染小氏、臨床試験の透明性向上を提言 事前登録情報、評価項目の記載「もっと詳細に」
海外学術誌に昨年掲載された、機能性表示食品の臨床試験や広告などに関する「選択的な報告」や「スピン」を指摘する論文の筆頭著者で、医師の染小(そめこ)英弘氏が23日、都内で講演を行い、機能性表示食品や健康食品業界に対する医師、薬剤師の懸念を払しょくさせる手段を提言した。機能性表示食品を届け出るために行う臨床試験について、UMIN-CTR等への事前登録情報をもっと詳細に書き込み、試験の透明性を確保しなければならないとした。現状ではそれが低いために、医師らから疑いのまなざしを向けられがちだという。
講演が行われたのは、東京ビッグサイトを会場にした食品関連展示会「ifia Japan 2025」(食品化学新聞社主催)の最終日。主催者企画の「機能性表示食品の最新トピックス&開発セッション」に染小氏も登壇し、「機能性表示食品の臨床試験の透明性向上への提言」と題して約25分、講演した。
染小氏は講演で、機能性表示食品の臨床試験について事前登録された評価項目の書きぶりを疑問視。例えば、「認知機能」とだけ説明されているとし、「このようにざっくりとした書き方ではリスク・オブ・バイアスが高いと判断せざるを得ない」と指摘した。「実は裏で評価項目をいくつか立て、良い結果だけを報告しているのだとしても(外部からは)分からない」ためだという。
染小氏は、そのように臨床試験の事前登録段階の不透明性を指摘した上で、改善策を提案。認知機能に関して評価する臨床試験を行うのであれば、事前登録時に、例えば「3カ月後の長谷川式簡易知能評価スケールの平均変化量」などと具体的に評価項目を記載することを提言した。事前登録時の評価項目の記載の仕方としては、①評価尺度の名称、②評価領域の明記、③評価対象、④評価時期、⑤測定の種類、⑥推定パラメーターの6つを意識して欲しいという。
「どのような計画に基づき臨床試験が行われたかを外部の人間が知る唯一の手掛かりは(事前)登録情報だ」と染小氏。その上で、事前登録情報をしっかり記載することで「(臨床試験の)透明性の向上につながるし、製品に対する信頼にもつながると思う」と語った。ただ、事前登録情報を詳細に書き込めば書き込むほど、競合他社に隠しておきたい商品戦略を詳らかにしかねない。
染小氏は講演の最後、「人々の健康に関わる商品である以上は、一定の科学的根拠と説明責任が必要だと考える」としつつ、「(医薬品に求められる)特定臨床研究の枠組みで試験を行うべきだと言っているわけではない。臨床試験を事前登録する際に詳細な情報を書いていただきたい、というのが私の提言」だと述べた。また、機能性表示食品に関わる事業者に対して、「人々の健康の一翼を担う存在として、医師や薬剤師から信頼される存在になっていただきたい」と期待感を示した。そういった存在になるためにも、有効性などを検証する臨床試験の透明性を確保する必要がある、という。
【石川太郎】
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