種苗法違反で2人逮捕、10人書類送検 農研機構のイチゴ「桃薫」の苗をフリマで販売
警視庁生活環境課は1日、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が品種登録するイチゴ「桃薫(とうくん)」の苗について、許諾を得ることなくインターネット上のフリーマーケットサイトで販売したとして、種苗法違反(育成者権の侵害)などの疑いで、岐阜県養老町の会社員・近藤信宏容疑者(64)と静岡県焼津市在住の25歳の男2人を逮捕した。その他にも、愛知県や茨城県、秋田県など6県の24~70歳の男女10人をきのう3日書類送検した。警視庁は同事案を農林水産省に対してきのう、情報提供している。
警視庁から情報提供を受けた農林水産省は同日(3日)、種苗法および同事案を広く周知するために警視庁と連携し、同省ホームページ上に提供書面を掲載した。
容疑者らはいずれも、農研機構の許諾を受けていないにもかかわらず育成した桃薫の苗について、フリマサイトにイチゴの写真などを販売目的で掲載、あるいは販売したものとされる。これらの行為は、種苗法第2条第5項第1号などに違反する。
登録品種の種苗を取り扱う時には、正規で購入したものを、自分の家で育てて収穫物を得て食べる分には全く問題ないとされている。農家などでも、正規の苗を購入して、単に栽培するという点では問題がない。しかし、許諾の範囲を超えて増殖をし、それを苗として他に販売するなどの行為は、そのことで権利者が種を植えるという行為を邪魔されることになり、権利者が相応の対価を得る機会を奪ってしまうために権利侵害に当たり、種苗法に抵触するとされる。
「桃薫」の果実は2011年10月5日に種苗登録され、育成者権の存続期間は36年10月5日だった。
農水省によると、公的機関の品種で過去に刑事罰を受けた事例は、農研機構のブドウ品種「シャインマスカット」、長野県のブドウ品種「ナガノパープル」、東京都のいちご品種「東京おひさまベリー」の3件で、今回が4件目という。
【田代 宏】