JHNFA×JIHFS GMP対談 サプリGMP告示が突き付ける課題とは
9月1日、改正機能性表示食品制度の一部が施行された。改正に合わせて、内閣府告示(第108号)「機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準」が示された。
告示では、届出者の責務としてサプリメント製造業者に対し、バリデーションの実施などさまざまな要件(義務)を課している。2005年から健康食品GMP(以下、GMP)認証を推奨してきた(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)の増山明弘健康食品部長と(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)の池田秀子理事長に業界が抱える課題、今後の取り組みについて話を聞いた。対談は、さまざまな課題から原料の同等・同質性確認、サプリの法制度にも及んだ。(以下敬称略、2024年10月28日取材)
ガイドラインは告示に対応
――(記者)GMP基準に関する内閣府告示(第108号)では、「バリデーションの実施」が明記されています。JIHFSのGMP規範(ガイドライン)にはこれまでもバリデーションという用語を使用していましたが、JHNFAでは「妥当性の確認」という異なる用語を用いてきました。用語の問題にとどまらず、今回の告示によって迫られる対応についてお聞かせください。
増山 告示の基となるのは、「3.11通知」(「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針」及び「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針」)です。そこで使用されている「バリデーション」という言葉については置き換えるように、「健康補助食品GMPガイドライン」を改訂中です。他にも、「総括管理者」が「総括責任者」に変わります。変更点については速やかに対応し、今年度中(2025年3月中)に改訂版を出す予定です。
池田 私たちも3.11通知に従って改訂をしていく方向です。用語において従来と異なるものもありますが、告示が基本になると思います。実は2年ぐらい前から規範の改訂作業をやっていたのですが、いろんな動きがあったものですから一歩踏み出せずにいました。
3.11通知の告示化により「~しなければならない」という文章になりましたから、これまでと違いますので、JIHFSの規範もそれに照らして検討しています。
――JHNFAとJIHFSの間でもすり合わせが行われているのでしょうか?
増山 池田理事長がお話しになったように、例えば作業レベルでの言葉の問題とか、それはそれぞれのガイドラインがあるのでそこで対応します。むしろそれよりもまず、通知が出て、今度はそれとほとんど同じ内容の告示が出た。
元々、通知を改正するという話はコロナ以前から出ていた話です。それがようやく今年の3月に出たので、それまでに池田理事長も一緒になって厚労省とは意見交換を行っています。ですから、後は通知を踏まえた告示に従ってやるというスタンスです。
トリプルスタンダードを招かないか?
――すでにJIHFSとJHNFAによる認証がある中で、そこに消費者庁の告示が出てくることが、新たなトリプルスタンダードを招きかねないとの危惧があります。
池田 義務化するのですからそれが履行されているかについて、国は査察によって確認しなければなりません。我々の認証がどういう位置付けになるかはこれからの問題でしょうね。国は問題があれば指摘すれば済むでしょうが、例えば小学、中学、高校へとレベルを上げて行くような指導はできないと思います。
我々はそういう丁寧な育成が重要な仕事の1つだと思っています。当然、告示内容が基準になると考えますが、そこに至るにはさまざまな作業を介して、業界をサポートする必要があると考えています。
増山 トリプルスタンダードにはならないと思います。もちろん、「これは義務化です」、「これは通知です」、「これは第三者認証の推奨です」と、ステータスは違いますけど、中身はほぼ一緒ですので、基本的には変わらないと思います。
ただ問題は、これは第三者認証ですというのと、推奨しますというのと、義務ですというのでは法律的な位置付けが全然違います。むしろそちらの方が問題です。だからそれを我々は中味に軸を置いて、粛々と第三者認証としてやっていきます。それが業界全体の発展と品質のレベルアップにつながると思って、ずっとJIHFSさんと一緒にやってきています。おそらく事業者さんにもそういう意識があります。もう1つはレベルの高い事業者もあれば、これからやっていこうという事業者もある。そういうところには、指導をしながらレベルアップしてもらうというのが我々の役目だと思っています。
一方で義務化となると、取り締まりですから、第三者の我々がやるのではなくて行政がやるというスキームになるわけです。であれば、消費者庁が査察に入るというのは別に変な話じゃないと思います。厚労省だったら保健所が入る。消費者庁はそれがないので、自分たちでやると言っているわけで、現実にどうなるかは分かりませんが、ルール上はそういう建て付けと考えています。
告示はガイドラインが手本
――なるほど。お話を聞く限り、JIHFSもJHNFAも、それぞれのGMP規範(ガイドライン)は、サプリGMP告示が規定する製造・加工基準を満たしているという理解でよろしいですね。告示との違い、優れた点などはいかがですか。
池田 むしろ私たちの方が先行していましたよね。
増山 JIHFSさんも当協会も同じだと思います。基本的には平成17年通知があって、JIHFSさんと一緒に現場を見ながら細部をガイドラインに落とし込んだ。指定成分等含有食品の取扱いに関しても具体的に書面化しました。その後で、それを基に3.11通知が出ているので、むしろ満たしているというよりも、この通知はJIHFSとかJHNFAのガイドラインを取り入れているように感じています。
実績に基づいて認証機関がやってきた現場の細かいことは、厚労省や消費者庁では分からないことが多いと考えます。考え方は分かっても、具体的に責任者の役目とか、標準書はどう書くとか、細かいノウハウは分からない。だからそれはずっとやってきた我々のガイドラインなどの内容を結構反映しています。だから満たしているというよりも、我々のガイドラインを参考にしてもらったというのが正しいと思います。
池田 先ほど申し上げたとおり、告示に関しては「~しなければならない」というマストです。平成17年通知というのは任意の努力でしたから、「望ましい」というような基本概念があったわけですが、そこを今度は変えていくことになると思います。そこが私たちにとっても、どこまで要求して、これはダメだと言い切るかなど、いろいろ検討すべきと思っております。
課題は「その他の健食」
――その他に課題はありますか?【聞き手・文・構成:田代 宏】
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※編集部では、健康食品のGMPについて、「サプリメントGMP」(サプリGMP)の表記に統一している。ここでいうサプリの定義は、通称「3.11通知」の対象食品である「錠剤、カプセル剤等食品」の定義に従っている。すなわち、「天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然にするものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品」。記事中で「サプリメント(サプリ)」と表記する際の定義もこれに準じる。