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新団体、日本健康食品工業会が始動 サプリに対する信頼回復、「受託開発製造企業の集結必要」

 サプリメントなど健康食品の受託開発および製造業に特化した業界団体として先月設立された(一社)日本健康食品工業会(野々垣孝彦会長)が12日午後、報道関係者向けの設立説明会を都内で開いた。新団体を発起した受託大手4社の代表取締役社長らが一堂に会し、設立の背景や目的、活動方針などを、質疑応答も含め1時間強にわたり説明。昨年生じた健康被害問題で低下した、サプリなど健康食品に対する消費者からの信頼を回復させるために、「受託開発製造企業が集結」する必要性を訴えた。

 新団体は、健康食品の受託開発製造大手4社(アピ㈱、アリメント工業㈱、㈱AFC-HDアムスライフサイエンス、三生医薬㈱)が発起人となって設立。今月6日、団体設立を報道発表していた。その1週間後に開かれた説明会を取材したのは、健康食品に関係する業界専門メディアをはじめ全国紙などマスメディアの記者も。団体の広報担当者によると、15社から取材の申込があった。

 説明会では、役員体制が正式に発表された。会長を務めるのは、最大手のアピ代表取締役社長の野々垣孝彦氏。副会長は若尾修司・アリメント工業代表取締役副会長、幹事は淺山雄彦・AFC-HDアムスライフサイエンス代表取締役会長、専務理事は今村朗・三生医薬代表取締役社長がそれぞれ務める。事務局は、三生医薬が担当。説明会は、同社の東京支店内で行われた。

 設立初期段階の正会員数の見通しも伝えられた。発起人企業を含め、20社前後を見込む。健康食品の受託開発製造業界には、発起人企業以外にも大手が複数存在し、中小規模企業も多い。発起人企業が手分けして団体参画に向けた働きかけを順次進めているといい、入会を決めた先も複数ある模様だ。

 新団体の設立趣旨は、「受託開発製造企業が抱える経営課題に向き合う」とともに「受託開発製造企業の視点から健康食品業界の課題を整理」し、「行政や既存業界団体との協働」によって健康食品の「安全性や品質管理の強化に向けた実効性のある施策を推進」すること。

 具体的な活動計画については、「初期正会員の意見を伺いながら詳細を詰めていきたい」(今村専務理事)としている。来月11日に都内で開く設立記念祝賀会までに、初期正会員がおおよそ揃う見通しを示した。

安全性向上、品質管理強化 「リーダーシップ発揮すべき存在」

 説明会は、野々垣会長と今村専務理事が発言するかたちで進行した。

 冒頭、設立趣旨を説明した野々垣会長は、受託開発製造企業に特化した団体設立を約2年前から検討していた中で、その動きを大きく加速させたのが、昨年発生した機能性表示食品のサプリの健康被害問題だったと説明。問題で、健康食品に対する消費者の信頼が揺らぐ中、「業界全体で品質管理をさらに強化する必要性が高まっている。(その中で)受託開発製造企業に求められる役割がかつてないほど重要になってきている。健康食品の製造プロセスを支えているのは、まさに私たち受託開発製造企業だからだ」とし、かつてない規模の健康被害問題を経験した日本の健康食品業界における受託開発製造企業の立ち位置を確認した。

 国内の健康食品業界では、(一社)健康食品産業協議会や(公財)日本健康・栄養食品協会など複数の業界団体が活動している。そのうち(一社)日本栄養評議会(CRNジャパン)には、原材料企業のほか受託製造企業が多く参画。健康食品GMP第三者認証を行う日本健康・栄養食品協会も、会員に、受託製造企業を多く抱える。

 そうした中で、新団体を立ち上げる必要があったのは、「(既存団体は健康食品)業界全体を包括するかたちで活動しており、受託開発製造に特化した組織はなかった」(野々垣会長)からだとした。これまでの既存団体内部で行う議論では、「参加する少数の受託製造企業が個別に意見を表明するにとどまり、受託開発製造企業全体の問題意識や意見を統一して表明することができなかった」といい、「(新団体のもとに)受託開発製造企業が結集することで、業界全体の信頼回復と安全性の確保に貢献していく」としている。

 野々垣会長に続いて団体活動の方向性などを説明した今村専務理事は、最終製品販売会社の要望に応じ、商品の企画・提案から製品設計、試作、製造、包装、品質管理までの幅広い仕事を行う「受託開発製造企業こそが、安全性向上のリーダーシップを発揮すべき存在だ」と強調。「受託開発製造企業が主体的に行動し、(これまではできていなかった)横の連携を強化して、業界全体の品質向上と安全性確保に貢献していくための新たな枠組みが必要不可欠だ」と訴えた。新団体を通じて、「より安全で、より高品質な健康食品を提供できる環境を整備していきたい」という。

 他方、既存団体との関係性は維持していく方針を示した。「これまで以上に連携を深め、相互に補完し合える関係を築いていく」(今村専務理事)。

 また、業界団体に求められる行政機関との対話については、「新たな法規制や品質管理基準の見直しなど、業界全体に関わる課題を受託開発製造企業の立場から整理、検証し、業界の健全な発展につながる提言を政府や関係機関に行っていく」(同)としたが、関係構築や対話をどう進めていくのかについて具体的な説明はなかった。ただ、食品衛生基準行政を担う消費者庁などの行政機関としても、サプリの安全性確保や製造・品質管理の厳格化を事業者に求める中で、製品の開発・製造に特化した新団体は無視することのできない存在になりそうだ。

活動目的に3つの「柱」 共通経営課題の解決も目指す

 今村専務理事は説明会で、新団体の活動目的として、3つの「柱」を示した。第1に、健康食品の安全性を向上し、消費者の信頼を抜本的に高めること、第2に、受託開発製造企業として健康食品業界の健全な発展に貢献すること、第3に、受託開発製造企業が相互に協働して直面する経営課題を解決すること。

 また、活動目的を実現するための重点的取り組み事項として、健康食品業界の制度や課題に関する調査・提言活動、安全性向上のための受託製造企業全体の底上げ、消費者と業界をつなぐ広報活動の強化、受託開発製造企業に共通する経営課題の解決に向けた協働活動の4つを挙げた。

 共通する経営課題としては、エネルギーをはじめとするさまざまなコストの上昇、機能性表示食品制度の大幅な改正、今後見込まれる健康食品全体の製造・品質管理に対する規制強化などが念頭にあるとみられる。一方、広報活動については、受託開発製造企業の立場から安全性の確保に向けた取り組みを適切に伝えていくことなどに意欲を示した。健康食品の効果や選び方、摂取方法などに関する啓発活動なども進めていくという。

【石川太郎】

(冒頭の写真:設立会見に臨む日本健康食品工業会役員4人。左から淺山幹事、今村専務理事、野々垣会長、若尾副会長)

関連記事:サプリ受託製造事業者、業界団体設立 大手4社が発起、安全性向上と信頼回復めざす

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