機能性表示食品のサプリGMP義務化 義務でない第三者認証のメリットは?
小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を受けて見直された新しい機能性表示食品制度の運用が1日から始まった。届出全体の過半数を占めるサプリの適正製造規範(GMP)義務化には経過措置期間が設けられ、完全施行は来年9月1日からとなる。一方、義務化されるといっても、民間のGMP第三者認証の取得が義務になるわけではない。ただ、認証を受けているメリットは高そうだ。
GMP告示遵守に第三者の視点
制度改正で機能性表示食品の届出や販売などに関するルールは法令で定められた。これまでは、法的拘束力を有さない通知で規定されるに過ぎなかった。主要な法令は、食品表示法に基づく食品表示基準(内閣府令)になる。それに基づく告示も複数、制定された。
機能性表示食品のサプリの製造・品質管理に義務付けるGMP基準も法令で定められた。食品表示基準に基づく内閣府告示「機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準」(GMP告示)に規定。機能性表示食品のサプリの販売会社(届出者)や製造会社などは、告示の規定を一つひとつ守らなければならない。食品表示法に基づく行政機関の立入検査を受けることにもなる。
ただ、GMP告示に示された規定の数々は、サプリのメーカーにとって新規性はさほどないと思われる。以前から自主的に取り組むことが厚生労働省などから推奨されてきた通称「3.11通知」(旧平成17年通知)の別添2「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP) に関する指針(ガイドライン)」(GMP通知)の内容がほぼそのままGMP告示に落とし込まれたからだ。3.11通知の所管は消費者庁。
日本のサプリGMP第三者認証は、厚労省が2005年に平成17年通知を発出したのを受けて始まった。主に2つの民間機関が第三者認証を手がけ、現在までに200以上の国内サプリ製造工場がGMP認証を取得。認証工場には、機能性表示食品のサプリを製造する工場も多い。民間機関がGMP告示を踏まえた監査、審査、認証を進めることで、サプリGMP認証取得工場はGMP告示を遵守している客観性と説得力が高まりそうだ。
義務化見送りの原材料、品質確保に客観性
一方、機能性表示食品のサプリに配合する機能性関与成分を含む原材料に関しては当面、GMPに基づく製造・品質管理が「望ましい」として推奨されるにとどまる。GMP通知でも、原材料については「本ガイドラインに従った製造工程管理を行うことが望ましい」にとどめているなどの理由で義務化は見送られた。
民間サプリGMP第三者認証機関の(公財)日本健康・栄養食品協会と(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)は、サプリに使用する原材料の製造・品質管理に関してもGMP規範をそれぞれ設けており、GMP認証を受けている原材料工場も一定数存在する。だが、そうした工場から供給される原材料を選定するかどうかは届出者らの考え方次第。原材料製造側も、GMP告示の遵守を法的に強制されることはない。
ただ、将来的に、機能性関与成分を含む原材料についてもGMPを義務付ける可能性を消費者庁は否定していない。また、内閣総理大臣の諮問を受けて、機能性表示食品制度の改正案(改正食品表示基準の案)を審議した内閣府の消費者委員会は、総理大臣への答申に附帯させた意見の中で、GMP義務化ついて「原材料工場へ適用できる仕組みも検討すべきだ」とした。
小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題の原因は、同社が自社工場(現在までに閉鎖)で製造していた原材料の品質が担保されていなかったためだと強く推定されている。この工場は、民間の原材料GMP認証を取得していなかった。そのため、製造・品質管理に第三者の目が入ることも無かったと考えられる。
健康被害問題以来、機能性表示食品などのサプリに使用する原材料の品質確保に向けた取り組みは、行政よりも民間が推進している状況にある。
JIHFSは昨夏、以前から規範を用意していた輸入原材料に対するGMP認証の申請受付を開始した。国内製造よりも国内での流通数量が多く、流通経路も複雑な輸入原材料の品質保証に第三者として関与するものだ。サプリの受託製造会社からは、「(輸入原材料は受け入れる)数も多い。サプライヤーは積極的に認証を取得してもらいたい」と認証の広がりに期待する声も上がる。
JIHFSはまた、原材料の安全性自主点検認証を新たに開始する計画だ。GMP通知と一体的に運用されている3.11通知の別添1「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」に盛り込まれている「原材料の安全性に関する自主点検フローチャート」に則した点検が適正に行われているかどうかを有識者が評価し、第三者として認証する。
改正された機能性表示食品制度では、サプリを届け出ている場合、法令で規定の規準に基づく機能性関与成分を含む原材料の安全性点検が努力義務化された。基準には、3.11通知の別添1の内容がほぼそのまま落とし込まれた。
【石川太郎】
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