送料無料表示と配送効率化の最新事例 消費者庁が公表「再配達削減へ進む送料無料表示の見直し策」
消費者庁はこのほど、今年7月時点で把握している「送料無料表示」見直しと配送効率化の取組事例を公表した。再配達削減や物流負担軽減を目的に、置き配や日時指定、まとめ配送の活用など多様な方策が広がっている。JADMAが策定した「自主行動計画」をはじめ、アマゾンや楽天市場、LINEヤフーなど大手EC事業者も、送料無料表示の仕組みや条件を明確化しつつ、環境負荷低減や配達員の負担軽減に資する施策を展開。物流適正化と消費者利便の両立に向けた動きが加速している。
JADMAが「自主行動計画」策定
(公社)日本通信販売協会(JADMA、梶原健司会長)は、2024年問題に対応し、政府の「物流革新緊急パッケージ」を踏まえた自主行動計画を策定した。同計画は、自宅配送における再配達削減を基本方針とし、会員企業間での好事例共有による取り組み促進を目的とする。
再配達削減事例として、千趣会は置き配バッグや置き配サービスを導入、アスクルは遅め配達日指定でポイントを付与する「おトク指定便」や置き配の標準化を実施。ファンケルは置き配指定者へのポイント付与や定期便と同梱する「おまとめ配送」を推奨している。
この他にも、ポストイン配送や日時指定配送など多様な取り組みが導入されている。
物流適正化・生産性向上策として、運送契約の原則書面化、物流DXによる荷待ち時間短縮、異常気象・災害時の無理な運送依頼回避、十分なリードタイム確保、賛助会員による物流適正化サービスの導入を推進。
「送料無料」表示の見直しや理由・仕組みの説明、まとめ買いや「急がなくてもいいよ便」の利用など消費者行動変容促進も含まれる。
また、I-neの納品予約システム導入による荷待ち時間短縮、えがおの大口一括輸送とフェリー輸送による積載率向上、オルビスのAI梱包最適化、新日本製薬の仕入の際のバラ積み納品廃止、パレット納品化による荷待ち時間の15%削減、ベルーナの入荷量平準化による車両削減、ビタブリッドジャパンのポストイン配送拡大など、効率化と環境負荷低減を両立する事例が示された。
大手EC事業者らによる「送料無料表示」対策
消費者庁は併せて、アマゾン、楽天市場、LINEヤフー㈱、auコマース&ライフ、㈱ファンケル(前述)などによる「送料無料」表示と配送効率化の取組を紹介した。
アマゾンは、一定条件下で配送料を無料としつつ、配送ドライバーへの適正な運賃支払いを継続している。再配達削減と利便性向上を目的に、お届け日時指定便や注文のまとめ配送を推進。置き配指定サービスは全国利用率80%以上に達し、約4万カ所のAmazonロッカーや提携カウンターでの受け取りも可能としている。
また、オートロックマンション向けに「Amazon Key」を導入し、非対面での受け取りと配送効率化を実現。梱包は紙袋や簡易包装を採用し、適切なサイズ化で積載効率を高めている。さらに、柔軟な働き方を可能にする「Amazon Flex」、地域事業者による「Amazon Hubデリバリー」、配送事業の起業支援「DSP」など、多様な配送プログラムを展開。持続可能な物流体制の構築と、消費者・配送パートナー双方の満足度向上を目指している。
LINEヤフー㈱は、オンラインモールの商品検索結果に表示される「表示情報について」をクリックすると「送料無料=表示価格に送料が含まれる商品」との説明を表示。「置き配」が環境配慮につながることのPRサイトを異なる複数のモールで展開するとともに、SNSでも同サイトの周知を図っている。
楽天市場は、配送負担の軽減と持続可能な宅配サービス実現に向け、利用者に「1回で受け取る」習慣を呼びかけている。お届け日時の指定や配送状況の確認、自宅外での受け取り(コンビニ・郵便局・ロッカー・店頭)を促し、再配達の削減を図る。
送料無料表示については、別途送料を請求しない場合を指し、運賃はショップが負担しており、適正に価格へ反映されていることを明示。さらに、急がない場合の余裕ある受け取り設定や宅配ボックスの活用、ポスト投函可能なギフトの利用など、環境や労働環境に配慮したサステナブルな配送選択を推奨している。
auコマース&ライフ㈱は、EC利用の拡大に伴い深刻化する再配達問題の解決に向け、置き配や日時指定の活用を呼びかけている。昨年4月時点の再配達率は約10.4%に達しており、配達員の負担増加やCO₂排出量の増加(年間約25.4万トン)などの課題が顕在化している。
同社は「1回で受け取る」習慣を促すため、購入履歴やお知らせ通知、発送案内メールなどによる配送状況の確認、マイページや配送会社サイトからの日時・置き配指定、LINE公式アカウントによる受け取り変更機能など、受け取り方法の変更を容易にするために利便性の高いツールを提供している。また、街中の宅配ロッカーやコンビニ・郵便局での受け取りにも対応し、生活スタイルに合わせた柔軟な受け取り方法を提案している。
送料無料表示については、各店舗が送料を負担する仕組みであり、条件や負担元は取引内容によって異なると説明。購入画面での確認を推奨している。
【編集部】
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