まだまだ続く? 紅麹サプリ事件 厚労省資料に欠けていた“胃毒性”所見
紅麹サプリ事件で厚生労働省が当初示した報告には、”胃毒性”の記述がなかったが、後日、消費者庁の審議会資料に突然登場した。筆者は開示請求や小林製薬への直接照会を通じて、腎毒性以外の病理所見の存在を追っている。
唐突に現れた“胃毒性”所見とは
既報のとおり「まだ続く紅麹サプリ事件」で4回にわたり、プベルル酸とモナコリンKなどの他成分との相乗毒性の可能性について述べてきた。厚生労働省が昨年9月18日に公表した「小林製薬社製の紅麹を含む食品の事案に係る取組について」(国立衛生研)において、“胃毒性”に関する所見が一切見当たらなかったにもかかわらず、今年9月4日に開かれた消費者庁の「令和7年度第1回食品衛生基準審議会食品規格・乳肉水産・伝達性海綿状脳症対策部会」ではプベルル酸の調査状況の進捗に関する報告が行われ、配布された資料には“胃毒性”の文字が唐突に記されていた。
筆者が厚労省に対して、「ラットの7日間反復投与試験」の全データについて開示請求を行い、その試験データを入手したことはすでに述べた。そしてそのデータは、厚労省が小林製薬に委託して行われた試験であったことも書いた。
その解析を依頼した静岡県立大学薬学系大学院の佐藤均客員教授(当時:昭和大学薬学部教授)は、腎障害以外の異常が起きている可能性をすでに指摘していたが、同データに記載された病理所見は腎毒性に限られたものだった。
このことについて厚労省食品監視安全課に質したところ、筆者の開示を求めた行政文書が「『小林製薬社製の紅麹を含む食品の事案に係る取組について』にある③腎毒性の検証で、動物実験で投与したプベルル酸の投与量および詳細な実験データ全て」とあり、“腎毒性”の検証に関するデータを要求していたからだという。
昨年9月18日に公表された資料には、“腎毒性”に関する記述しか見当たらず、そうとしか請求の仕様がないと反論したところ、「胃毒性について特に注目していなかったが、結果的に不十分だった」と不備を認めている。

小林製薬はデータ開示を拒否
このことから、腎毒性以外の病理所見も存在することが明らかになったため、筆者はまず、小林製薬に対して腎毒性以外のデータの提供を依頼した。この試験の実施者が小林製薬であり、前回の開示請求において、厚労省は小林製薬から受け取ったデータを筆者に開示したと聞いたからである。
9月12日に質問および依頼書を送付し、同社からは回答期限の19日に回答メールが届いた。Q&Aは以下のとおりである。
Q1:ラットの 7 日間反復投与試験データは御社のデータであることに間違いございませんか?
そうだとすれば、厚生労働省に提出されたプベルル酸投与に関する動物実験データについて、腎毒性以外(胃毒性を含む)で確認された所見全ての実験データを開示いただけますか。
これら腎毒性以外の所見は、厚労省に正式に報告済みでしょうか。報告済みであれば、いつ・どのような形で提出されたのかをご教示ください。
A1:7日間反復経口投与毒性試験については、試験設計に関して厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所にご指導をいただいた上で、当社が試験委託者となって外部の第三者機関が実施した試験であり、報告書等のデータを厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所に提供しております。
なお、試験を実施した機関の名称は公表しておらず、試験の報告書やデータの開示は致しかねます。また、いつ・どのような形で提出したのかについても、ご回答を控えさせていただきます。
Q2:貴社として、胃毒性その他の所見についてどのように評価されているか、また安全性評価への影響をどのように考えているかについてご見解をお聞かせください。
A2:これまでのご質問でも回答させていただいたとおり、試験についての個別の評価や見解の回答は控えさせていただきます。
以上
これを受けて筆者はきのう(23日)、厚生労働省に上記データの開示請求を行っている。
【田代 宏】
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