MSM、日本市場導入から20年超 【新規の機能性関与成分を探して】膝の違和感軽減、クロレラ工業が初の届出
「膝関節ケア」で新規の機能性関与成分の届出が3月に公開された。グルコサミンやコンドロイチンほどの認知はないが「定番」関節ケア成分の通称MSM(エムエスエム)、メチルサルフォニルメタンである。日本の健康食品市場に導入されてから20年超。機能性表示食品の領域で存在感をさらに高められるか注目される。
国内で臨床試験実施、その上で行ったSR
MSMを届け出たのは、クロレラ工業㈱(東京都港区、板波英一郎社長)だ。同社は2001年に「OptiMSM」をブランド名とするMSMの原材料販売を開始。グルコサミンやコンドロイチンが盛り上がる当時の米国で開催された展示会で見出し、日本市場への導入を決断。食薬区分の照会を行い、非医リスト入りを確認した上で、国内での原材料販売を始めた経緯がある。現在は、同社が05年に設立したグループ会社、CICフロンティア(同、社長も同じ)がその役割を担う。
クロレラ工業が届け出たMSMとは、すなわち日本で20年超の販売実績があるOptiMSMのことだ。届け出た機能性表示は、「メチルサルフォニルメタン(MSM)には、朝起きた際の動き出しや立位時の膝の違和感を軽減することが報告されています」。立位時とは「立っている時」のことで、その時の膝の違和感の軽減を訴求する機能性表示の届出はこれが初とみられる。
その機能性表示の科学的根拠は、PRISMA2020準拠のシステマティックレビュー(SR)。4月1日以降の実質義務化を見越して準備を進めた。
このPRISMA2020準拠SRに採用している臨床試験論文は、OptiMSMを配合したタブレットを試験食品にしたもので、被験者は日本人の男女。クロレラ工業とCICフロンティアは、原材料供給先企業らの要望を受け、同MSMをクロレラ工業グループ初の機能性表示食品対応素材にすることをめざし、23年に国内で臨床試験を行っていた。
関節ケア成分の新たな選択肢に
一方、このSRに基づくと、OptiMSMを機能性関与成分とする機能性表示食品を開発して届け出るためには、1日摂取目安量あたりの関与成分含量を2,000mgにする必要がある。グルコサミンなど必要摂取量の多い成分や素材との組み合わせを考えると、量が多すぎるとも思える。だが、もともと1日あたり2,000~3,000mgが摂取目安量として推奨されてきた成分である。視点を変えて、MSM単体を打ち出す関節ケア機能性表示食品を消費者に提案してみるのも良いかもしれない。
他方で、1日あたり摂取量が少ない、他の関与成分と組み合わせつつ、複数の機能性表示を行う機能性表示食品を展開することも考えられる。例えば、歩行機能を維持する働きが報告されている関与成分との組み合わせ。そうした機能性表示食品はすでに複数存在するものの、OptiMSMは、膝関節ケアの方向から複合すべき関与成分の新たな選択肢になる。
MSMが膝の違和感を軽減する作用メカニズムは何か。クロレラ工業は、届出資料で、抗炎症機能のほか軟骨形成促進機能によるものと考察。ほかに、関節液の主な成分であるコンドロイチン硫酸などを生成するのに必要なイオウ成分を補給することによる働きも考えられる、としている。MSMは、有機イオウ化合物の一種。食薬区分には、「イオウ」の名称で収載されている。
OptiMSMの製造元は、米国のサプリ原材料メーカー、バルケム社(旧バーグストロームニュートリション社)だ。製法としては、「蒸留法」を採用。それを1日あたり2,000mg摂取することの安全性についてクロレラ工業は今回の届出で日本国内における20年超の喫食実績を説明。かつ、同社によれば、現在、国内において年間で約20トンが消費されているという。
届出公開を受けて、OptiMSMを配合した既存製品を機能性表示食品にリニューアルする動きも進んでいるようだ。クロレラ工業とCICフロンティアはOptiMSMを今後、これまで手を付けられなかった機能性表示食品市場に広げていく構え。PRISMA2020準拠SR等の関係資料を提供しながらの原材料販売を進めることにしている。
同社はまた、2年前に新規素材として取り扱いを開始したトウモロコシ若葉抽出物「マイジノール(Mazinol)」を、OptiMSMに続く機能性表示食品対応素材にしたい考えだ。「6-MBOA」と呼ばれるメラトニンに構造が似たポリフェノールの一種を有効成分として含むもので、睡眠の質向上や精神的なストレスを緩和する働きのあることが臨床試験などで示唆されている。
【石川太郎】
(冒頭の画像:クロレラ工業が届け出た表示見本。今後、容器包装表示の新ルールに合わせた内容に差し替える。同社の報道発表資料から)
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