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消費者庁、検証事業報告書を全面公開 最高裁判決踏まえ、結審前に自主開示

 消費者庁が委託実施した「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書」(平成27年度版)を巡る行政文書不開示訴訟で、最高裁判所は東京高裁判決を破棄し差し戻した。これを受けて消費者庁は、従来マスキングしていた部分を全て解除した報告書を公開。消費者利益と制度の透明性を重視した判断とし、今後も未公開分を順次公開する方針を示した。

最高裁、東京高裁判決を破棄し差戻し

 消費者庁が外部機関に委託して実施した機能性表示食品の検証事業報告書を巡る行政文書不開示処分取消訴訟で、最高裁判所第三小法廷は今年6月6日、東京高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。
 最高裁判決を踏まえて消費者庁はきのう9日、機能性表示食品の検証事業報告書について、これまでマスキングしていた部分を全面解除した報告書をホームページで公開した。公開に至った経緯について同庁は、「最高裁の判決は高裁に差し戻す内容だったが、判決文全体を読むと消費者利益を重視する姿勢が示されていた。その考え方を踏まえ、結審を待たずに速やかに開示することが適切と判断した」としている。

 この事案は、市民団体「食の安全・監視市民委員会」共同代表の佐野真理子氏が、平成27年度の機能性表示食品検証事業報告書の一部非開示処分を不服として訴えたもの。東京高裁は、報告書の一部を開示すれば消費者庁の監視体制が推知されるおそれがあるなどとして、非開示を適法と判断した。しかし最高裁は、「おそれ」の具体性と蓋然性が十分に検討されていないこと、開示の影響が実質的に評価されていないこと、公益性の比較衡量が欠如していること――の3点を指摘し、高裁判断には法令違反があると結論づけた。

公益性を重視した最高裁の指摘

 特に、報告書に記録された情報は企業にとって既知の内容にとどまる可能性が高く、秘密性が乏しいと判断。また、開示によってむしろ分析方法が改善され、行政コスト軽減や制度信頼性向上につながる公益性を重視すべきとして審理を差し戻した。
 最高裁判決は具体的な開示箇所を指示したものではなく、全体的な考え方を示したものだったが、消費者庁は「消費者と事業者双方の利益を考慮した透明性確保」を重視し、高裁判決を待たずに全面公開に踏み切った。

全面公開で開示水準は大きく前進

 今回の公開では、最初のページの印鑑部分を除き、従来マスキングされていた箇所が全て解除された。これは、佐野氏が上告した当時の公開水準を大きく超えるものであり、完全に進歩した開示レベルと担当官。
 消費者庁は「争う争わないの判断ではなく、最高裁判決を踏まえた対応」と強調し、今後の高裁での審理については「原告側の判断に委ねられる」としている。

今後は未公開分も順次公開の方針

 今回公表されたのは平成27年度分だが、消費者庁は平成28年度から令和6年度までの未公開報告書についても、令和6年度分からさかのぼるかたちで順次公開する方針を明らかにした。また、令和7年度以降も継続して公開を行う予定だ。
 これまでは概要版のみが公開され、事業者名や具体的な評価内容は非公開だったが、今回の全面公開を契機に、今後も同様の方針を継続する。消費者庁は「できるだけ早く」公表したいとしているが、具体的な時期は今のところ未定。

【田代 宏】

掲載資料はこちら(消費者庁HPより)

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