機能性表示食品の限界と可能性(3) 【寄稿】これからのFFC、プロモーションからプロダクトへ
食品・飲料形状では「睡眠サポート」が優等生
機能性食品市場におけるヘルスベネフィット別の売上規模を示したのが図6である。トップ3のヘルスベネフィットが「脂肪・コレステロール値対策」5,240億円、「滋養強壮」4,173億円、「整腸効果」4,137億円とトップ3で46.8%のシェアを占めている。その中で「脂肪・コレステロール値対策」は、機能性表示食品のシェアが37.2%であるが、「滋養強壮」は1.2%、「整腸効果」は18.0%と高くはない。「整腸効果」はトクホの商品も多いため、機能性表示食品のシェアが高くないと思われる。
一方、機能性表示食品のシェアが97.6%と非常に高いヘルスベネフィットが「睡眠サポート」である。市場規模も1,251億円と大きく、機能性表示食品ならではの市場となっている(特定の商品の占有率が高いが)。
トクホと重複するヘルスベネフィットである「高血圧対策」「血糖値対策」は機能性表示食品のカバー率はそれなりに高いが(71.1%、46.5%)、市場そのものは小さく、トクホと競合している可能性もある。
「健胃サポート」は、「いわゆる健康食品」であった商品が機能性表示食品としてリニューアルしたため、カバー率が高くなっている。
機能性食品のヘルスベネフィットの中でトクホと機能性表示食品が競合する領域は、「脂肪・コレステロール値対策」を除くと市場規模が大きくない。小さな市場で競合することは、ビジネスとしてはあまり魅力的ではない。
一方、「睡眠サポート」「健胃サポート」のようトクホと競合せず、機能性表示食品で独自性を出せる場合は、特定のブランドが成功している。ちなみに、機能性食品のトップ30ブランドの内、機能性表示食品はわずか5ブランドである。
機能性表示食品制度の導入により市場の活性化が期待されたが、実際にはかなり限定的な市場であることが分かった。
FFC、米国DS市場への対応は難しい?
米国ダイエタリーサプリメント市場に目を向けてみる。
図7は、米国ダイエタリーサプリメント市場におけるトップ15のヘルスベネフィット別市場である。
Sports/Energy/Weight Management、Cold/Flu/Immunity、General Health のトップ3で53.0%と市場の半分を占めている。日本の機能性表示食品の対象とすることができるヘルスベネフィットは、この内では免疫機能くらいである(Weight Managementは、ミールリプレイスメント(食事代替)が中心で、ダイエットサプリメントは限定的である)。
その他、Women’s General Health、Hair/Skin/Nails(Skinは除く)、Men’s General Healthなど、現行の機能性表示食品制度では対応が難しい領域もある。
このように見ていくと、機能性表示食品制度では米国ダイエタリーサプリメントで大きな市場規模を持つヘルスベネフィットへの対応が難しいことがわかる。
図8は、米国ダイエタリーサプリメント市場におけるトップ15の成分別市場である。
Multivitamins、Sports Powders、Meal Supplementsのトップ3で52.7%と、やはり市場の半分を占めている。Sports Powdersの9割以上はプロテイン、Meal Supplementsはプロテイン+ビタミン・ミネラルが中心の市場であることを考えると、トップ3成分は、ビタミン、ミネラル、プロテインという機能性表示食品の対象外の成分であることが分かる。
その他上位の成分もビタミン、ミネラルが中心であり、機能性表示食品の対象となりうる成分は、Pre/Probiotics、Fish/Animal Oils、CoQ10、Glucosamine/Chondroitinくらいである(Hemp CBDは議論の余地あり)。機能性表示食品制度では米国ダイエタリーサプリメントで大きな市場規模を持つ成分が対象外であることが分かる。
米国DS制度を参考に設計された機能性表示食品制度であるが、ヘルスベネフィット、成分から見てみると、似て非なる市場となっていることが分かる。特に、ビタミン、ミネラル、そして成長著しいプロテインが制度の対象外であることは、大きな制約になっている。
(つづく)
<筆者プロフィール>
麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。
アピ㈱、サニーヘルス㈱を経て2004年1月、㈱グローバルニュートリショングループ設立、現在に至る。国内企業の新規事業の立ち上げ、新商品開発、マーケティング戦略立案などのコンサルティングや海外市場進出の支援、海外企業の日本市場参入の支援を行う。現在まで、国内外合わせて800以上のプロジェクトを実施。
経 歴:1986年 麻布大学 環境保健学部卒業、1986年 アピ株式会社入社、1997年 法政大学大学院 社会科学研究科経営学専攻修士課程修了(MBA)、1998年 サニーヘルス株式会社入社、2004年 (株)グローバルニュートリショングループ設立後、現在に至る。
著 書:「健康食品ビジネス大全」(パブラボ社、2011年10月)、「健康食品ビジネス大事典」(パブラボ社、2015年8月)、共著「ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング」(日経BP社、2017年4月10日)
活 動:平成26年度「栄養表示義務化及び食品の新たな機能性表示創設に伴う消費者教育の在り方に関する検討事業」 ワーキンググループ委員(消費者庁委託事業)、平成28年度「第6次産業化促進技術対策事業」検討委員会委員長(農林水産省委補助事業)、平成29年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、平成30年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、2018年 機能性表示食品届出指導員養成講座 講師、2019年~21年 機能性表示食品普及推進協議会 会長、一般社団法人ウェルネス総合研究所 理事、一般社団法人通販エキスパート協会 認定スペシャリスト、機能性表示食品届出アドバイザー養成講座 認定講師
僭越ながら、海外に通用する機能性表示食品について考える「FFC2.0研究会」を㈲健康栄養評価センター・柿野賢一氏、㈱サルタ・プレス・西沢邦浩氏と共に立ち上げ、継続して勉強会を開催している。読者の皆さんにも是非ご参加いただければ幸甚である。