大幸薬品、24年12月期決算発表 売上高63億円、利益も黒字へ転換
大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)は17日、2024年12月期(24年1月1日~12月31日)の連結決算を公表した。
オンラインによる記者発表では、経理部長の中條亨氏が決算概要を、代表取締役の柴田高氏が今期の振り返りと来期の事業戦略について説明した。
「継続企業の前提に関する重要事象」解消
今期売上高は62億9,200万円と前期比2.8%の増収だった。営業利益は6億2,900万円、経常利益は6億8,800万円と、前期のマイナス計上から黒字に転換した。これにより、「継続企業の前提に関する重要事象」については期末で解消した。
営業利益の改善要因として、国内医薬品の値上げ、原価改善および在庫の適正化を挙げた。また、円安による為替影響や販管費の減少もプラス要因として働いた。これらを合わせると、16億3,500万円の利益を計上した。
クレベリンをはじめとした感染管理事業の売上高は5億800万円と、前期比で4億2,000万円減少したものの、コストコントロールの強化により収益性は改善し、冬の最需要期12月におけるシェアは増加傾向にあるという。
広報では「クレベリン」の差別化訴求
柴田社長がクレベリンの広報戦略を振り返った。
従来の機能訴求に加え、感覚的に良さが伝わることを目的としたメッセージ発信やタイアップ企画を軸として活動してきた。一般的なアルコール消毒と異なり、二酸化塩素の特許技術を用いてウイルス除菌を行っているという差別化要素を強調。そのため、クレベリン置き型の効果検証実験を動画にしたCM、クレベリンスプレーのウイルス除去・消臭効果を伝えるCMを作成し、オンライン配信を行った。
その上で、Key Opinion Leaderと同社社員の対談、小売業とのタイアップを行い、消費者へのタッチポイントの獲得を目指してきた。
柴田社長はグラフを示し、「これら早期におけるマーケティング施策の結果、インフルエンザ定点あたり指数とクレベリン店頭販売金額に相関関係が見られる結果が出た」と説明。つまり、インフルエンザが流行した時にクレベリンも店頭で売れているという。

柴田社長が会長を務める(一社)日本二酸化塩素工業会は、ウイルス殺菌の測定方法に関するJSA規格の制定に向けて活動しており、同規格制定により、「製品性能の評価基準が確立され、クレベリンの除菌性能がより確実なものになり、浮遊ウイルス除去市場の創造へつながると考えている」(柴田氏)と説明。2025年度中の策定を見込んでいる。
JSA規格が成立後に、定められた規格に基づいた検証試験を各製品で実施の上、必要に応じて行政庁の指導を仰ぎ、広告表示の変更の検討を進める予定としている。
来期目標は63億円、経常利益2億円
来期は、医薬品事業における中期的な供給体制強化プロジェクト始動の1年とし、設備更新に伴う生産量の一時的な減少、関連費用の増加を見込み、25年12月期の売上高は横ばいの63億円、営業利益2億1,500万円、経常利益2億円を見込む。
株主還元については、24年度は業績回復途上として無配を継続したが、「来期の配当予想は現時点では未定も、業績の進捗や財務状況を見極めた上で判断することが適切と考えている」(柴田氏)とし、株主の理解を求めた。
【田代 宏】
(冒頭の写真:業績発表する柴田高社長)