NMDB問題とは何だったのか? (1) jaohfaから届いた1通のメールにはあの「印籠語」が!
今年に入り、ナチュラルメディシン・データベース(NMDB)を巡る業界の混乱を振り返らせる出来事が起きた。それは、(一社)健康食品産業協議会(jaohfa、橋本正史会長)が配信した1通のメールにあった。NMDBを運営する(一社)日本健康食品・サプリメント情報センター(jahfic、田中平三理事長)、国立健康・栄養研究所(国立栄研、瀧本秀美所長)、消費者庁(新井ゆたか長官)の3者が業界に引き起こした混乱について、何が問題で今どうなっているのか、改めて総括する。
今年1月31日、「機能性表示食品制度向け_NMDB著作物使用促進レター_ver1.1」という件名のPDFファイルをメールで受信した。(一社)健康食品産業協議会(jaohfa、橋本正史会長)が正会員(団体)、正会員(事業者)、賛助会員向けに配信したものである。当社は同協議会の賛助会員のため、このファイルを受信することとなった。
件名には、「機能性表示食品制度への届出におけるナチュラルメディシン・データベースのご利用についてのご案内」とあり、「会員登録をご希望の場合、また本件に関するご不明点や詳細については、以下の連絡先まで直接お問合せください」とした上で、(一社)日本健康食品・サプリメント情報センター(jahfic、田中平三理事長)のメールアドレスを載せるという素っ気ないものである。
同レターには、NMDBの宣伝文句と利用方法が述べられている。単なる宣伝文かと思いきや、文末には一昨年末から翌年にかけて、関係者を震え上がらせたあの印籠(ろう)語「使用許諾」の4文字が振りかざされていたのである。
「使用許諾をされていないご利用に関しましては、別途無断使用として過去の使用料に関し、ご請求さていただき、当該利用箇所の削除を請求いたします」と、さりげなく凄味を利かしているのである。これでは関係者は「ははぁ~」とひれ伏すしかない。
筆者はまず、このようなメールを右から左に送ってしまったjaohfaの無神経さを疑った。確かに事業者団体の中には、会員からの依頼を受けて、イベント案内を会員向けに送信するところがある。それはそれで、会員サービスのあり方として否定されるようなことではないが、甚だしきは、依頼されたメール文をそのまま丸ごと転送してしまうようなところさえある。こういう安直な行為は厳に慎むべきで、依頼された特定の案内を広く流布するからには、案内の意義について理解しておくことはもちろんだが、その趣旨を送付先の関係者に伝えることも必要だろう。そうでなければ、場合によっては案内書の受け手を欺くことにもなりかねない。
今回の場合、そこが全く伝わってこない。jahfic自身はjaohfaの会員ではないようだが、事実上事務局を務めている㈱同文書院が賛助会員に名を連ねている。同社の社長はjahficの理事も務める宇野文博氏だ。事実上、jahficを取り仕切っているのも同氏なのである。
そこで筆者は、jaohfaに対して以下の4点を聞いた。
- 貴協議会は2023年12月以降の混乱(国立健康栄養研究所の素材情報データベースの使用禁止、消費者庁「機能性表示食品に関する質疑応答集」の改正)などについてご存じでしょうか? 「はい」か「いいえ」でお答えください。
- 今回、同案内を配信されたのは(一社)日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic)様からの依頼によるものでしょうか?「はい」、「いいえ」でお答えください。
- 混乱が続く中、同案内をお出しになった理由について具体的に教えてください。また、Jahficとの間に何らかの話し合いを行った上で配信されたのでしょうか。そうだとすれば、話し合いの内容についてお教えください。
- 仮に、貴協議会の案内によって入会された事業者においてトラブルが生じた場合、貴協議会は何らかの責任を負うことを想定されているのでしょうか?「想定している」、「想定していない」でご回答ください。また、その理由もお示しください。
NMDB問題を考えるに当たっては、一昨年(2023年)3月にまでさかのぼらなければならない。
国立健康・栄養研究所(国立栄研)のHFNet(「健康食品」 の安全性・有効性情報)が、NMDBの情報を無断引用していた問題が発覚(2023年3月)、それを受けて消費者庁が「国立栄研のデータベース使用不可」とする方針を示した。それがもとで同年10月以降、機能性表示食品の多くの届出が差し戻され、業界に大混乱を引き起こした。
さらに、NMDBの権利を管理するJahficが利用規約を厳格化し、許諾申請を義務化したのが24年1月のことだった。事業者は新たな利用料の負担を強いられるかたちとなり、さらなる混乱が発生。届出の撤回が相次ぐこととなった。この一連の流れにより、機能性表示食品の届出を行う企業は、安全性データの取得が困難となり、追加コストも発生するという大きな課題に直面、この混乱は今も完全に収束したとはいえない状況にある。
こうした中での今回の出来事について、編集部では国立栄研、jahficにも質問状を送った。NMDB問題とはいったい何だったのか? 何が問題で、いま関係者は何を思っているのか? NMDBを巡る関係者のその後の対応について改めて整理する。
(つづく)
【田代 宏】