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九州発、KBCCの果敢な挑戦 【九州のヘルスケア産業2025】FFCの届出支援から海外進出まで

 九州地域バイオクラスター推進協議会(KBCC/事務局:(公財)くまもと産業支援財団、熊本県益城町、田中一成会長)は九州エリアの各大学と連携し、紅麹サプリメント事件などを契機に注目が集まる機能性表示食品(FFC)において、企業支援の中核的存在として、九州エリアで実効性のある体制を築きつつある。機能性表示食品の届出支援の推進をはじめ、フランスや台湾との連携も積極的に展開。同協議会の課題と将来展望を探る。

紅麹事件が転機に――制度強化で支援体制再構築へ

 同協議会会長の田中一成氏(長崎県立大学名誉教授)は、「紅麹事件はKBCCにとってマイナス材料になったのではなく、むしろ転機となった。機能性表示食品制度の法令化に伴い届出様式が厳しくなったことで、事業者も新たな取り組みに対して積極的に進めている状況。届出件数は横ばいを維持し、売上は伸長傾向にある」と語る。
 紅麹サプリ事件による健康被害の拡大を受けて、機能性表示食品制度が大きく改正された。九州ではその後、企業側の取り組みも活発化しており、KBCCではヒト臨床試験およびシステマティック・レビュー(SR)の両輪による支援体制を整備してきた。
 「両方の体制をしっかり整えて、企業各社から相談があった時にいつでも対応できるような状況を作っておきたいし、ある程度の体制作りはできた」(同)としている。

ヒト試験とSR――2本柱で大学と連携強化

 具体的には、長崎県立大学、鹿児島純心大学、宮崎大学の3大学において臨床試験が可能な体制を構築済み。さらに福岡や熊本の機関との連携強化にも取り組んでいる。田中会長は「九州発の製品を日本国内だけでなく、海外にも展開できる体制を目指す」と展望を語る。
 SRについては、熊本県天草市や鹿児島県の企業などで取り組みが進行中であり、すでに届出に成功した事例も出ている。特に、崇城大学などと連携し、SRとヒト試験を組み合わせた支援も始まりつつある。
 事務局の長濱秀幸氏は、「企業と研究者の間で自由にやり取りできる関係性を築いており、支援は素材の発掘から申請後の管理までをカバーしている」と述べる。PRISMA2020準拠が求められる新制度にも対応しており、KBCCとしては、届出準備から評価、文書整備、事後管理までを一貫して支援可能なワンストップ体制を整えている。
 一方、SRやヒト試験には一定の時間と労力を要することも課題である。特にヒト試験では1年以上の期間を要することが一般的であり、協力する研究者側のスケジュール調整や中小企業側のリソースの限界も課題として無視できない。

台湾との交流――「相互認証」「技術交流」視野に

 しかしながら、近年では台湾企業など海外からの関心も高まっており、日本国内での機能性表示取得を通じた製品販売を模索する動きが増えている。KBCCは台湾のTQFA(台灣優良食品發展協會)と昨年9月に産業連携MOU(覚書)を締結するなどの交流があり、相互認証や技術交流の可能性も視野に入れている。
 元事務局の池裕子氏は「台湾企業は機能性表示食品制度に強い関心を持っており、視察や商談が増えている。今後は国際的な相互認証を見据えた支援も重要になる」と語る。今後、KBCCは国内中小企業の支援強化に加え、国際的な制度連携を視野に入れたグローバル戦略を推進する構えである。制度対応力と科学的裏付けを備えた“九州発”の製品が、世界市場で存在感を高める日も近い。

フランス連携とアジア協力――国際展開へ本格始動

 機能性表示食品を軸に、九州から世界市場への展開を視野に入れた動きも加速している。九州地域バイオクラスター推進協議会(KBCC)は、台湾やフランスとの連携を強化し、国際商談会や相互認証の枠組みを通じた販路拡大を進めている。

 KBCC会長の田中一成氏は、フランスのディジョン市との連携強化に意欲を示してきた。機能性表示食品の制度や食品開発分野における国際協業の一環として、同地の発酵技術や伝統食品などをベースとした新たな機能性食品の開発を目指している。今年4月には、大阪・関西万博のフランスパビリオンにおいて「日仏連携フォーラム」が開催された。KBCCはこのフォーラムの主催団体の一つとして名を連ね、午前の部では田中会長が登壇し、今後のフランスとの連携の重要性について挨拶を行った(下の写真)。午後には、農研機構や民間企業による連携事例の発表が行われ、両国の官民連携の深化が確認された。

  背景には、熊本県がフランス・ディジョン市との間で締結したMOU(覚書)がある。KBCC事務局長の藤川孝作氏によれば、今年10月には「フレンチウィーク in 熊本」が開催され、同期間中にフランス農業食品イノベーションクラスター「VITAGORA(ヴィタゴラ)」と連携したシンポジウムを企画中だという。

台湾との協業加速――国際認証への道筋も

 台湾においては、KBCCは2024年に2度の大型商談イベントを実施している。昨年6月に開催した「FOOD TAIPEI2024」には12社が出展し、延べ4,301件の名刺交換と256件の商談が実現した。続く「九州逸品商談会」には11社が参加し、これらを通じて7社・総額708万円の取引が成立。さらに、シンガポールや香港など他地域との取引も含めた全体では、8社・1,241万円の成果を上げた(2025年3月末時点)。


 この実績が契機となり、台湾のTQFA(台灣優良食品發展協會)との間でパートナーシップ契約を締結。以後、両者は2カ月に1度の会議を開催し、展示会ブースの相互利用や招へい事業を通じて連携を深化させている。今後は8月にTQFA会員が熊本を訪問予定であり、来年1月には日本国内での視察も予定されている。

実務的な課題クリアへ――制度連携深める

 一方で、海外展開には課題も多い。事務局の長濱秀幸氏は、「言語の壁、輸送手段、通関手続き、販売価格設定、賞味期限といった実務上の課題をクリアできる企業が、実際に取引成立へと至っている」と成功の秘訣について語る。特に台湾における販売価格は、日本国内価格の2.2〜2.5倍が相場となっており、現地消費者に受け入れられるかが鍵となる。

 また、規制上の違いも課題となるが、台湾側の関心は極めて高く、前述したとおり、日本の機能性表示食品制度への関心の高さが顕著である。
 日本のJFSMとTQFAはそれぞれ独自の認証規格を持っており、MOUに基づき相互認証制度を整備しているため、将来的に日本市場への積極的な進出が期待できるという。

「FOOD TAIPEI 2025」出展――国際協力の足掛かりに

 今年6月25日~28日に開催された「FOOD TAIPEI 2025」では、KBCCと台湾の衛生局幹部が意見交換を行った。同時に「国際協力セミナー」においてTQFAが機能性食品の認証制度創設を発表した。
 同セミナーには、JFSM(食品安全マネジメント協会)、JAKIM(マレーシア・ハラル認証機関)、JTEA(日本台湾交流協会)も参画し、KBCCも連携団体として参加。TQFAがまとめ役となり、アジア全域の機能性食品市場を視野に入れた国際協力本格化の足掛かりとなった。
 KBCCの海外展開は単なる輸出支援にとどまらず、制度・認証・研究を含む包括的な連携を志向している。九州発の技術と素材が、台湾・フランスを起点として、より広範な国際市場へと広がる可能性が現実味を帯びてきた。

個別商談会・個別商談ブースでのやり取り

【田代 宏】

(冒頭の写真:FOODTAIPEIに出展したKBCCブースのPRポスター)

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