原材料から製品まで品質保証体制強化 東洋新薬、トレーサビリティ向上と異物混入リスク低減の2軸
機能性表示食品のサプリメントに生じた健康被害問題を「良い機会と捉え、引き続き消費者の安全を第一にした開発、製造、供給を進めていく」。健康食品・化粧品の総合受託メーカー、㈱東洋新薬(服部利光社長)の髙垣欣也副社長はそう話す。そのために健康食品の品質保証体制を強化した。製品だけでなく、独自に研究開発する原材料の品質保証体制に関しても、大学研究機関と連携しながらの強化を進めている。
ステルス印字機、全製造ラインに新規導入
東洋新薬の健康食品製造施設は以前からNSF GMP(cGMP)の登録施設になっているほか、健康補助食品GMP適合認定やFSSC22000認証などを取得。「独自素材の開発も行っているため、分析機器類もかなり揃えていて、もともと品質保証体制は充実していた」(髙垣副社長)。その中で品質保証体制の強化に少なくない金額を投資したのは、「そこを当社の強みによりしていく」ためだとする。
自社工場に置く全ての健康食品製造ラインに、製品の製造及び流通過程での迅速なトレース(追跡)を可能とする「ステルス印字機」を新規導入。また、製品に使用する原材料の同一性確認の精度を高めるため、「近赤外線分析法」を増強するなどした。
特殊なライトを当てないと見えない「ステルスインク(不可視インク)」での印字を可能とするステルス印字機は、基幹工場のインテリジェンスパーク第一工場と鳥栖工場に置く全ての健康食品製造ラインに新規導入した。「通常はロット単位での追跡となるが、製造時間や製造順番などより細かなトレースができるようになる」と同社は説明。万が一の品質課題発生時の迅速、かつ正確な追跡とともに、近年増加傾向にある模造品被害の対策にもつながるという。

原材料の品質確保体制、大学と連携して研究
また、原材料の同一性確認に関する精度の一層の向上や、異物混入リスクのさらなる低減を図る目的で、非破壊で素早く分析できる近赤外線分析(NIR)機器(ガンタイプ)を増強。ピーク波形がライブラリに保存されている波形と合致しているかどうかを迅速に確かめられる分析機器で、合致する場合は同一と判断でき、逆に合致しない場合は中身が別物、あるいは異物が混入していることが分かる。「製造前の段階で、製造に使用する原材料の同一性を非接触で確認できる」メリットがある。
他にも、微量の金属汚染を検出する能力に優れる「原子吸光光度計」を新規導入した。吸収スペクトルを測定し、有害金属などの有無を分析するもの。汚染の有無を確かめるための分析が従来よりも短時間で可能になるという。これらの異物混入リスク低減のために増強、導入した分析機器は、原材料の受け入れ確認や製品の出荷前検査などを行う際に機動力を発揮する。
同社は、健康食品の品質保証について特に、製品の品質を確保するために重要になる原材料の品質保証体制の強化に力を入れている。髙垣副社長は、今回取り組んだ品質保証体制強化の背景をこう話す。
「健康被害問題が起きてすぐ、安全性確保や品質保証の強化に向けて動き出した。独自開発素材の安全性の評価だったり、原材料の受け入れ検査であったりに関する課題がゼロではなかったためだ。この機会に健康食品の品質保証体制をもっと強化し、そこを当社のより強みにしていこうということ。特に原材料に関しては、独自開発素材の品質保証はもとより、原材料の工場受け入れ時の品質確認の方法や体制づくりの研究を大学と連携して進めている」
健康食品の品質保証体制の強化は今後も続ける、としている。「投資額は少なくなかったが、これで終わりにするのではなく、消費者やお客様に供給する製品の品質を保証するための投資を惜しまず続けていきたい」(同)。
【石川太郎】
(冒頭の写真:東洋新薬の健康食品生産拠点の1つ「インテリジェンスパーク」。同社提供)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
事業内容:健康食品・化粧品(医薬部外品)・MG(健康・美容器具)・医薬品の受託製造
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