細胞培養食品の安全性確保を検討 夏頃めどに中間案取りまとめへ
消費者庁は21日、細胞培養食品の安全性確保の検討の進め方について、第3回「食品衛生基準審議会新開発食品調査部会」をオンラインで開催した。前回の会合を踏まえた今後の検討課題、スケジュールなどについて、海外の事例も交えながら事務局が説明した。事務局案に基づき各委員が意見交換し、今後は部会長代理の北嶋聡氏(国立医薬品食品衛生研究所毒性部長)を中心にガイドライン案を作成し、夏頃をめどに中間案を取りまとめる方針を出した。
冒頭、事務局の説明に加え、参考人として参加している東京農業大学食品安全研究センター長の五十君靜信氏が参考資料3に基づき、食品安全委員会の調査事業の報告書について説明した。
説明の中身は、2022年~25年にかけてリスク評価を中心に行った海外の動向、モデル培養肉における課題の検証、モデル細胞が従来の食品との対象物となり得るかどうかの評価、通常の肉と培養肉(鶏の線維芽細胞が中心)における検証データを基に、アレルゲンについてのデータベースの活用方法や栄養成分の解析など――。
会合では、今後のスケジュールについて調整が行われた。事務局は、由来動物の細胞の安全性に関するハザードと確認ポイントについて、より詳細な整理を行う予定とし、 中間取りまとめについては、完成形のガイドラインではなく、まずは全体の骨組みを示し、部会と相談しながら進める方針を示した。個別の詳細な部分については、今後の事例を見ながら検討していく必要があるとの認識も示した。
細胞培養食品の安全性確保に関する検討については、北島部会長代理を中心に進めることとし、 検討作業では関係業界の意見も聴取しながらガイドライン案を作成する。作業状況は適宜部会に報告し、委員の確認を取りながら、夏頃には中間的な案を提示することとした。
規制のあり方(個別申請・届出・確認などの手続きの要否を含む)については、ガイドライン案と並行して部会で議論を行い、細胞の種類(初代細胞・株化細胞)に応じて、病原体などの確認ポイントを設定することが決められた。
細胞培養肉の呼称も含めた規制の在り方についても言及された。規制面について、現行法との整合性(と畜場法等)や、研究室レベルから工業生産レベルへのスケールアップに伴う品質管理・安全性確保の重要性が指摘された。
また、規制の問題を指摘する声が上がった。我が国では、牛や馬、豚、羊においてと殺場で処理した肉しか食べることはできないが、今後、生きた動物から採取した細胞で培養肉を作製する場合など、法的な問題が生じるとした。
一方、開発面を重視する委員からは、国内産業の活性化のためには速やかなガイドラインの策定を望む声が上がった。細胞種による安全性の差はさほど大きくないとの見解が示され、包括的な評価フレームワークの必要性が指摘された。目まぐるしく進歩している国際情勢に照らし、環境整備を急ぐ必要性が提唱された。規制が厳しすぎると開発の幅が狭まるため、柔軟な対応が求められるとの意見も出た。
参考人の星薬科大学薬学部教授の穐山浩氏から、紅麹サプリ事件を引用し、製造管理における製造基準の重要性が指摘された。人工的に細胞から作る時に、ラボベースで作製したものと大規模ベースのものが同じ品質になるかどうかなど、ハザードの確認のためにはバリデーションが必要だと提案した。そのためにはGMPやHACCP、細胞レベルのGLPなどもガイドラインに織り込むよう求めた。
今後は、北嶋委員を中心としたガイドライン案の作成と、規制のフレームワークの検討を並行して進める。事務局は由来動物の細胞の安全性に関するハザードと確認ポイントについてより詳細な整理を行う。中間取りまとめについては、完成形のガイドラインは直ぐには示すことができないため、海外の名称や規制を参考にし、まずは全体の骨組みを示すことで、適宜部会と相談しながら進める。
事務局からの説明、ならびに部会で発言されたその他の意見は以下に要約する・・・(つづきは会員専用記事閲覧ページへ、残り約1,500文字)
【田代 宏】
関係資料はこちら(消費者庁HPより)