食品アクセス問題に関する調査結果 全国的に商店街の衰退が深刻、11%の市町村が無策
農林水産省が実施した「食品アクセス問題(買物困難者)」に関する全国市町村アンケート調査がこのほど公表された。全国1,741市町村に対して昨年10月21日~11月22日まで実施した結果、有効回答数は1,033市町村だった(回答率59.3%)。
全国で9割近くが「対策は必要」と回答
全国の市町村のうち、88.1%が食品アクセス問題に対して「対策が必要」または「ある程度必要」と回答している。
小都市ほど「対策の必要性」を強く感じており、背景には都市の規模にかかわらず「住民の高齢化」が最も多く挙げられ、次いで「地元小売業の廃業」や「中心市街地・商店街の衰退」が続いている。むしろ「中心市街地・商店街の衰退」については、中小都市よりも大都市の方が高かった。
その他にも対策を必要とする背景として、公共交通の縮小や高齢者の免許返納などが挙げられている。
行政・民間が連携した対策が進む
「対策が必要」とした市町村のうち、行政・民間のいずれかによる対策が実施されている割合は89.2%に達している。行政による取り組みに限ると75.5%が実施中であり、対策手法としては以下が主である。
「コミュニティバス・乗合タクシー支援」80.9%、「移動販売車導入・運営支援」33.9%、「常設店舗(空き店舗など)出店支援」31.1%、「宅配・買物代行サービス支援」27.5%、「買物支援バス運行」15.3%――となっている(以上、全国平均)。
都市規模によって施策の傾向は異なり、大都市では宅配・買物代行支援が多く、小都市ではコミュニティバスが主流である。
実施方法は「民間支援型」が多数
対策の実施手法としては、「民間事業者への費用補助や助成」41.7%、「民間への業務委託」25.5%が多く、小都市では自ら運営を行うケースもある。予算規模については「1,000万円〜5,000万円未満」が33.5%で最多となった。
全体の60.1%の市町村で民間事業者が独自に対策を実施している。主な内容としては「移動販売車の導入・運営」76.6%、「宅配・買物代行サービス」58.9%、「コミュニティバス・乗合タクシー運行」16.1%で、参入主体は「株式会社などの営利団体が67.1%と最も多く、次いで「生協・協同組合」31.6%、「NPO・社会福祉法人」22.9%と続いている。
対策を実施していない市町村の理由
対策を講じていないと回答したのが98市町村で、全体の10.8%だった。その理由として、「どのような対策を取れば良いか分からない」56.1%、「財政上の問題」30.1%、「食料品の買い物等が不便な住民が相対的に少なく、対策の必要性が低い」28.1%と続いた(以上、中小都市)。
対策を実施する市町村が抱える主な課題として、「予算・財源の不足」55.1%、「地域の現状・課題・分析不足」52.1%、「実施事業者の不足・不在」42.8%、「専門的知見・技術・ノウハウ不足」28.3%、「利害関係者との調整」26.1%――などと続いた。
国に対する支援要望としては、「運営費支援」65.2%、「情報提供」55.3%、「整備費用への支援」54.5%、「専門的助言・指導」31.0%などが多く挙げられている(全国平均)。
自由記載から見える現場の実情
自由記載によれば、対策実施上の具体的課題として以下が示された。
・地域交通の採算性や人手不足による運営困難
・民間事業者との連携不足や役割分担の不明確さ
・高齢者の自立支援として「スーパーへ出向くこと自体が重要」という声
・公設民営によるモデルの増加予想
・担当部署の不在、現場人材や財源の不足
また、国へ求める支援として以下が示されている。
・担当部署の決め方や、効果的な情報収集方法の提案
・地域の現状に則した制度等、柔軟な運用ができるサポート体制の構築が可能な環境の整備
・コミュニティバス運行経費の補助や、タクシー事業者への財政支援などといった、交通対策への支援策
・移動販売実施者の人件費への財政支援、移動販売車の燃料費への財政支援
・地方と都市部など地域格差の大きい課題であるため、自治体ごとに柔軟に対応できる支援策を展開できるような施策
・ハザードマップのように買物困難者割合が視覚化できるオープンデータの公開
同調査は、買物困難者支援に対する全国的な実態を明らかにするとともに、行政・民間の協働体制の現状、課題、そして今後の国による支援の必要性を浮き彫りにしたもの。各地方自治体の抱える課題や対策の状況を把握し、今後の施策の参考にする。
【谷山 勝利】
詳細はこちら(農水省HPより)