紅麹問題、特商法規制について聞く 全国消団連が7政党にアンケート調査
(一社)全国消費者団体連絡会(東京都千代田区、郷野智砂子事務局長)はこのほど、衆議院総選挙前に各政党に対して行ったアンケート調査の結果を公表した。
対象としたのは、自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、社会民主党の7党。
紅麹サプリ事件を受けて行われた機能性表示食品制度の見直しや、電話勧誘販売やSNSなど急増している消費者トラブルについて、特定商取引法による規制のあり方を聞いている。
【質 問】
「紅麹問題」を受けて「機能性表示食品制度」の見直しが行われましたが、機能性表示食品を含めた「いわゆる健康食品」の現状について、貴党の考え方をお聞かせください。
【回 答】
●自由民主党
本年5月の関係閣僚会合において取りまとめられた「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応」では、健康被害の情報提供の義務化、機能性表示食品制度の信頼性を高めるための措置等の今回の事案を踏まえた今後の対応に加え、今回の事案を踏まえた更なる検討課題が示されたものと承知しております。
この中では、「サプリメントに関する規制の在り方」も更なる検討課題の1つとして挙げられており、機能性表示食品を含めた「いわゆる健康食品」については、政府を中心にその規制の在り方が重要な課題として検討されるものと認識しております。
なお、機能性表示食品制度については今回の食品表示基準の改正等で実施した
・健康被害情報の提供
・錠剤・カプセル剤等食品の製造加工等におけるGMP基準の適用
・届出情報の表示の見直し
などについて、制度が適切に運用される必要があると考えております。
●公明党
紅麹サプリメントの健康被害問題の事案に係る機能性表示食品制度の今後の在り方については、新規成分の届出の際の安全性をより慎重に確認する仕組みの導入、サプリメントの製造会社に対する GMP(製造や品質の管理基準)の要件化を踏まえた政府の体制整備 、届出後の遵守事項を守らない場合の表示・販売できない仕組みの導入など再発防止対策を図ります。
●立憲民主党
小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントの摂取による死亡事例や入院事例等の深刻な健康被害が発生を受け、健康被害への早急な対応と、原因が特定できていなくても速やかに報告することを義務付ける法改正や原材料の受入れを含めた製造管理基準(GMP)の認証取得の義務化などを実現します。また、サプリメントのように濃縮した成分を定期的に摂取する食品は、医薬品に限りなく近く、十分な安全対策や、被害者の救済機関の設置等が必要であることから、具体策を検討します。
特定保健用食品や機能性表示食品をはじめとする、いわゆる「健康食品」については、消費者による商品の有効性や安全性についての誤認や過信が起こらないよう、科学的根拠に基づく情報公開、表示・広告の適正化等について、消費者委員会専門調査会の議論を踏まえ、制度全体の一体的な見直しを進めます。あわせて、不適切な表示の取り締まりを一層強化します。
●日本維新の会
「紅麹」問題については、さらなる因果関係の究明と報告義務の強化、被害者救済の充実を求めていきます。機能性表示食品は食品であるにも関わらず、消費者は薬品の効能に似た機能を求めて購入する傾向があることや、大量に摂取することで実際に健康への影響もあることを考慮して、政府の責任で適切な情報を消費者に届ける必要があると考えます。
安全性を高めるために、食品としての安全基準をクリアするにとどまらず、製造段階での事故の
有無や、使用している物質名を定期的に行政に報告することや、トレーサビリティを確保する仕組みを構築することが必要です。
●日本共産党
「機能性表示食品」制度は、事業者が機能性の根拠を添えて消費者庁に届け出れば、機能性を表示して販売できる制度です。「紅麹問題」は安全性評価を企業任せにするために大規模な健康被害が生じて初めて政府が対応することになった大事件です。届出制ですまされることから、食品の安全性についても、摂取による事故が起こった場合も、国が安全性を確保する設置や担保がきわめて不十分だということです。この「機能性表示食品」制度は中止することが必要だと考えます。
健康被害をすぐ国に報告、サプリメントを加工する工場の「適正製造規範=GMP」管理など見直しがありましたが、不十分です。「特定保健用食品」でも誤解を生む広告もあり、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品の区別は消費者には判断が難しいものです。いわゆる健康食品の安全性、効果については客観的検証制度が必要です。
●国民民主党
機能性表示食品による健康被害について迅速な原因究明を行います。機能性表示食品に おける審査制度を見直し、安全性の確保を進めます。
【質 問】
電話勧誘販売・訪問販売勧誘や SNS を介した消費者トラブルも多数発生しています。また若年層にはマルチ商法の被害も高額化しています。特定商取引法の規制の強化が必要であると考えていますが、貴党の考え方をお聞かせください。
【回 答】
●自由民主党
特定商取引法における電話勧誘販売や訪問販売勧誘についての法規制強化の必要性については、これまでも消費者委員会などにおいて専門的な議論がなされてきましたが、立法事実等についての委員間の共通認識が形成されるには至らず、営業の自由や地域経済、雇用その他社会情勢全般に係る観点からも慎重に検討されるものと考えております。同専門調査会報告書が示すとおり、法執行の強化、再勧誘禁止の徹底、また、事業者による自主的な取組等を総合的に進めてまいります。
SNS を含むデジタル事案については、最終確認画面における表示義務の徹底と違反事案への厳正な法執行等、令和3年改正法の執行に基づく対処などをしっかりと行ってまいります。また、若年者へのマルチ商法被害への対策としても、法執行を厳正に行うなど処分実績を積み重ねているところであり、引き続き悪質事案に対する厳正な対処を通じて消費者保護の徹底に努めてまいります。
●公明党
電話勧誘販売•訪問販売勧誘や SNS を介した消費者トラブル、若年層のマルチ商法の被害などに対する対応としては、現在、令和3年の特定商取引法の改正に基づく様々な取り組みを進めているものと承知しています。
まずは厳正な法執行により着実に実績を積み上げつつ、その対応状況や社会情勢等を踏まえて、
今後更なる特定商取引法の規制の強化について、必要な検討を行うべきと考えます。
●立憲民主党
積み残された課題である不招請勧誘対策の強化は当然として、増加傾向にある消費者被害として、SNS 勧誘による投資被害や脱毛エステ契約トラブルなど実際の被害救済のため、特定商取引法の運営強化及び改正に向け、政府に働きかけを行います。また、2022 年 4 月から成年年齢が引き下げられましたが、同年にアダルトビデオ新法が超党派で成立したことから明らかなように、未成年者取消権の喪失に対する法整備は十分に取られておらず、国民の理解醸成も十分ではないことから、包括的つけ込み型勧誘取消権の創設やいわゆるクーリング・オフ制度の期間拡大などを含む消費者の権利実現法案の成立を目指します。さらに、若年者の被害が拡大しやすい連鎖販売取引(マルチ商法)に対する消費者教育を重点的に行うとともに、法執行を強化し、消費者被害の拡大防止のために 22 歳以下の者との取引を禁止することなどについて検討します。
●日本維新の会
現行の特定商取引法でも厳格に執行すれば、かなりの被害は防げると考えていますが、問題は消費者に同法の知識がない、または誤解していることに付け込んで、悪質な業者が違法な勧誘や取引を行っていることにあると考えています。被害を防ぐには、消費者に同法に基づく消費者の権利や業者の義務について周知徹底する取組みの強化が必要です。そのために、小中学校、高校、大学などで早期から消費者教育を行うことが重要です。法改正については罰則の強化等が考えられますが、改正の効果について、よく検討・議論することが肝要です。
●日本共産党
スマートホン、携帯電話やインターネットを使った消費者被害が広がるなか、成年年齢引き下げにともない、未成年者契約の取消権がなくなり、若年層の多重債務や消費者被害拡大が懸念されます。クレジット過剰与信の規制を緩和することは問題です。ジャパンライフによる「オーナー商法」、高額の家賃収入を売り込むシェアハウス商法など、預託商法による被害が大型化しており、被害を防止するための法的措置は急務です。
事業者の情報提供義務の明記、「適応性の原則」(消費者の知識・経験・財産の状況を事業者が配
慮する)の導入、契約取り消し期間の延長、誤認して結んだ契約の取り消し範囲の拡大、未成年者取消権に匹敵する包括的な取消権の創設など、消費者契約法を改正します。
訪問販売等の事業者の交付を義務付けられている契約書面を電子メールで送付することを可能
にした 2021 年の特定商取引法改正の電子部分の削除を求めます。
●国民民主党
不招請勧誘やインターネット取引等における虚偽・誇大広告等、犯罪手口は日々、巧妙化しています。本来、消費者保護の為に作られた特定商取引法は、契約書面等の電子化が盛り込まれる等、電子機 器に不慣れな消費者には危惧される点も多く、引き続き消費者団体と連携の上、消費者被害の抜本的な予防、発生の際の救済、拡大の防止等に向けて必要な法整備を進めます。
(以上、原文ママ)