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機能性表示食品の限界と可能性(4) 【寄稿】これからのFFC、プロモーションからプロダクトへ

限界を迎えたか、FFC市場

 このような状況を総合的に考察すると、機能性表示食品の市場はそろそろ限界にきているのではないか、と思わずにはいられない。
 制約の多い中で、多くの企業が同じ成分、同じエビデンス、同じ表示で競争をすれば、必然的に過剰な競争にならざるを得ない。
 機能性表示食品からの撤退企業が続出しており、すでに全届出の1/4が届出撤回をしている。多くは、販売不振、あるいは期待どおりの業績が得られなかったためであろう。

 本来、健康食品(ここでは広い意味での)のマーケティングの基本はリピート購入、つまり顧客との長い関係性構築がベースとなる。

 近年の機能性表示食品の多くが、プロモーション重視の新規顧客獲得に注力してきたが、これでは事業構造が成り立たない。新規顧客を追いかけるだけではいずれ頭打ちになるだけでなく、既存顧客からの不満も溢れ、その商品は市場から撤退することになる。継続購入される商品には「商品力」が必要である。

 2022年12月に、米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)が公表した” Health Products Compliance Guidance”には、「食品、ダイエタリーサプリメント、医薬品、その他健康関連製品のベネフィットや安全性に関するクレームは、CARSE基準による立証が必要」と示されている。

 CARSE基準とは、Competent and Reliable Scientific Evidence(適格かつ信頼性のある科学的根拠)基準のことであり、
① 関連する疾患、状態、または機能に関連する主張について、関連する専門家によって客観的な方法で実施および評価された試験、分析、調査、または研究であること、および
② 正確で信頼性のある結果をもたらすと専門家によって一般的に受け入れられていること
という基準をより具体的に定義している。

 このガイダンスでは、特定の健康関連の主張(health-related claim)の科学的な裏付けがCARSE基準を満たしているかどうかを判断するための考慮事項について説明している。
 紙面の関係で詳細な説明は避けるが、要点は次のとおりである。
「マーケターは、独自に研究の計画・実施を行う場合でも、第三者によって実施された研究に依存する場合でも、健康に関連する主張に依存する研究がこれらの基本的な原則に準拠していることを確認する必要がある。

  1. 対照群
  2. 無作為化
  3. 二重盲検化
  4. 統計的に有意な結果
  5. 臨床的に意義のある結果 」

 1~4は、日本でも食品の機能性のエビデンスを評価する際と同じ基準であるが、「5. 臨床的に意義のある結果」という視点はほとんどない。
 かつて、トクホでも統計学的な有意差が果たして意味があるのか、といった批判があったが、この「臨床的な意義」が重視される点は、今後の機能性表示食品開発において大いに参考になるのではないか。

ホンモノのFFC時代の幕開けに期待

 これが、いわゆる「体感性」や「納得性」となり、商品のリピート購入、継続率につながるのであろう。
 機能性表示食品制度以前の時代、健康食品業界の優良企業の経営者は、本能的にこの「臨床的な意義」を理解して商品開発をしていたのであろう。
 それが、統計学的有意差により実証された表示が先行し、消費者の期待に応えられない商品が今、市場から退場しているように思えてならない。
 今求められるのは「本物の健康食品」である。「本物の健康食品」とは、確かな品質、機能性、安全性が担保された、消費者の期待を裏切らない、嘘のない正直な健康商品である。そして「本物」は世界でも通用する健康食品でもある(FTC基準)。
 近年のプロモーション重視のマーケティングから、プロダクト重視のマーケティングへ舵を取る時が来たと思われる。消費者の期待に応えられる「本物の」機能性表示食品により、新しいステージが幕開けするのであろう。
 2024年の制度改正、そして来年4月から必須となるPRISMA2020対応により、その口火が切られた。

(了)

<筆者プロフィール>
麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。
アピ㈱、サニーヘルス㈱を経て2004年1月、㈱グローバルニュートリショングループ設立、現在に至る。国内企業の新規事業の立ち上げ、新商品開発、マーケティング戦略立案などのコンサルティングや海外市場進出の支援、海外企業の日本市場参入の支援を行う。現在まで、国内外合わせて800以上のプロジェクトを実施。
経 歴:1986年 麻布大学 環境保健学部卒業、1986年 アピ株式会社入社、1997年 法政大学大学院 社会科学研究科経営学専攻修士課程修了(MBA)、1998年 サニーヘルス株式会社入社、2004年 (株)グローバルニュートリショングループ設立後、現在に至る。
著 書:「健康食品ビジネス大全」(パブラボ社、2011年10月)、「健康食品ビジネス大事典」(パブラボ社、2015年8月)、共著「ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング」(日経BP社、2017年4月10日)
活 動:平成26年度「栄養表示義務化及び食品の新たな機能性表示創設に伴う消費者教育の在り方に関する検討事業」 ワーキンググループ委員(消費者庁委託事業)、平成28年度「第6次産業化促進技術対策事業」検討委員会委員長(農林水産省委補助事業)、平成29年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、平成30年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、2018年 機能性表示食品届出指導員養成講座 講師、2019年~21年 機能性表示食品普及推進協議会 会長、一般社団法人ウェルネス総合研究所 理事、一般社団法人通販エキスパート協会 認定スペシャリスト、機能性表示食品届出アドバイザー養成講座 認定講師
僭越ながら、海外に通用する機能性表示食品について考える「FFC2.0研究会」を㈲健康栄養評価センター・柿野賢一氏、㈱サルタ・プレス・西沢邦浩氏と共に立ち上げ、継続して勉強会を開催している。読者の皆さんにも是非ご参加いただければ幸甚である。

関連記事:機能性表示食品の限界と可能性(1)
    :機能性表示食品の限界と可能性(2)
    :機能性表示食品の限界と可能性(3)

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