商品力・マーケティング力で差別化 【九州のヘルスケア産業2025】キューサイ、代表取締役社長・石川順朗氏に聞く
キューサイ㈱(福岡市中央区)は、1965年に菓子製造販売会社として創業した。ケールを原料とした冷凍タイプの青汁『キューサイ青汁(現 ザ・ケール 冷凍タイプ)』の製造・販売を開始したのが1982年。以降、ケール青汁は同社の主力商品となっている。現在の従業員数は344人(2024年12月末時点、キューサイグループ連結)。売上は255億9,500万円(24年12月期、グループ連結)。「年齢を重ねることを前向きにとらえ、こころ豊かに生きる」をウェルエイジングの定義とし、商品販売に留まらない、情報・サービスを通じた啓発にも注力する。

(上の写真:ザ・ケール ミニスティック)
今年2月から新社長以下新体制で挑む
――今年2月に社長に就任されました。まずは意気込みを聞かせてください。
石川 私は2022年10月にキューサイに入社しました。当時はSCM(サプライチェーンマネジメント/Supply Chain Management)を担当する執行役員ということで小さなチームを担当しておりました。その後、こうのみなと工場(福岡県宗像市)や島根のケール農場、コンタクトセンター、開発部門などを担当し、オペレーション全体を統括するということで今年1月に上席執行役員に就任し、2月に社長に就任しました。
その前の経歴からお話しますと、1989年に新卒でソニーに入社。48歳で初めての転職を経験しAmazonに入社しました。7年間Amazonで勤務し、ショップジャパンを運営するオークローンマーケティングに転職。そこで2年間勤め、57歳でキューサイに入社しました。
これまでずっと、調達や物流、生産管理など国内外のオペレーションに携わってきましたが、キューサイに入社した当時、まだまだオペレーションの部分に課題があると感じ、サプライヤー様の協力の下、リードタイムの短縮、コスト削減、在庫調整など、プロセスの課題解決に努め、再現性のある筋肉質な仕組み構築をしてきました。こうのみなと工場につきましても、これまで社外に委託していた製造の部分を内製化することで生産効率を向上させ、この3年間で約30%の向上を実現しました。
――今後、取り組みたいことは?
石川 前述したとおり、これまではオペレーション全般を担当してきましたが、これからは社長ということで全体を見ていく必要があります。これまで当社は、インフォマーシャルを中心とした販売を行ってきましたが、マーケティングの一貫性が欠けておりコスト面でも課題がありました。こうした課題を解決するため、マーケティングにおける再現性のある仕組化に着手していきます。
具体的に言いますと、これまではインフォマーシャル中心のテレビ通販に頼るがあまり、マーケティング力が弱く、また社内の業務が属人化してしまっていたことから連携も取りにくく、何らかのマーケティング施策を取るにしても時間がかかってしまうという課題がありました。まずは、こうした障害を取り除いていくことから始めます。
また、これまでの60年で積み上げてきた膨大なデータが蓄積していますが、それを十分に活用できていないという課題もありました。バックヤードの部分で実現した効率化を、フロント部分のマーケティング面でも実現していきたい。当社はお客様のエイジングに関するお悩みを、ウェルエイジングを起点としたさまざまな商品・サービスで解決してまいります。
縦割りだった組織を改革し、部門間の連携、人材育成、スピードアップやコスト削減、施策実行を行います。副社長にマーケティング、商品開発、営業部門の統括をお願いし、私自身が引き続きオペレーション部門の統括も兼務しますので、2人でタッグを組み、全ての面でスピードアップを図ります。
ヘルスケア、化粧品とさまざまな商品を展開
――さまざまな商品を展開していますが、もう一度青汁を強化する動きもあるようですね。
石川 当社は、ヘルスケア商品にとどまらず、スキンケア商品、医薬品とさまざまなジャンルのさまざまな商品を展開しています。今年4月には、若年層向けのスキンケア商品としてスキンケアブランド「コラリッチ」から新シリーズとして「コラリッチソア」を立ち上げました。肌の土台構築を提言した商品で、夜用、朝用の美容液としてそれぞれの役割を持たせた商品をラインアップしています。そのほか、IKKOさん監修のコスメシリーズ「BIONIA」などもおかげさまでお客様に支持されています。

(上の写真:コラリッチ EX ブライトニングリフトジェル)
さまざまな商品を展開している当社ですが、やはり、青汁が原点です。認知度は高いものの、売上は全体の10%程になっている現状があります。「キューサイ=青汁」を一層定着させていくため、現在、さまざまなプロジェクトが動いています。その一例が「青汁道(あおじるどう)」で、ケール青汁のまずさをあえて味わい、楽しみながら前向きに健康を極めるというプロジェクトです。第一弾の取り組みとして、健康は気になるけど楽しみたいお酒に着目し、バーやスナックとの提携による展開を開始しました。健康でポジティブに飲酒を楽しむ酒文化の創造を目指し、バーやスナックと提携し、店舗でマスターやママから「青汁道」の作法を紹介していただき、「楽しみながら明日の健康づくりが叶えられる」という場を拡大します。もう一度青汁に向き合い、積極的に発信していきます。
――さまざまな商品を展開していく上で、同時にウェルエイジングの浸透を目指しておられます。ターゲットは中高年層がメインになるかと思いますが、一方で「コラリッチソア」のような若年層にもアプローチする。顧客層の拡大を目指すということでしょうか。
石川 それもあります。現状は、60代やそれ以上の層が既存顧客層であることは間違いありません。私たちの商品は長く愛用いただける商品ですので、会社の歴史と共に当然ながらお客様の層も高齢化してまいります。長く愛用いただいているお客様のサポートは当然ですが、ウェルエイジングという考え方に着目しますと、早い段階、つまり若いころからの取り組みがとても重要だと考えています。ウェルエイジングを若い層にも浸透させていくためにも、そうした層に受け入れていただける商品展開も必要だと考えています。もちろん、年齢を重ねることを前向きにとらえるということがウェルエイジングだと考えておりますので、中高年層のお客様への商品・サービス展開は重要ですが、若い層のお客様にも寄り添っていきたい、常にお客様と伴奏していきたいという思いです。まずは40~50代の層に広げ、ゆくゆくはその下の世代にも広げていきます。
現在、主力商品として『ひざサポートコラーゲン』も展開していますが、膝の悩みを抱えるのは40~50代にも多いというのが現状です。既存のインフォマーシャルだけでなく、こうした層の消費者が手軽に手に取ってもらえるような販売戦略、情報発信も必要だと考えています。それは必ずしも『ひざサポートコラーゲン』を飲んでいただきたいということではなく、文字通り膝のサポートは若いころからも必要なんだ、それにはコラーゲンという選択肢があるという気付きにつながることも、私たちが目指すウェルエイジングです。
実は、イメージキャラクターとして起用させていただいている浅田真央さんとの対談でも気付かされたのですが、膝のケアはなにも高齢者に限ったことではありませんし、もちろんアスリートだけでもありません。健康的な日常生活を送っていく上で全ての世代に当てはまると思っています。まずは情報発信を行うことが、私たちの使命です。

(上の写真:ひさサポートコラーゲン)
――販売の多チャネル化、消費者とのタッチポイントを増やしていく必要がありますね。
石川 これまでインフォマーシャルを中心に販売を行ってきました。時代の流れとともに、それだけでは情報は行き届かなくなりました。そこで近年はモールを含めたECを強化しています。また、通販だけではどうしても限界がありますので、今、店頭販売にも力を入れています。商品を実際に手に取ってもらう、試してもらうといった実体験を通じて、その先の購入につなげていきたいと思います。そしてもう1つ、消費者に実体験をということで、イベントの開催、参加を積極的に行っています。どうしても、今は、ここ福岡が中心にはなってしまいますが、さまざまな場所に出て行き、これまで出会えなかったお客様との接点を持つ、こうした地道な行動もウェルエイジングの浸透、ひいてはキューサイ商品の購入につながるのではないかと思っています。
インフォマーシャル、ECだけでない販売のマルチチャネル化を行う。また、まだまだ私たちの商品が行き届いていないと感じていますので、商品ラインアップの拡充にも注力しなければなりません。お客様のお悩みはさまざまですし、時代と共に変化もします。商品・サービスを通じ、お客様にしっかり伴奏できる企業を目指します。
――ありがとうございました。
【聞き手・文:藤田勇一】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡県福岡市中央区薬院1-1-1
TEL:092-724-0831(代表)
URL: https://corporate.kyusai.co.jp/
事業内容:ウェルエイジング商品の開発・販売
(冒頭の写真:石川順朗社長)
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