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消費者庁、健食めぐり初の大型シンポ 背景に健康被害問題、「リスク伝えていく必要」

 サプリメントなど健康食品を利用する際の注意点などに対する理解を深めてもらう目的で、消費者庁は10日午後、「いわゆる『健康食品』に関する意見交換会」と題したシンポジウムを都内会場とオンラインのハイブリッドで3時間にわたり行った。食品安全委員会と連携しつつ開催したもので、運営事務局によると、参加者は合わせて420人強。事業者が多かった。登壇者を一部変えながら、今月17日午後、大阪市内でも開催される。

 「いわゆる健康食品」は、機能性表示食品や特定保健食品などの「保健機能食品」を含めた健康食品全般を表わす行政用語。保健機能食品に限定しない、健康食品全般に関する一般消費者等への情報提供を目的にした規模の大きなシンポを消費者庁が開催するのは、今回が初という。

 シンポを実質的に主催したのは、食品安全に関するリスクコミュニケーションなどを担当する同庁の消費者安全課だ。開催目的について同課は取材に、「きっかけは昨年の紅麹(小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題)。健康食品のリスクを伝えてきたつもりだが、伝えられていなかった。もう一度、伝えていく必要がある」(企画官)。シンポでは、同庁が新しく製作した、「健康食品は医薬品ではない」など基本的なことを啓発する動画の上映も行った。

東京都、健康被害情報の収集強化へ

 シンポは、食品安全委員会の脇昌子シニアフェローが基調講演を担当。同委員会が2016年に取りまとめた、「いわゆる健康食品」に関する19のメッセージを伝えた。続いて、消費者団体、健康食品業界団体、アカデミアの立場からそれぞれ情報提供が行われた。消費者団体の立場からは(一社)Food Communication Compassの森田満樹代表、業界団体からは(一社)健康食品産業協議会の川久保英一副会長、アカデミアからは福島大学食農学類の種村菜奈枝准教授がそれぞれ15分ほど講演。続いて行政関係者が情報提供を行った。

 健康食品業界にとっても重要な情報を提供したのは、東京都だ。食品衛生法などを担当する保健医療局健康安全部食品監視課の内藤義和課長が登壇し、都における「健康食品対策」を説明。都が独自に取り組んでいる、健康被害との関連が疑われる健康被害情報の収集の他、監視指導について、昨年の健康被害問題を踏まえた今後の方針も含めて情報提供した。

 都医師会、都薬剤師会と連携しながら行ってきた健康被害情報の収集については今後、大規模病院で複数の腎疾患患者が診察されたことでサプリが原因である可能性が初めて浮上した昨年の健康被害問題を受け、「情報収集の強化」を図るとした。具体的には、健康被害情報を収集する対象医療機関を拡大し、健康被害を訴えた患者の情報を集中的に収集する仕組みを構築する、という。

 内藤氏の話によれば、これまでに都で収集した健康被害情報は、2006年7月から24年11月までの約19年間で計550件、患者数としては455人。製品や事業者に対する調査などを実施する必要のある緊急性の高い事例はこれまでないものの、基礎疾患の治療薬と健康食品を併用していた人の健康被害事例は全体の8割近くと非常に多い。昨年の健康被害問題でも、小林製薬の『コレステヘルプ』との関連が疑われる健康被害を受けた患者は都内のみで300人を超え、「そのうち半数以上が何らかの医薬品を服用していた」という。医薬品を服用する人の健康食品の利用をどうコントロールするかは健康食品業界としても課題になる。

製品分析体制も強化

 一方、監視指導に関しては、都内で流通する健康食品125品目前後の試買調査を毎年度実施し、広告表示や内容成分などを個別に調査していることを伝えた。

 都は、毎々の調査結果について、不適正な広告表示が調査対象の8割以上に認められたなどと発表しているが、これは違反の可能性が高いと思われる製品をあらかじめピックアップして調べているためで、「非常にバイアスのかかった数字」だと内藤氏。一方で、毎々の調査では、数品目から、シルデナフィルやタダラフィルなどといった医薬品成分が検出される実情もあるとした。

 今後の監視指導については、製品検査・分析体制の強化を図る。『コレステヘルプ』におけるプベルル酸のように、非意図的に混入した成分を検査した実績は都にもなく、そうした検査そのものが現状の設備では困難。そのため、令和7年度予算を活用して最新の機器を導入し、有害物質を効率的に探索できる検査手法の開発を進める予定という。
 
 監視指導についてはまた、「錠剤・カプセル(形状の食品、サプリ)を造っている工場は都内にもある。監視指導を厚くしていきたいと思っている」と述べた。

 行政関係では都のほか、消費者庁の食品表示課と食品衛生基準審査課がそれぞれ情報提供を行った。基準審査課は、「いわゆる健康食品」の一類型である指定成分等含有食品制度のほか、サプリメントのGMPについて、また食品表示課は「機能性表示食品の今後」についてそれぞれ説明したが、いずれも短時間だった。

【石川太郎】

(冒頭の写真:シンポの最後にパネルディスカッションも行われた)

関連資料:食品安全委員会「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」(食安委のウェブサイトへ)
関連記事:制度の今後、脇昌子・食品安全委員会シニアフェローに聞く 「制度見直しで運用にかかる費用増える」
    :平成14及び17年通知改正のポイント 新開発食品保健対策室専門官との一問一答

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