九州通販産業、時代の流れで進むEC化 【九州のヘルスケア産業2025】新興企業の台頭で「通販王国九州」復活なるか
かつて「通販王国」と呼ばれた九州地域。テレビショッピングや新聞折込などによる健康食品・サプリメント、化粧品の通販事業者が次々と誕生した。「単品リピート通販」や「定期購入」といったビジネスモデルによって、一気に全国区に拡大した企業も数多い。オフラインからオンラインでEC化へ、オンラインとオフラインの融合、顧客層拡大のための新ブランド投入など、各社の戦略はさまざま。九州のヘルスケア市場、各社の現状・課題をレポートする。
古い体質からの脱却、EC化、SNSの活用へシフト
コロナ前、福岡を拠点に通販事業者を支援するある広告代理店の担当者は、「老舗と言われる通販会社が多い九州だが、老舗だからこそのしがらみがある。単品リピートやオフラインによる通販ビジネスで大きく成功したが故に、他地域に比べてその成功体験から抜け出せない企業が多い」と話していた。すでに市場はEC化が進んでいるにも関わらず、制作されるのはあくまでもオフライン通販を補完する程度のECサイトであったり、ECサイトとは程遠い、会社のポータルサイトに過ぎないというものが多かったという。福岡に本社を置くある中堅の健康食品・化粧品の通販会社のマーケティング担当者も同様に、「古い経営者層を中心に、昔の成功体験から脱却できず、都内や関西圏ではすでに進んでいるEC化が全く進まない」と当時嘆いていた。
BSを中心としたインフォーマルや新聞折込から流入する顧客は、比較的高齢者が多くその継続率も高い。いわゆるロイヤルカスタマーになりやすいという意見もある。定期リピート客の質や量が成功の鍵と言われる通販ビジネスにおいて、購入者のロイヤルカスタマー化は最大の関心事であることは間違いない。しかし顧客の高齢化、通販ビジネスの新規参入障壁が下がったことによる新規客獲得競争の激化に対応するため、EC化や紙からデジタルへの広告媒体の変化、SNSを活用したマーケティング手法のシフトなど、待ったなしの状況だ。
顧客層の高齢化、新ブランドで新たな層に
キューサイ㈱(福岡市中央区)では、これまで青汁やコラーゲン製品、高級化粧品「コラリッチ」ブランドなど、メイン顧客となる60~70代の女性をターゲットに商品を展開してきた。石川順朗社長は本誌のインタビューに、「会社の歴史とともに顧客の高齢化が進んでいる。成長を続けていくためには新たな顧客層の開拓が不可欠」と語った(詳細は月刊誌「Wellness Monthly Report85号P.10-11)。同社は売上高200億円超(グループ連結)の全国区企業だが、その顧客層の偏りに危機感を募らせている。
そこでこのほど、「コラリッチ」ブランドから若年層向けのシリーズをラインアップした。今後、SNSを使ったマーケティングに注力するという。また、コラーゲン製品の機能性表示食品『ひざサポートコラーゲン』のイメージキャラクターにプロフィギュアスケーターの浅田真央さんを起用し、浅田真央さんを通じ同世代へのひざサポートの重要性を発信している。主力商品の1つ青汁製品においても、現役世代に近いタレントらをCMに起用する他、若い人が集まる地域のイベントや店で直接PRするなど、これまでのインフォーマシャルだけに頼らないマーケティングを強化し始めた。(⇒続きは会員専用記事閲覧ページへ)