海外事業者の鉄サプリ、含有量に注意 国センが呼びかけ、日本人の食事摂取基準を大きく超える商品も
微量ミネラル「鉄」の補給を目的に、海外事業者が製造販売するサプリを個人輸入などで購入する消費者に対し、鉄の含有量や注意表示をしっかり確認して鉄の過剰摂取に注意するよう、(独)国民生活センター(国セン)が注意を呼び掛けている。鉄補給を目的とする海外のサプリには、日本人を対象とする推奨量を大きく超えて鉄が配合されている場合があり、長期間摂取すると意図しない過剰摂取につながる恐れがある、としている。国センは、国が取りまとめた「日本人の食事摂取基準」が示す推奨量を把握するよう勧めている。
5倍量以上の長期摂取で健康被害も
来年4月から運用される「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、鉄の1日あたり推奨量を18~64歳の月経がある女性で10.0~10.5ミリグラム、月経のない女性で6.0ミリグラム、18~64歳の男性は7.0~7.5ミリグラムにそれぞれ設定している。
国センは25日、ネット通販の個人輸入で購入した海外事業者の鉄サプリを長期間摂取した消費者に健康被害が報告されているとして注意喚起した。国センが設けている「医師からの事故情報受付窓口」に今年2月、2件の情報が寄せられたという。10代女性の事例では、医師が続発性鉄過剰症と診断。海外事業者の鉄サプリを通じて、日本人の推奨摂取量を大幅に超える1日あたり54~108ミリグラムの鉄を約3年間摂取していたとみられる。初診時、25~250ng/mlが正常値とされる血清フェリチン値(体内鉄貯蔵量の値)は、2,194 ng/mLを示していた。
情報提供を受けて国センは、大手インターネットショッピングモールなどから米国企業が製造販売する鉄サプリ5商品を購入し、1日あたり摂取目安量あたりに含まれる鉄の量を調べた。分析の結果、5商品とも日本人の推奨量を大きく超えていて、最大で76.6ミリグラム(ただし表示値は65ミリグラム)。最も少ない商品でも19ミリグラムだった。国センによれば、米国では1日2,000キロカロリーを基準とした場合の栄養摂取量の基準値(Daily Value)を国が定めていて、鉄は1日あたり18ミリグラムが基準とされている。
一方、国内事業者が販売する鉄サプリの鉄含量を見ると、ドラッグストアでよく見かける商品は1日あたり摂取目安量あたり6ミリグラムだったり、10ミリグラムであったりする。
女子栄養大学栄養学部の上西一弘教授は、「栄養素の必要量には個人差があり、摂取量が推奨量に達していなくても、全ての人が鉄不足の状態ではあるとは限らない」としつつ「貧血時等に処方される鉄製剤は、医師の管理の下で、明らかな鉄欠乏の方に処方されるから問題ないのであって、自己判断で鉄含量が多いサプリを摂取することは、思わぬ健康被害をもたらす恐れがある」とした上で、「まずは、医師の診察を受けることが重要だ」と国センにコメントしている。
【石川太郎】
(冒頭の写真:国民生活センターが25日に開いた記者説明会の様子)
関連資料:「海外事業者の鉄サプリメントの長期使用により鉄過剰症を発症」(国民生活センターのウェブサイトへ)
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