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黎明の会で大麻研究の最新動向を講演 佐藤教授がCBDにおける日本の立ち遅れを指摘

 18日、第266回「黎明の会」(主宰:高橋幸輝)では、(一社)日本ヘンプ協会理事長で静岡県立大学薬学系大学院の佐藤均客員教授(=写真)がCBDをテーマに講演した。同氏は今年3月に昭和大学を定年退職し、現在、タイ国立マヒドン大学薬学部の客員教授も兼任している。
 講演は、教授の研究経歴の回顧から最新のがん研究、そして大麻に関する国際的動向まで幅広い内容に及んだ。

研究経歴と抗酸化物質の誤解

 日本では抗酸化物質を「体に良い」とする思い込みが根強いが、佐藤教授は最新のエビデンスを紹介しながらその誤解を解いた。高用量の抗酸化物質を投与した大規模臨床試験では、がんの発生率がむしろ増加したこと、さらにマウスモデルでも腫瘍増殖が促進されることが確認されている。
 抗酸化物質は不足している人には有用だが、十分に足りている人が摂取を重ねるのは有害となる。特にビタミンEはがんの増殖を促進し、体内のがん抑制機能を弱めることが分かってきたという。
 さらに教授は「活性酸素」の役割に注目する。従来は悪者とされてきたが、がんの遠隔転移を抑制する機能があり、がん幹細胞を攻撃できる可能性もある。逆に抗酸化物質が過剰に摂取されると、がん細胞にとって居心地の良い環境を与え、むしろ病気の進行を助長してしまうと警鐘を鳴らした。
 「(抗酸化物質は)予防には良いが、すでに進行中のがんには悪い影響を与える可能性がある」(佐藤教授)という。

大麻研究と国際的な展望

 2017年には「カンナビノイド」に関する専門書を出版し、「専門書の中では比較的よく読まれている」という佐藤教授。大麻成分に対する日本での偏見を指摘しつつ、医薬品としての可能性を強調した。現在は静岡県立大学客員教授として大麻由来の医薬品成分の研究に取り組み、近くヘンプ・カンナビノイド産学連携コンソーシアム(HCC)を設立する予定。
 無料での活動を基本とし、「ヘンプとカンナビノイドの安全性と有効性を科学的に評価検討し、医療・食品・農業やマテリアル産業の発展に向けた新たな技術を開発し、国際協調の下で産学官連携する枠組みを構築する」という。大学や企業と連携し科学的評価を進める計画で、現在、国内外の学術機関や衣料メーカーなどに参加を呼び掛けている。

 教授は日本の経済状況にも言及した。インドに抜かれ、中国に人材を奪われるなど国力の低下が顕著で、円安もその表れであるとする。そこで、マヒドン大学にカンナビノイド研究センターを設立し、東南アジア地域を研究と産業のハブとして活用する構想を示した。博士号を持つ研究者を世界中から集め、臨床試験や新薬開発を進める拠点とする計画だ。
 今年1月には「産業用ヘンプ安全安心協議会」が発足し、元厚生労働事務次官を理事長に、財務省や警察庁などの高級官僚が名を連ねている。同協議会では、JAS規格に匹敵する品質規格を整備し、安全なヘンプ製品の普及を目指す。

歴史と法規制、そしてCBD合法化

 佐藤教授は大麻の長い歴史について解説した。2,800万年前に地球上に出現した大麻は、人類よりも古い植物で、古代エジプトや中国、インドで栽培されてきた。日本でも縄文時代から衣服や食料に用いられ、縄文土器の縄目模様は大麻の繊維によるものだという。麻の実(ヘンプシード)は必須アミノ酸を含む優れたタンパク源であり、現代でもスーパーフードとして注目されている。
 1948年制定の大麻取締法によって、日本では医療目的を含めて全面禁止された。しかし2010年代に入ってからCBDの医療効果に注目が集まり、WHOも有効性を認める報告書を発表。米国ではすでに10兆円規模の産業に成長している。
 我が国でも昨年末の法改正により、CBDは完全に合法化された。使用罪の新設によりTHCは厳格に規制されるが、医療・産業分野でのヘンプ利用が進む環境が整いつつある。

医療・産業利用への可能性と課題

 CBDは多様な疾患に効果を示すオールマイティーな成分。CBNは鎮痛・睡眠補助、CBCは抗炎症や骨の成長促進作用に優れる。海外ではTHCとCBDを組み合わせた医薬品も承認されている。さらに産業用ヘンプは、バイオプラスチックや建材、自動車内装など幅広い用途があり、環境負荷低減にも寄与する。ヨーロッパではBMWやベンツが内装にヘンプ素材を用いることは常識とされており、レゴ社も全製品をヘンプ素材に転換予定という。
 講演の締めくくりで佐藤教授は、大麻研究と産業応用における日本の立ち遅れを指摘した。だが、CBDの合法化を機に、国際的な科学的協調の下で研究を進めれば、日本も世界の潮流に追いつくことが可能だとし、その展望を示した。医療と産業の両面で大麻の可能性を切り拓くことが、日本の次世代にとって重要な課題だと結んだ。

講演に聴き入る参加者と司会を務める高橋主宰(左)

【田代 宏】

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