SAKURAのプレバイオティックス オリザ油化、「さくら」シリーズを拡充
桜(さくら)由来機能性素材の世界的なエキスパートになる──サプリメントや化粧品に使用する、天然物から得られる機能性素材を製造販売する㈱オリザ油化(愛知県一宮市)の村井弘道社長はそう意気込む。今秋、「桜の花エキス」に続く〝さくら〟シリーズの第2弾製品としてプレバイオティクスを発売した。「さくら乳酸菌」(桜の花由来乳酸菌)である。市場導入の初期段階から、機能性表示食品の機能性関与成分としても使えるようにすることをめざしている。
さくら乳酸菌、機能性表示を早期に
SAKURA EXTRACT──オリザ油化が2010年2月に「抗糖化素材」として発売した桜の花エキスは現在、こうした名称で海外でも流通している。海外で特に需要が高いのは東南アジア。22年、タイの規制当局から、Novel Food(新規食品)としての安全性審査を経て、同国での販売が可能に。これにより、健康・美容ニーズが高まるASEAN(東南アジア諸国連合)全域で展開できるようになった。
桜の花エキスの発売から約14年8カ月が経過した今年10月、同社が〝さくら〟シリーズの第2弾製品として満を持して発売したのが「さくら乳酸菌」(オリザ油化の登録商標)だ。日本国内のしだれ桜から採取された乳酸菌(Lacticaseibacillus paracasei shidare株) を、粉末状の機能性素材(加熱殺菌体)にしたもので、サプリメントなど機能性食品の原材料として使用できるようにした。腸からの吸収や水分散性を高めるために、乳酸菌体の粒度を1マイクロメートル未満に処理する、いわゆる「ナノ型乳酸菌」の技術を取り入れているという。
桜の花エキスとさくら乳酸菌。それぞれの機能性を見ると、前者については、抗糖化機能(AGEs産生抑制機能)を背景にした、肌の健康を維持する効果のあることが、具体的には保湿や弾力性の向上が、人を対象にした経口摂取試験(プラセボ対照二重盲検試験)によって示唆されている。
同エキスには、関与成分としてカフェオイルグルコースとケルセチングルコシドが含まれる。一方、後者は、乳酸菌だけあって、便通改善機能のあることがモニター試験で確認された。今後、外部機関を通じたRCT(ランダム化比較試験)を行い、整腸機能をより詳しく検証する。
桜の花エキスは、今のところ、機能性表示食品の機能性関与成分として使用することはできない。というのも、同社の主力製品の1つに「オリザセラミド」(米由来グルコシルセラミド)があり、肌の健康を訴求できる機能性関与成分はすでにある。また、〝SAKURA〟のイメージの良さも背景に、海外も含めて一定の需要を獲得できている現状もある。その一方で、乳酸菌は群雄割拠。〝さくら〟で差別化するだけで、新たな需要を創出できるほど甘くはないといえ、同社では、機能性表示食品の領域へ早期に展開していけるようにする構えを見せている。
名付けた「SAKULORA」、世界市場に展開へ
さくら乳酸菌の機能性表示対応について同社では、まずは便通改善機能を表示できるようにする計画だ。その次に取り組むのは、女性のクオリティオブライフの維持・向上に特化した機能性表示。いわゆる「フェムケア」である。女性の月経前の一時的な不調に対するヘルスクレームを行えるようにすることをめざす、と言う。
さくら乳酸菌は、整腸機能だけではなく、フェムケア機能もうたえるようになると、同社では見ている。その根拠は、現時点では基礎研究にとどまるものの、月経に伴う不快症状の原因の1つとされる子宮内上皮細胞の形質転換(EMT)を抑制する可能性が示唆されているためだ。
また、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されることで生まれるエクオールの産生を増やす可能性があることも動物試験で確かめた。さらに細胞試験では、免疫反応の働きを担うIL-10、IL-12の産生を促進する可能性があることを確認。「市販の主要な乳酸菌素材と比較して、最も高い免疫賦活作用である」ことを明らかにできたとする。
桜の花エキスとさくら乳酸菌。同社が細胞試験を行ったところ、それぞれ10対1の割合で組み合わせることで、皮膚を構成するコラーゲンの合成遺伝子の発現が相乗的に促進されたという。組み合わせによる相乗機能が、人を対象に確かめることができれば、それぞれの需要の相乗的な高まりも期待できそうだ。
同社では、桜の花エキスと同様、さくら乳酸菌についても、東南アジアをはじめとする海外市場に展開していく計画。それもあり、「SAKULORA」の名称で商標出願を行っている。
【石川太郎】
(冒頭の画像:「さくら乳酸菌」のイメージ。オリザ油化の報道発表資料から)
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所在地:愛知県一宮市北方町沼田1番地(本社)
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