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唐木東大名誉教授と今川消費者庁室長 農大・食品安全研究センターら主催シンポに揃って登壇

 「機能を持った新開発食品の安全性の考え方」をテーマにしたシンポジウムがきのう11日午後、都内で開催された。

 東京農業大学の総合研究所研究会「食の安全と安心部会」と食品安全研究センター(FSRC)が共催したもので、同大世田谷キャンパス国際センター榎本ホールとオンラインのハイブリッドで開催。演者として招かれたのは、東京大学名誉教授の唐木英明氏、消費者庁食品表示課保健表示室長の今川正紀氏のほか元国立健康・栄養研究所情報センター長で吉祥寺二葉栄養調理専門職学校講師の梅垣敬三氏、㈱明治研究本部安全性評価グループ長の田口智康氏の4人。食品業界関係者や学生などが聴講した。会場とオンラインを合わせて、600人超が参加したという。

 シンポの冒頭、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長などを歴任した農大FSRCセンター長の五十君(いぎみ)靜信氏が登壇。医薬品と異なり食品は、消費者にわたると摂取量のコントロールが効かなくなる中で、用量依存的な反応で機能(生体調節機能)が現れるサプリメントなどの新開発食品について、「用量がオーバーしたときの安全性の担保をどう考えれば良いのかが本日の重要なテーマ」だとシンポの主旨を説明した。

安全性を検討するだけでいいのか

 この日の各講師の講演テーマは、唐木氏が「機能性食品の安全性と効果」、今川氏が「機能性表示食品の今後」、梅垣氏が「わが国の健康食品の実態とその安全性の考え方」、そして田口氏が「機能性乳酸菌の安全性評価」。講演時間は各30分。全ての講演終了後、参加者との質疑応答を中心にしたパネルディスカッションも行われた。

 今川氏は講演で、小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を背景に大きく改正した機能性表示食品制度の概略を解説。パネルディスカッションでは、機能性表示食品のうちサプリメントの製造工程・品質管理に対して食品表示法関係法令で義務付けたGMP(適正製造規範)について「本来であれば(食品表示ではなく)食品衛生に直結するところ。今後、食品衛生法の中でGMPを製造基準に落とし込むことを考えていないのか」と問われ、健康被害問題に対する政府の関係閣僚会合が5月末に取りまとめた今後の対応方針を引き合いに出し、こう答えた。

 「機能性表示食品、トクホ(特定保健用食品)に関わらず、サプリメントの横断的な規制の在り方の検討を必要に応じて行うと(対応方針では)されている。平成30年の改正食品衛生法の施行後5年後(見直し検討規定)を来年6月頃に迎える。消費者庁の(食品衛生)基準行政と厚生労働省の(食品衛生)監視行政が連携し、横断的にどういった規制が必要なのか、(あるいは)不要なのかも含めて議論されていくことになろうと思う」

 一方、講演のトップバッターを務めた唐木氏は冒頭、この日の講演内容をこう要約した。

 「私は薬理学者として健康食品には懐疑的で、もし効果があるならば薬になるはずだとずっと思っていた。だが、機能性表示食品の立ち上げ(消費者庁「食品の機能性評価モデル事業」)に関わる中で、(原則として健康な人を対象に評価する)健康食品の効果は原理的に、(医薬品と同様の)プラセボ対照試験では判定できないことにようやく気付いた。かつての私と同様に、厚生労働省を中心とした行政は、健康食品は『無効有害』との見解を持っているように見える。しかし健康食品は、多くの国民がセルフメディケーションのツールとして使っていて、非常に有用なものであると私は思う。(無効有害であるという行政の見解と、ヘルスケアのために多くの消費者が利用しているという)ギャップをどのように埋めればいいのか」

 唐木氏は講演の終盤で、欧米やASEAN(東南アジア諸国連合)などでは「サプリはサプリとして独自の地位を築いている」一方で、日本は「食品に分類してしまっている」と指摘。日本も「サプリ独自の地位を確保し、医薬品とも違う、食品とも違う、そういった規制を行っていくべきではないのか」と問題提起した。その上で、講演をこうまとめた。

 「(日本でサプリは)セルフメディケーションの手段として定着しているにも関わらず、その社会的意義に関する公的合意あるいは法律が存在しない。そこが非常に大きな問題。その結果、国が検討するのは安全性だけになってしまっている。有効性についても検討すべきだ。また、消費者の理解が難しい複雑な制度や用語(機能性表示食品など3種類ある保健機能食品、それ以外の「その他のいわゆる健康食品」、それら4つをまとめた「いわゆる健康食品」)をそのままにしていることも問題だ。このように蓄積された問題を総合的に解決していくための手段を皆で話し合っていく必要がある」

学生からのストレートな質問、サプリの正しい知識「どう伝える?」

 パネルディスカッションでは、農大農芸科学科の学生も挙手、消費者庁の今川氏に質問した。「最近は、若い子もサプリを結構飲んでいる。でも、行政の情報よりも、YouTubeなどSNSの情報を参考にしていると思う。そういった人たちに、サプリや機能性表示食品などの正しい知識をどのように伝えていこうと考えているのか」

 これに対して今川氏は、「今日の質問の中で一番難しいかもしれない」としつつ、「消費者に(サプリなどに関する適切な情報を)どう分かりやすく届けるのかというのは非常に難しい」と正直にコメント。「全て知った上で購入しなければならないということではおそらくないと思う。(だから)基本的なところをお伝えできればそれでいいのかもしれないと思っているが、それさえが難しい」と率直な思いを吐露した。

 唐木氏も考えを述べた。米国の「ダイエタリーサプリメント健康教育法」(DSHEA)を紹介。「教育法」であることを強調しつつ、「サプリメントを国民のセルフメディケーションにどうやって使うのかということをきっちりと法律で示してある。この法律に従って米国の行政は、サプリのリスクと有効性の両方を国民に伝えている。日本もそういうことをぜひやって欲しいと思っている」と語った。

【石川太郎】

(冒頭の写真:パネルディスカッションの様子。左から五十君氏、唐木氏、今川氏、梅垣氏/文中の写真:会場の様子。会場だけで200人近くが参加したとみられる)

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