日本の「サプリ」はどうなっていく? WNG記者座談会、24年を振り返りつつ25年以降を展望する
ウェルネスニュースグループ(WNG)記者座談会をお届けする。日本の食品安全の歴史に残るサプリメントの健康被害問題をはじめ機能性表示食品制度の大改正など、極めて激しい動きに見舞われた2024年の健康食品業界を振り返りつつ、25年以降の行方を展望したい。座談会は去年12月下旬に編集部内で行った。
エビデンス巡る「染小論文」をどう捉えるか
記者A(以下、A) 始めようか。まずは24年の出来事で最も印象に残っていること。Bはどう?
記者B(以下、B) 食品CRO(臨床試験受託機関)を担当していることもあって「染小(そめこ)論文」の印象がとても強い。機能性表示食品についてCROが関与した一部の臨床試験論文と、それを踏まえた広告に「スピン」があると指摘した。論文は2月に海外誌上で発表されて、その直後、小林製薬の紅麹サプリ問題が起きた。その結果、論文は多くのメディアに取り上げられることになり、製品の安全性だけでなく機能性の科学的根拠にもスポットが当てられた。だから今回の健康被害問題の影響は、臨床試験を支えるCROもかなり受けている。案件が一旦止まってしまったとか、キャンセルされたとかの話だけではなくて。
A 染子先生は、某CROがサービスとして打ち出して炎上してしまった「有意差保証プラン」をきっかけに研究を始めたと言っているらしいね。
B そうだね。僕らの取材でそう話していた。CROは皆、怒っていたよ。
記者C(以下、C) Aは「染小論文」をどう思った?
A 正直、意味がよく分からないな、と。そもそも論文だとか広告だとかのどこにどんなスピンがあるのかを具体的に示していなかったと思う。それだとスピンを指摘された側も、どこをどう改善すればいいのか分からないよなと。あと、ヘルスクレームの科学的根拠としての論文の「いいとこ取り」を問題にしているのか、試験結果を踏まえたときの広告だとかの表現の行き過ぎを問題にしているのか、そのあたりもよく分からなかったな。この試験結果でこのヘルスクレームを届け出るのはおかしいって、はっきり主張してくれたのであればもう少し理解できたと思うのだけど。
C 結果と結論の不一致を意味するスピンに着目した初めての論文として評価できると僕は思っている。臨床試験の結果と結論の不一致であったり、試験結果とプレスリリースなどを含めた広告の内容のかい離だったりを厳しく指摘した。スピンという言葉が初めて持ち出されたことに、業界は相当びっくりしたのではないかな。実際、スピンを指摘されたウェブサイトのページをすぐに取り下げた企業も現れた。だから染小論文は、CROも含めて業界の襟を正してもらうという、とても意味のある論文だったと僕は思うよ。その意味では染子論文って、機能性表示食品の届出論文の質を疑問視した日経クロステック記事ともつながっている気がするな。あの記事が出たのは22年か。
一連の問題、全てつながっている?
A そう言われると、全部がつながっているような気がしてくるよ。認知機能をうたう機能性表示食品の広告表示に対する一斉行政指導があったのが22年の3月末。115社131商品に対して消費者庁が広告表示の改善を指導した。その年の夏に日経クロステック記事が出て、今度は機能性表示食品の科学的根拠の質が強く疑問視された。
そんな中で翌23年3月に「有意差保証プラン」が炎上。そして同じ年の6月に起こったのが、届け出された科学的根拠にまで踏み込む初の景品表示法に基づく措置命令。届け出されたヘルスクレームが優良誤認とされた。そして24年は2月に染小論文、3月に機能性表示食品のサプリの健康被害問題と続き、健康被害問題が直接のきっかけになって制度の大改正につながっていくと。機能性に関する科学的根拠の話と、安全性や品質の話は別物だと思うけど、いずれまた科学的根拠の話に立ち返っていきそうだよね。
C 機能性表示食品を巡るここ数年の動きは本当に目まぐるしいな。(24年)1月にはナチュラルメディシン・データベース(NMDB)の利用規約改訂問題で業界が混乱した。他にも、これは機能性表示食品への影響に限らないが、22年にはGMP認証制度協議会の問題も起こっている。「6.6プレスリリースの『怪』」だ。一連の動きをまとめてみるのも面白いかもね。レポートにして販売してみようか。
A NMDBの問題は大きかった。会員規約の改訂は前年の大晦日に伝えられた。なんで大晦日なのか。業界関係者はほとんど誰も気づかなかったはずだよ……
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