機能性表示食品、買上調査結果開示へ 消費者庁、機能性関与成分検証事業報告書の取り扱い方針を変更
消費者庁の堀井奈津子長官は11日、機能性表示食品に関して毎年度実施している機能性関与成分に関する検証事業報告書の中身を今後、内容を精査しながら全面的に開示していく方針を示した。届け出された機能性関与成分の分析方法に関する検証結果をはじめ、これまで概要を公表するにとどめていた、機能性関与成分の含有量が届出のとおりか検証するための市販品の買上調査の結果も詳らかにしていく考えだ。検証事業報告書を巡る情報公開請求訴訟の最高裁判決を受け、報告書の取り扱い方針を抜本的に転換する格好になる。定例会見の中で明らかにした。
報告書の全面公開、「事業者にも利益」と堀井長官
同庁は9日、機能性表示食品制度が施行された2015年度分の同検証事業報告書を対象にした情報公開請求訴訟の最高裁判決(二審破棄・差し戻し)を受け、同報告書を同庁ウェブサイトに掲載、その内容を余すところなく開示していた(10日付け既報)。
堀井長官は会見で、差し戻し審の判決を待つことなく報告書の内容を公表した理由について、「速やかな開示による消費者や事業者全般の利益等を考慮」した結果だと説明し、健康食品関連事業者の利益にもなると強調。「これまで公表していなかった分析方法に関する検証を公表することで、事業者全体による分析方法の改善への取り組みが促される」などとして期待感を示すとともに、「報告書の内容を参考にして届出資料の質の向上に取り組んでいただきたい」と述べた。
同庁は今後、2024年度分から過去に遡るかたちで検証事業報告書を順次公開していく方針(10日付け既報)。実際に販売されている品目とのかい離が少ない新しい報告書の公開を優先する。また、小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を受け、買上調査の規模を大幅に拡大(100品目程度から1,000品目程度に増加)させる本年度(25年度)以降の検証事業報告書も、内容を精査しながら全面的に公開していく考えだ。
9日に公開された2015年度分の検証事業報告書を見ると、検証対象となった機能性表示食品146品目の商品名、届出者名、機能性関与成分名などの実名とともに、検証結果の報告が90ページ余にわたって続く。買上調査(一部は分析方法の妥当性についても検証)に関する結果報告は主に20ページ目以降にまとめられている。また、届け出られた機能性関与成分の定性・定量分析方法に関する検証結果については「〇」、「△」、「×」で評価。定量分析に関して各記号の意味合いは、「〇」が「届出資料のまま分析できる」、「△」が「若干の情報が欠けている」、「×」が「第三者が自分で論文や文献などを調べて分析する必要がある」などと説明されている。
同庁によれば、同庁は当時、検証対象146件中68件に追加資料の提出を依頼。その結果、6件については自主的に届出が撤回され、残り62件に関しては追加資料が提出されつつ変更届出が行われたという。
そのため、「△」や「×」などと当時評価された届出であれ、現在までに資料の不足などは解消されていることになる。だが、公表された報告書は「△」や「×」のまま。同庁の指摘を受けて届出者らが行った改善に関する説明はなく、事業者の利益が損なわれる恐れがある。
2015年度分の「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書」の全体は同庁のウェブサイト上で確認できる。同報告書では、同年度の検証事業の委託を受けた国立医薬品食品衛生研究所が、検証結果のほか、機能性関与成分を巡る課題を指摘。「機能性関与成分と工程管理のための定量指標成分との関係」のほか安全性などに言及している。
【石川太郎】