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物流問題と送料無料表示を再考(4) 日本郵便が示した新しい連携のかたち

 2023年8月22日、第5回「送料無料」表示見直しに関する意見交換会が開催された。この回に登壇したのは、日本郵便㈱。物流業界の中核を担い、日々の暮らしを支える公共性の高い事業者である同社の姿勢は、従来の議論に一石を投じた。

 日本郵便ロジスティクス事業部執行役員・五味儀裕氏は、「送料無料」表示の是非を問うというよりも、その議論のプロセス自体が「消費者を巻き込んだ政策パッケージ」になっている点を高く評価した。「物流の2024年問題」は、単なる業界内の課題ではなく、広く社会に関係する問題であり、荷主や運送事業者だけでなく“着荷主”である消費者の行動変容が不可欠であるとの認識を示した。

 その上で、日本郵便は具体的な物流革新の取り組みを複数紹介。中継輸送の拡大やトラックの大型化、他社との共同運行によるトラック便数の削減、さらには自動運転技術の導入に向けた実証実験など、物流インフラ全体の変革に取り組んでいる実態を明かした。
 また、楽天グループと連携したジョイントベンチャー「JP楽天ロジスティクス」や、ヤマトグループとのネットワーク共同活用、佐川急便との幹線輸送の共同化など、垣根を超えた業界横断的な連携事例を紹介。これらは“誰か1社だけでは解決できない”物流の現実を象徴している。

 この日、日本郵便が発信した最大のメッセージは、「送料無料表示」という“言葉の選択”以上に、消費者が物流の担い手たちを理解し、配慮する行動へと変わることが、真の意味での「持続可能な物流」に繋がるという提言である。
 再配達の削減や、置き配、宅配ロッカーの利用など、消費者側ができる工夫の重要性を強調した上で、制度や表示の見直しが“啓発”ではなく“共創”の手段として機能すべきであることを訴えた。

 つまり、「送料無料」の表示そのものをやめるか否かではなく、それが消費者の意識をどう変えるのか、あるいは変えないのかが議論の本質だという視点である。

 五味氏のプレゼンテーションは、消費者庁の意見交換会において初めて、「送料無料」表示という表現の影響を“受け手”である消費者自身の立場から考え直すことの重要性を明示したものであり、これ以降の議論に深い影響を与えることとなる。議論はさらに第6回以降へと続き、業界団体や労働団体、そして消費者自身の声が集まり始める。

(つづく)
【田代 宏】

関連記事:物流問題と送料無料表示を再考(1)
    :物流問題と送料無料表示を再考(2)
    :物流問題と送料無料表示を再考(3)

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