OTC・サプリを便利に安全に届ける ヘルスケアをふつうに、あたりまえに、ウィルベース・田中社長に聞く
先端テクノロジーを用いた販売促進・人材開発支援プラットフォーム、OTC医薬品など特定商品の新しい販売のしくみを提供し、ヘルスケア関連企業に対しこれまでのマーケティング・販売、人材マネジメントの手法を大きく転換するための支援を行う㈱ウィルベース(東京都中央区)。「私たちが市販薬やサプリメントをもっと便利に、かつ安全に選べたら」との思いから、生活者向けWebアプリ「CureBell」(キュアベル)を開発、2024年4月から本格的に運用を開始した。同年10月にはサプリメントの掲載も開始。年間ユーザー数100万人を目指す。(取材日:2025年2月20日)
――流通業界の業務改善支援を目的に起業されたということですが。
田中 私は大学で経営学などを学び、日本たばこ産業㈱で海外事業、 M&A、新規事業開発などに携わりました。その後、HRテック系ベンチャー企業の副社長等を経て、2016年12月にウィルベース㈱を創業しました。
大手CVS、GMS、ドラッグストア等の業務改革や人材開発、情報システム活用、海外進出支援に携わらせてもらい、この流通業界の業務改善の必要性を強く感じたことから、起業に至りました。
起業当時、特にドラッグストアの業界は、一部の大手を除き、その多くがGMSや大手コンビニと比較して、DX(デジタルトランスフォーメーション)化がかなり遅れていました。システムが古いということと、システムに長けた人材がいないということが原因でした。
――ヘルスケアを身近にすることを目的に事業を展開しているということですが。
田中 日本は、社会保険制度が充実しており、基本的には国民皆保険で守られています。それもあって、欧米などと比較して、ヘルスケアのリテラシーが低い。米国では、医療費が高額なため、親が子供にヘルスケア、サプリメント、医薬品について教育するという環境が整っています。国際的な「ヘルスリテラシー」という指標があるのですが、15カ国中、日本は最下位です。日本人には、ヘルスケアに関する正確な情報を能動的に取るという習慣がありません。つまり、メーカーや販売者が発信する情報のみを判断材料にしているということです。
また、情報を得るだけではなく解釈する必要があります。自分で解釈しようとすると、信頼できる情報が何で、それがどこにあるのかが分からない、さらにはそれが分かっていても正しく解釈できないという課題がありました。こうした課題を解決し、もっとヘルスケアを身近に感じられるように、普通に利用できるようにという思いで支援を行っています。
――OTCの情報を発信する「CureBell」を昨年4月からスタート。10月にはサプリメントも搭載し始めました。
田中 もともと、OTCを販売するドラッグストアの販売支援ツールとして提供していた当社独自のOTCデータベースがありました。薬剤師さんが店頭で、来店客の「熱がある」、「頭が痛い」、「鼻水が出る」などといった症状を確認しながら適切な商品を選択し提案するツールとして使われていました。妊婦さんや既往歴がある方などに対しては、より有効なカウンセリングツールになっています。すでに、全国の約2,200店舗に導入していただいています。こちらも今後さらに拡大していく予定です。まずはこれをベースとして、OTCの情報を生活者により分かりやすく使いやすいサイトとして提供するサービスとして「CureBell」の提供を開始しました。一昨年から試験的に運用しておりましたが、本格運用は昨年の4月からです。
サプリメントに関しましては、販売現場からのニーズがあり必要性は感じておりましたが、当社にはこれまでサプリメントのデータベースがありませんでしたので、さまざまな情報の収集やメーカーの協力の下、およそ1年かけ、サービスの開始に至りました。

――「CureBell」というのはどういう意味でしょうか。
田中 「cure」は治すという意味の英語です。そこに「比べる」の語呂を合わせ、「比べて良いもので治す」という意味を込めました。
法律が改正され、来年にはOTCの規制緩和が行われます。薬のレベルにもよりますが、店舗に資格者を置かなくても薬を販売できるようになります。そこで、資格者がいない店舗の販売コーナーに「CureBell」を搭載したタブレット等を設置していただき、生活者自らで自身の症状に合わせた正しい商品情報を得ることができる仕組みを検討中です。
リスクが高く薬剤師を介する必要のある薬については、そのタブレットで薬剤師とオンラインで面談し、本人確認などを行うことでコンビニ等の店頭でも購入できるような仕組みができるのではないかとも思っています。法律が施行されれば、多くのコンビニエンスストア等で導入されると期待しています。
――CureBellが通信アプリ「LINE」でも使えるようですが、どのようなものですか。
田中 「LINE」で「CureBell」を友達に追加していただくことで、いつでもLINEメニューから一発検索することができるようになりました。健康管理に役立つ情報なども掲載しており、花粉症対策のヒントなどを短時間で確認できます。また、LINEチャットで当社の薬剤師に相談することもでき、とても好評いただいております。サプリメントや健康食品全般に関して、管理栄養士に相談できるようにすることも計画中です。
――サプリメントの情報掲載に当たり、苦労された点はどうでしょうか。
田中 情報収集やメンテナンスには少し苦労しています。充実した内容にするためには、ある程度商品点数が必要です。だからといってなんでも掲載すれば良いというわけにはいきません。残念ですが、中には生活者を誤認させるような商品も存在しますし、販売者は少しでも商品の特長を良く伝えようとします。
現在、掲載社数は約100社、掲載ブランド数は約500、その内、トクホが1.4%、機能性表示食品が20%、栄養機能食品が13%、その他が67%となっております。終売や商品リニューアルもありますので、情報のブラッシュアップには気を使います。もちろん、表示に関しては、最新の注意を払っています。
――商品を掲載する基準はあるのでしょうか。
田中 掲載の基準は、基本的に近年売れているものです。富士経済が出している統計データを参考にさせていただいています。掲載の順番は、含有している栄養成分の多いものから並べています。ただ、利用者によるサイト内のソートは可能ですので、ご自身で見やすいように使っていただけます。
先ほどもお話しましたが、商品情報の更新には気を使いますので、専門のスタッフとして当社に在籍する管理栄養士に張り付いてもらっています。
ただ、おかげさまで「CureBell」の認知が拡大し、新商品についてはメーカーの方からも情報提供していただけるようになってきていますので、商品情報更新についてもメーカー側からいただけるようになることを今後期待しています。
――新たなプロモーション方法として、メーカーや通販会社などから問い合わせは来ていますでしょうか。
田中 今、「CureBell」の直近の月間アクティブユーザーは15万人です。もちろんすべてがOTC、あるいはサプリメントの閲覧ユーザーというわけではありませんが、昨年の秋ごろからユーザー数が急拡大しています。「ヘルスケアをふつうに、あたりまえに」を実現するためにも、1年後には100万人までもっていきたいと思っています。
以前からメーカー各社よりプロモーションに使えないか、とのリクエストを受けていたこともあり、今年1月から、「CureBell」を活用した広告プロモーションサービスの提供を開始しました。市販薬、サプリメント等のメーカーに、自社商品の認知拡大、販売促進に直結するメディアとして活用してもらおうと考えています。「CureBell」は、市販薬、サプリメントの購買意欲の高いユーザー、健康意識の高いユーザーが集まるサイトとなっていますので、効率の良い広告媒体になると思います。
今後は、広告媒体としての機能拡充の一環として、掲載商品の販売各社と連携し、各社の購入サイトへ導線も作りたいと考えています。
「CureBell」を通じて、生活者による安心・安全な市販薬、サプリメントの利用、セルフメディケーション・セルフケアの推進に貢献していきたいと考えています。
――ありがとうございました。
【聞き手・文:藤田勇一】
COMPANY INFORMATION
所在地:東京都中央区日本橋小舟町8-6 H1O日本橋小舟町5F(本社)
TEL:03-4500-8444
URL:https://www.willbase.co.jp/
事業内容: 情報システムを用いた販売力強化・人材開発支援
(文中の写真:「CureBell」の画面/同社提供)