みが不可欠とされた。

 委員からは、「工場ごとに表示が異なる場合、消費者が混乱しないよう統一ルールが必要」との指摘も出た。これに対し消費者庁は「選択画面が表示される場合には、その旨を明確に周知することで混乱は防げる」と応じた。

義務表示と任意表示の保管範囲を議論

 続く議論で、「どの情報をデータとして保管すべきか」に移った。食品表示基準で義務付けられた情報に加え、推奨表示や自主的な表示(調理方法、保存方法、問い合わせ先など)もデータ対象とすべきとの意見が示された。ただし、義務表示と任意表示をどう区別し、どこまでをデジタル化するかは今後の検討課題とした。

 また、データ入力ルール(半角・全角や大文字小文字の扱い、空欄処理の方法など)を定める必要性も確認された。これを怠れば、将来的なサービス展開やデータ活用が制限されるとの懸念が示された。

 二次元コードを通じて表示情報にアクセスする際に、広告が混在する問題も取り上げられた。消費者庁は「一括表示の前に広告が表示されるのは不適切」と指摘し、コーデックス委員会の国際ガイドラインに沿って「義務情報は最初に表示し、広告は明確に区別する」ことを原則とする方向を提示した。
 さらに、監視の実効性確保も重要な課題とされた。紙の表示では誤記があれば商品を回収して訂正する必要があるが、デジタルでは修正が容易で痕跡が残らない。このため消費者庁は、「修正履歴を必ず保存する」ことを求め、基準で義務化し違反時には罰則適用の可能性を示唆した。

 保管すべき表示データの範囲についても議論した。「どの情報を保管・表示対象とするか」について、各委員が意見を述べた。
 工藤操委員(消費科学センター)は、調理済み食品の加熱時間や取扱注意といった任意情報の重要性を強調し、事故防止や消費者利便の観点からも「引き続き提供すべき」と主張した。これに対し、金田建一委員(生活品質科学研究所)は「すべてを保管すればデータが重くなり、入力ミスや誤表示のリスクも増える。何のために保管するのか明確にすべきだ」と指摘した。

 これに対して消費者庁は、「義務表示は必須だが、調理方法などは任意の項目。ただし、事業者が表示したい任意の項目を情報が重くなるなどの理由でデジタル化できないような制度設計はしないほうがよい」とした。

 さらに奧冨潤二委員(三菱食品)は、フォーマット統一の必要性を挙げ、「全角・半角の違いでシステム間の互換性が失われる現状を踏まえ、今のうちに統一すべきだ」と述べた。また、工藤委員の発言を受け、PL法上の指示・警告上の注意喚起などにも留意が必要だとの見解を示した。

 小川美香子委員(東京海洋大学)は、将来的に動画コンテンツを活用できる可能性を指摘し、現行表示にとどまらない将来の拡張性への配慮を求めた。南田聡美委員(セブン‐イレブン・ジャパン)は「何をどう活用するのかを整理した上で保管対象を決めるべきだ」と慎重姿勢を示した。

 結果として、「保管すべき」義務表示だけでなく、任意情報も「保管可能」と言い換えた幅広い制度設計が必要との方向性で整理され、将来の拡張性を担保する枠組みが合意された。

食品表示と広告の適切な区分け

 食品表示と広告の住み分けが議論された。
 消費者庁は、食品表示閲覧時に広告が先に表示されることの不適切さを指摘し、CODEXガイドラインを踏まえた整理案を提示。義務的情報は直接リンクで表示され、広告は別枠またはスクロール後に表示されるべきとした。

 早川敏幸委員(日本生活協同組合連合会)は、「広告が最初に目に入らず、表示情報と明確に区分されることが重要」と賛同。小川委員も「広告禁止は難しいが、望ましい表示位置など消費者庁が望ましいと思われる線引きを示してほしい」と述べ、プラットフォーマーの広告モデルを念頭に現実的な対応を提案した。
 議論の結果、一括表示欄の中では広告と表示情報を区別し、消費者が求める義務的情報が優先的に提示される仕組みをガイドラインとして示す方針が確認された

修正履歴保存と監視体制の確立

 「監視可能性についてのルール作り」について検討した。デジタル化に伴うリスクとして、表示修正が「消費者に気付かれないまま行われる可能性」が危惧された。

 消費者庁が提示した「修正履歴」ボタンに履歴を残す期間などについて話し合われた。
 奥冨委員は「修正履歴よりも『改訂履歴』の表現が適切」とした上で、保存期間について一定のルールが必要、自動削除機能や保存期間設定の仕組みを提案した。河野委員は「市場に流通している期間中は履歴を保持すべき」と主張した。

 修正履歴自体については、行政としての監視に必要になってくるデータが間違っていた場合は、間違っていた期間は食品衛生基準に違反していることになる。それをこっそり直して、間違っていたことがなかったことにされると監視ができなくなる。そのため、「しっかり法律、法令で担保していく」(消費者庁)と明言した。

 また、「修正」と「改訂」は違う場所で行うとし、間違えたものを直すのが今回の例示であり、「産地を(国産に)変えた」などのメリット的な改訂については別途、別の番号を取得して記載していくことになるため、「別次元の話になる」(加藤座長)と説明した。履歴の保存期間については今後の議論に譲るとし、方向性について委員から合意を取り付けた。
 次回は11月14日に開催され、今回の議論を踏まえた取りまとめ案を消費者庁が提示する予定だ。

【田代 宏】

資料はこちら(消費者庁HPより)

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